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暗くなるころにガブリエル・ペリへと戻ると、友人が荷物をまとめるのを待った。近くでヨナスが寛いでいた。「モデル事務所のオープン・コールには行ったのかい」と話しかけると、渋い表情をしていた。「明日には行く」。これは行かないやつではないか。 友人と共に宿を出ると、職安通りを駅へと向かった。すでに陽は沈み、街は深夜の表情だ。友人の乗るバスは、来たときと同じベルシー駅からロンドンーー確かユーストン駅だったと思うーーへと行く深夜便だった。ガブリエル・ペリからベルシー駅まではメトロで
その老人だけが、周りとは異なった雰囲気をしていた。多くの観光客たちがベンチでのひとときや散歩を楽しんでいる緑道で、茂みに腰を下ろしているのは彼だけだった。風貌からも、彼が住む家を失った老人であることは明白だった。 私は煙草をひとつ巻くと、彼に話しかけた。そして煙草を、小銭と一緒に差し出した。特に何の考えもなく、それが自然だと思ってそうしたに過ぎなかった。だから申し出を彼に断られたとき、私は何が起きているのか分からなくなってしまった。 決して軽薄な口調で申し出たつもり