【読書】日本の寄付を科学する
3月に行なわれた、ファンドレイジング日本(FRJ2024)というカンファレンス内の、ブックイベント、『ファンドレイザー100人が選ぶ、読んでみたい本大賞』に選ばれた本です。私もこのイベントの運営にボランティアとして参加させていただいたので、せっかくなので読んでみました。
この本に出会ったきっかけ
日本は他国に比べ、寄付やボランティア活動が低調だということです。私もそろそろ人生折り返しという歳になって初めてボランティア活動を体験し、クラウドファンディングで寄付活動も経験しましたが、私の周りには経験者は少ない印象です。
今まで私は、そもそも寄付することで、どう社会課題の解決につながるのか?働いて税金をしっかり納めたり、お金を払って必要なサービスを受ければ良いのではないか?という考えから抜け出せないでいました。つまりそれは、社会課題というものに、目を向けていなかったように思います。
本業の会社でのミッション・ビジョンなどには、『社会課題の解決に貢献』というような文脈の表現がありますが、自分の仕事からはなかなか実感が湧かなかったというのが、正直なところです。
そこで、今後の人生を考えた時に、今まで目を向けてこなかった、社会課題の解決という成果に貢献するにはどうしたものか?と考え、社会課題に向き合っているベンチャー企業のプロボノに参加したり、ファンドレイジング領域で奮闘されている方々との接点を持ったりと、少しづつ理解を深め自分ができる活動を探索しているところです。
そういった時にこの本に出会いました。
この本を読んでみての感想
この本は、日本の寄付やボランティア活動などの利他にまつわる疑問を学術研究の知見を交え考察しています。
もやっとしがちな利他の領域を定量的なデータ分析によって論述の根拠、リアリティを示しており、この分野に詳しくない私にも理解しやすい内容になっていました。
まずは、どうすれば共感ベースの寄付を得られるのか?(第6章)のパートにおいて、ファンドレイジングは社会課題への理解や共感を通じての財源獲得であること。共感のメカニズムについては、4つの構成概念で説明でき、具体例を用いた解説によって理解が深められました。
テーマは、利他的な行動の促進
各章からの学びが深い本書ですが、
全体通して、寄付やボランティアなど、利他的な行動を起こしてもらうにはどうすれば良いか?というテーマであるように感じました。
例えば、
試行錯誤してこそ、ボランティア?(第14章)のパートでは、ボランティア活動の段取り、準備が整理されたものより、整理が不十分で自ら考えないといけない活動の方が、参加者が任されている感が強く満足度が高くなり、次もやりたいと思う意図につながっているという結果。
また、寄付者は寄付からどのようなメリットを得るのか?(第15章)のパートでは、寄付者が感じやすいメリットの特徴について、『あしながおじさん』と『科学研究支援』を例に解説、寄付者個人と何らかの関連性を見出した時に恩返しのための寄付、見返りの無い寄付に心理的メリットを感じやすい。そしてその心理的メリットを寄付者が感じ取れるかどうかは、ファンドレイザーの手腕にかかっているという内容でした。
いずれも、私の半年にも満たない経験の中にも感じる点があり、なるほど〜と思いました。
そのほか、なぜこれからますます寄付が必要になってくるのか?といった疑問にも触れており、ソーシャル初心者の私に気づきを多くいただける一冊でした。
追記
なぜ社会課題の解決に寄付が必要なのか?に対する私が理解した内容について。
政府・自治体によるサービスは財政赤字や少子高齢化を迎え現実的に社会課題の全てをカバーできない。
営利企業の課題解決サービスは、受益者がお金を支払うことでサービスを受けることができるが、お金の支払が難しい受益者はサービスを受けられない。
NPOなどの非営利団体が無償で受益者へサービスを提供する場合、NPOの活動資金(人件費、コンテンツ開発費など)の調達にNPOも物販などによる収益を財源にするケースもあるが限界があり、助成金や寄付が必要になる。
日本ファンドレイジング協会の鵜尾氏が本書に寄せておられる、行政だけに依存した社会課題の解決は難しいという流れが、自ら社会課題解決に貢献する行動を促し、その手段としての寄付が進む社会、『信じて託す社会』が必要、という文脈のお話が印象に残りました。
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