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突然吹奏楽部の顧問になる⑺

 経験のない吹奏楽部の顧問になって2度目の夏。
 その年から始まった、公立高校教員の「民間企業研修」と、吹奏楽コンクール県大会の日程が重なりました。学校長の「研修優先」という判断で、県大会は学生指揮で臨みました。予選は一位通過でしたが県大会の結果は銅賞。そして、結果がよくないとさまざまな「煙」が立ち始めます。

研修が終わって職場に戻ると、いろいろな話が舞い込んでくる

 夏休み中、3者面談が行われていました。
 その場で、吹奏楽部の活動に対する不満・苦情が担任に持ち込まれていました。内容は大きくこんな感じ。
 ①なぜ、顧問の先生(私のこと)が、県大会で指揮しなかったのか
 ②今年になってから、練習が制限されているのではないか
 ③部活動が忙しすぎて勉強ができないと言っている
 これ、聞いた担任としては返答のしようがないことですね。
 そして、先生方の不信感は私に向かいます。

私の不在中、卒業生が指導していた??

 もう一つは、生徒指導部長から内々の話として…。
 私が不在中、卒業生が指導と称して来校していたそうです。「⑹」で少し触れた、音楽大学に進んだOBです。
 その彼が、合奏をしたり、練習終了後、現役部員を連れて遊びにいったり…ということがあったそうです。「OBは、校内で煙草を吸っていて、しかも吸いながら現役部員と話をしていたのよ。一応耳に入れとくから、現役部員とも話して、何があったか確認して注意しておいて。やばそうなことがあったら相談して。指導案件になる前に…ということね。」
 「何か、やばそうなことがあったんですか…」
 「そのOB君ね。現役時代に吹奏楽部がらみで事件を起こして、停学になっているのよ。その時、吹奏楽部も1カ月の活動停止になっているのね…。聞いていないの…」
 聞いていません。あまり現役に近づけない方がよいとは聞いていましたが、そこまで大事件を起こしたとは聞いていません。そもそも面識がないです。彼がバンドを指導することを許可したこともないです。
 何だか…不穏な…

部員の分断が可視化されてくる…

 コンクールで3年生は引退し、2年生中心の新体制が始まっています。
 はっきりしてきたのは、コンクール至上主義の部員の声が大きくなってきていること。別に、それはよいのです。よいのですが…。
 前年夏のコンクールで県大会金賞、アンサンブルコンテストで県大会を突破したことは、県内の吹奏楽業界では話題になったそうです。県内の吹奏楽強豪校は、進学校としては3番手くらいの学校が多いです。あるいは私立。
 つまり、高校で吹奏楽強豪校に進むならば、国公立の進学は難しくなるという現実があります。一方で、難関国公立・私立を目指すならば、吹奏楽の大会で上位に進むことは諦めないといけない。そんな時、F高校が県大会で金賞、アンサンブルコンテストで県大会を突破した。つまり、F高校に行けば吹奏楽で上位を目指すことと、難関大学への進学と、どちらも叶えることができる!!
 そのように考えて、吹奏楽強豪校ではなく、F高校に進学してきた部員が1年生には多いです。その中には、中学で全国大会へ進んだ者も。
 しかし、期待して入学した高校の、最初の夏のコンクールでは、顧問がいない。土曜日は練習できない(課外講習をしています)。朝練にくる部員も少ない。やる気がない。こんなんだから!!! と怒っているのです。
 一方で、高校に入ると勉強も大変で、宿題がおわらなくて大変だ。練習休みが土曜だけなのはおかしい。日曜日も休みにしてほしい。朝練も強制は辞めてほしい。朝練のためには始発に乗らないといけない。お弁当を作るために私も早起きしないといけない…。
 という上の相反する話は、3者面談で担任の先生方が聞いた話。 
 ちなみに、朝練は強制していません。ただ、朝練に来ないのはやる気がないヤツ…という価値観が蔓延しつつあるのですね。

ここでも中学時代の価値観のままの…

 中学で上位大会まで進んだ部員に聞くと、本当に年中練習しているんですね。12月30日まで練習して、練習が終わって夕方から家族旅行に出るそうです。で、1月3日から練習開始。夏休みは8時から夕方6時まで…。
 これを、県内で人口3番目の田舎町とは言え、そこのトップ進学校であるF高校ではやれません。でも、そうしないのは、「顧問のやる気がないから」だそうです。そして、「そういう練習について来れる部員だけでやればいい…」と続きます。コンクール至上主義=少数精鋭主義でもあるんですね。…はぁ。
 また、少し前まで、F高校では「大学受験対策の講習」は行っていませんでした。「週末課題」もありませんでした。
 しかし、「学力崩壊×国公立大学合格者激減×学校5日制完全実施」という事件(?)がありました。それまで大学受験補習などを一切してこなかったF高校で、「平日放課後と土曜日午前・午後」に大学受験講習が始まりました。
 今まで、放課後・土日は練習し放題だったと思います。しかし、その時間、受験生のための補習が行われるようになりました。つまり「音に注意」が必要な状況になったのです。もちろん、先生方には、「おお、練習頑張っているね」という方もいます。
 しかし、吹奏楽部の3年生が受験補習に参加しないことに不快感をもつ先生もいます。音に神経質な生徒さんもいます。受験補習の時間は音を出さないでほしい…そういう話もきます。
 ただ、そういう吹奏楽部に対する批判的要望を招く原因は、コンクール至上主義的な発想によるのではないかと感じました。悪気はないのですが、そういう部員が、受験補習をしている教室の隣で練習を始めたり、朝練に来ない部員を責めたりしていることもわかってきました。彼らは、自転車通学ですから、7:00に家を出れば7:30に学校につきます。
 しかし、高校ですから電車通学が半分以上です。ローカル線のダイヤは本数が少なく、7:30に登校するためには始発しかない…ということに気づかないのです。下校時間も同じ。電車の時間が下校時間です。

                        つづく…
 
 

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