マガジンのカバー画像

【創作】真冬のその先に《休止中》

6
冬の季節に書きましたが、体調を崩してしまい、まだ未完成です。作者としましては大変お気に入りです。 因みに、扉絵のイラストは、月猫ゆめや様よりお借りしました。美麗です✨
運営しているクリエイター

記事一覧

【創作】真冬のその先に act.0

【創作】真冬のその先に act.0

『彼女との出会いが、僕という人間の運命を変えてくれたんだ』
 小雪が降る、玲瓏黒猫の館の、広い庭で、寒椿の手入れをしながら肩まで伸びる金糸を風に揺らし、まふゆは言う。彼女に面と向かってそのことを吐露した時の、彼女の、はにかんだ笑みを思い出しながら。
 彼女は今どこに?と、尋ねれば、
「…さあ。今日はまだ姿を見ていないね。きっと、いつものように僕に内緒で、花売りに市へでも行ったんじゃないかな。あの子

もっとみる
【創作】真冬のその先にact.2

【創作】真冬のその先にact.2

 まふゆは、まりんの身体をそっと離すと、
『…でも』
と口の中で呟く。
 まふゆは口ごもり白銀の少女を見つめる。もとは、美しのであろうその肌は薄汚れ、顔を見れば生気のない虚ろな表情。アクアマリンの眸もどこか、生きることを諦めてしまったような…光の差さない色に思える。
 身なりは、ツギハギだらけの薄汚れたワンピースに靴擦れを起こしている、サイズの合わない木靴。か弱い木を連想させる少女の肢体は栄養不足

もっとみる
【創作】真冬のその先にact.3

【創作】真冬のその先にact.3

「…ん」
 まふゆが目覚めると、ベッドの横の出窓から、オレンジの夕焼けが眩しく、その輝きが差し込んでいた。
 暫くボーッと夕焼けの光を浴びていると、光が強いのか隣で小さな寝息を立てるまりんが、規則正しい呼吸で眠っていたが、「んん…」と声を漏らし、目覚めた。
「ん…ん…。まふ…ゆさん?」
 焦点がなかなか合わず、まりんは眸をパチパチさせながら右手を伸ばす。その細い腕を掴み、自分の頬に当てにっこり微笑

もっとみる
【創作】真冬のその先にact.4

【創作】真冬のその先にact.4

「すっげぇ、俺、天才かも!」
 玲瓏黒猫の館の台所(もとは調理場だった)で、ディフォが海老ドリアの味見をしながら、大きくガッツポーズをとる。
「…主、俺、マジ料理の天才だわ」
 ぶつぶつ自画自賛しながら、鼻歌を唄いオーヴンから出てきた、軽く表面に焦げ目のついたドリアを3人分の器に分けて、出来栄えの良さに頷く。
 ディフォの料理時の格好はトレードマークの赤のマントを外し、黒のロングコートも脱ぎ、黒の

もっとみる
【創作】真冬のその先にact.5

【創作】真冬のその先にact.5

 

 まふゆは善は急げと、翌日、必要ないとディフォの同行を拒んだあげく、仕方なしに許可して、まりんと共に3人で、王都の婦人服仕立て屋の『マリー・ローズの仕立て屋』に、足を運んだ。その間、王都を訪ねるのだからと、まふゆはホワイトのワントーンコーデ(白のシルクのシャツに、金糸の繊細な刺繍が施された、白の膝丈ロングジャケットとパンツのアンサンブル、靴は白のローファー)で、ディフォの方は、ブラックグリー

もっとみる
【創作】真冬のその先にact.6

【創作】真冬のその先にact.6

 王都の街のきらびやかな大通りを、豪華な四輪馬車に揺られながら、まふゆ達一行は

『なんでもご相談承ります、お気軽にお尋ね下さい。
オヴェリア弁護士事務所
代表・オヴェリア・ルーシー』
 
と、名刺に記されたビジネス界隈の住所に向かっていた。すこし王宮から離れたその界隈は、淡々とした代わり映えのないオフィスがぎゅうぎゅうと箱にでも収められているような、窮屈感と圧迫感を醸し出していた。その中で一軒、

もっとみる