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氷とアイスコーヒー
お盆が過ぎても暑さが去る気配がない。
この猛暑の中で僕の楽しみはキンキンに冷えたアイスコーヒーを飲むことだ。
これでもかという程に氷をいれたグラスにコーヒーをなみなみに注ぎ、一気に飲み干す。そしてもう一度注いで、二杯目のコーヒーはゆっくりと飲んでいく。それが僕の夏のアイスコーヒーの楽しみ方だ。
僕はカフェインに強いようでコーヒーを飲んでもすぐ眠れてしまうのだが、二杯目のアイスコーヒーを注いだまま昼寝をしていまう時がある。
起きるとさっきまでグラスに入っていたコーヒーは溶けてしまっていて、薄めのアイスコーヒーの完成だ。
そんな薄いアイスコーヒーを飲みながらふと思う。さっきまで交わることのなかった氷とアイスコーヒーが今はもう分けることのできない一つの液体になり、それを僕が飲み干せばアイスコーヒーも僕の一部になる。よく考えたら不思議で仕方がない。
さっきまで僕じゃなかったものが僕になってしまった
ミツバアリというアリがいる。ミツバアリの特徴は巣の中に住むアリノタカラという虫と共に生きていることだ。アリノタカラはミツバアリの巣に守られ、巣内に張っている植物の根から栄養を吸収する。そしてアリノタカラが余った糖分を排出するのだが、それをミツバアリは食べて暮らしている。ミツバアリにとってアリノタカラが根の養分を吸収・排出しないと生きていけない。アリノタカラもミツバアリの巣に守られている。
これを美学者の伊藤亜紗さんは「アリノタカラはミツバアリの外付けの内臓のようだ」という。僕の内臓は紛れもなく「僕」だ。そうであるなら、どこまでがミツバアリのいのちなのだろうか。ミツバアリとアリノタカラのいのちは溶け合って一つのいのちを生きているように分けることはできない。
そう思えばこの世界のどんなものも僕のいのちと分けることなんてできないのかもしれない。あの川の水はいつかの僕の身体を流れていたかも。畑にできているトマトはいつか僕の血肉になるかも。
そんな曖昧ないのちの境界線に振り回されて自分勝手に生きるより
近くに苦しんでいる人がいたなら自分の怪我を手当するように寄り添うことができたら
そんな大層なことを考えてるくせに暑くて動くのが億劫になり、サボってだらだらとアイスコーヒーを飲んでいます
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