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小論文で0点を取る受験生… #小論文編

 小論文が得意という高校生が、入試科目で小論文のある大学を受験します。推薦やAOの場合もありますし、国公立2次の場合もあります。
 そして、不合格になる事例が出てきました。
 「小論文が得意(自称)」とか、「本番は落ち着いて書けました。自信があります(できない人がよく言うセリフ)」というパターンではありません。再現答案を見ても、ちゃんとは書けているのです。
 さて、原因は…となると、考えられることは一つです。
 「出題意図」から離れた答案を書いているんですね。

 出題意図を理解していない、
 タイトルや前提をふまえていない、
 問題文・提示したデータなどの読み取りが間違っている、
 小論文の結論が志望理由や入学後の抱負になっている、

 というわけで、この頃から、「出題意図の確認」に時間をかけるようにしました。まず、タイトル・本文・問題文の分析です。
 さらに、「正解のない出題」については、その大学・学部が求めている人物像、職業適性、学問適性なども根拠として、「考察の方向性」を確認するようにしました。
 ある大学の医学部で「長年つきあった恋人に別れを告げる手紙を書け」という出題があって話題となりました。これも、医師の職業適性(倫理観)から分析すれば、考察の方向性が見えてきます。
 しかし、「出題意図の理解」という前提について、強い抵抗感を示す生徒さんが、一定数いました。

 小論文の問題文は、「~あなたの考えを述べよ」という言葉で締めくくられます。生徒さんの言い分は「自分の考えを述べたのに、なぜ0点なのだ!」です。
 こちらとしては、「~」の部分を根拠として書いてほしいのですが、生徒さんは「あなたの考え=自分の考え」を重視しています。
 たとえば、報道について、「マスゴミ」という価値観・持論を持っている生徒さんは、「マスゴミという自分の価値観・持論を根拠」とした考察を書いてきます。問題文・設問文については、「持論の裏付けに都合のよい箇所を切り取って」きます。
 「合格するには個性が必要」と呪文のように唱えられていた時代であれば、評価されたかもしれません。
 しかし、「エビデンス重視」「根拠を含んだ論理思考」などが求められる時代においては、…です。

 そもそも「持論」という段階で主観です。もちろん、どんな意見・考察も、主観から完全に逃れることはできません。しかし、主観から可能な限り距離を置くことは必要です。
 また、「わかってくれる人だけがわかってくれればよい」ではなく、「価値観の異なる人でも理解・納得できるような考察」という方向性も求められています。

 正解はなくても、不正解は存在する
 事実を根拠として考察する
 主観的なものからできるだけ距離を置く
 価値観の異なる人にも伝わることを意識する

 となると、やはり論理思考など「フォーマット」にあてはめることが必要になってきます。今でいう「アカデミック・ライティング」の原則を知ること、身に付けることも重要になります。
 こうした内容を、「総合学習」に取り込んでいきました。
 ただ、こうした方向性については、先生方からも反発がありました。
 確かに、「そこまでやらなくても合格できる大学」はあるのです。
 
 なかなか、悩ましいです。
 
 

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