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Paris

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2019年5月の記事一覧

Paris 14

 翌朝に目が覚めると、やはり私以外のルームメイトはすでに出かけているか、支度を終えようとしているところだった。旅人の朝は早い。それは旅の興奮からであり、限られた日程を有意義に使うためであり、宿によって定められた朝食やチェックアウト時間の縛りによるものであるだろう。相部屋ならば誰かがベッドに入れば自然と消灯するし、宿によっては深夜の外出が難しいところもある。旅人の生活リズムは、実は極めて規則正しいのだ。その点で私は旅人に向いていない。夜になれば覚醒し、毎朝の起床は苦痛以外の何物

Paris 13

 フロールの席を立ち、街の雑踏の中へとふたたび戻ると、まだ明るいうちにーーとはいえ、5月のパリでは遅い時間まで日は沈まないのだがーーヴィンテージ・パリへと戻ることにした。翌日からのことを頭の中で整理しながら、北駅の方面へとゆっくり歩いた。過ごし慣れたヴィンテージ・パリを、翌朝にはチェックアウトしようと決めていた。そしてパリの中でも少し変わった宿へと、ヨナスを連れていく予定だった。  道中で馴染みの屋台に寄り、ハムとチーズのガレットを買うと、ホステルのロビーで軽い夕食を取った