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ストレスと独り身とホテル暮らしとーセカンドシーズン【第11回・千葉県房総白浜編】

 2022年5月30日の午前中、私は思った。

 ーーーー 海が見たい ーーーー

 初めて降りた駅。そこに待っていたのは……

 牛だった。

 乗り換えて目的の駅に到着する。自宅の最寄駅から随分長く電車に座り続け、軽く尻が痛い。

 観光案内所が併設された駅から出ると、『ちくら潮風王国』なるものが遠くにあると看板が告げていた。名前から察するに、年中潮風が止まず、洗濯物が常にベタベタな王国に違いない。

 千倉駅から1時間に1本しか出ていない貴重な路線バス(車内の軋み音が酷い)に乗り、約20分かけて到着。

本日の愛人『房総白浜ウミサトホテル』である💖

 な、何も無ぇ……。ここまで強烈なド田舎との遭遇は久し振りだ。有るのはホテルと民宿と民家。飲食店はもちろん、コンビニや何かしらの商業施設が全く見当たらない。
 店主の気まぐれ的な個人経営の商店……店主も客も居ない。そして、徒歩で行ける範囲内に信号が無い。しばらく彷徨っていると、本気で文明に触れたくなった。

 現地でランチにありつこうと画策していたが、早い段階で諦めてホテルのある方向へと戻る。南国チックな道路脇をとぼとぼ歩くと、様々な大自然的要因で住人が去った廃屋を幾つも発見。どんなに綺麗な海の傍でも、潮風や強風による被害が趣味・嗜好を上回る。漁師の小さなボートが侘しさに拍車をかけていた。

 ホテルのすぐ目の前は『塩浦海水浴場』。海水浴シーズンにはカナリ賑わうようだが、今は私の影だけがポツリ。ゴツゴツした岩が剝き出しになった海岸、パウダー状のしっとりした砂、辺り一面には燃やされた海藻のような物体が散乱していた。
 予想していた海とは少し違ったが、小波の音と群青色の水面が心地良い。

 禁止以前に、無理。あまりの強風でテントがすぐに吹き飛ばされる。

 周辺に観光できるような要素を見つけられず、チェックインまでフロントで少し待たせてもらう事にする。
 …………何か居る。鬼怒川温泉編に出没した『鉄道むすめ』の眷属だろうか。『温泉むすめ』……まあ可愛らしいが、質実剛健なこのホテルにこのパネルは浮き過ぎる。

 早めにチェックインできた。首都圏在住限定で¥1650OFF&売店利用券付の夕・朝食有りプラン、入湯税込みで¥8400。リゾートホテルとビジネスホテルの中間くらいの金額だろう。

 客室は9階。10階建てのホテルなので間違いなく高階層。運が良い。ただ、エレベーターの構造から老朽化の進んだビルなのも間違いない。

 入ってすぐ目についたシンク台。古い民家に備え付けられてるヤツ。冷蔵庫は比較的まともなのだった。純和室。目立った欠損や損壊は無くて綺麗。テレビも大きく、意外にもBSを受信していた。広縁には小さな椅子とテーブル。

 広縁の窓からの眺め。こりゃイイ🤩 背の高い建物があまり無いのでよく見渡せるし、風も気持ち良い。純粋に景色を見て癒されるには十分過ぎるな。強風に負けず、大型の鳥類がホテルの高さより上を優雅に滑空していた。 

 極狭の3点ユニットバス。温泉大浴場があるので使う事は無い。

 夕食まではまだ時間があるので、地下1階の大浴場へ。

 ※ホテルHPから写真を引用

 泉質は塩化物泉。効能は神経痛・筋肉痛・関節痛・冷え性・疲労回復。湯冷めしにくいこの温泉は、冷え性の方にも効果抜群。塩分が汗の蒸発を防ぎ、保湿効果が高いので夏の日焼けや冬の乾燥肌にもおすすめらしい。

 風呂上りにフロント近くの御土産物売り場に立ち寄る。正直、私自慢の食指が動くブツは無かったが、昼食にありつけなくて空腹が酷く、夕食までのつなぎに手を出す。千葉県産の枇杷を使用したカスタードケーキ。中にはちょっぴりクリームが。うん、美味しい。

 やっと夕食の時間。既に気の早すぎる高齢者達が飯を漁っていた。バイキング形式で海鮮類が多い。眺めの良い窓際は全て占領されていた。

 ワカメたっぷりのサラダ。烏賊とサーモンの寿司。房総産若布とオクラ和え、千葉県産アサリの酒蒸し、烏賊のフライ。特別旨いというワケでもなく、軽い前菜だな。

 甘海老、鮪、かんぱちの刺身。うむ、脂乗りは十分で旨いな。そして、帆立と栄螺の浜焼き。栄螺は滅多に食う機会が無いが、濃い緑をした肝のほろ苦さが悪くない。

 房総産さざえカレー。カレー自体は甘口だが、栄螺のような淡泊な味の貝だからか、カレーで栄螺の風味が負けている。が、食感は良く、カレーとしては旨かった。
 漁師汁。魚の身がたっぷり沈んでおり、味噌汁の風味と良く合う。
 デザート一式。生のパイナップルはいつ食っても美味しいなあ☆

 夕食を終え、客室でまったりと過ごす。車の交通量は極端に少なく、喧騒と言えるものは全く無い。ただただ、小波の音が心地良い。住宅街の灯りもとても細やか。

 恒例の海外ドラマブルーレイを鑑賞し、眠くて仕方がなくなった私は自分で布団を敷いて休む。おやすみ、房総白浜。

 おはよう、房総白浜。生憎、関東一帯は断続的な雨にみまわれていた。この周辺は既に雨は止んでいたが、東京へ戻る道中は雨が待ち受けているようだ。

 さて、朝食だ。またしてもワカメたっぷりサラダ。野菜の煮物とソーセージとスクランブルエッグ。そして、鯵の開きを目の前で焼く。脂の乗りはまだまだの小振りなサイズだが、固形燃料で焼き上がるのを見ながら待つのは楽しい。

 千葉県産コシヒカリの白飯と味噌汁。苺ジャム入りのヨーグルトとオレンジジュース。心を動かされるような料理こそ無いが、リーズナブルに海を愉しみたいなら十分な献立だろう。

 今回はギリギリまで客室でゆっくりし、10時のチェックアウト。ホテルから千倉駅まで車で送迎してくれるので、帰りの路線バス代がういたのが嬉しい。
 さらばッ、房総白浜!

 
 補足ー

 土産物スペースの片隅に陳列されてた連中。…………高ぇ。

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