「ハノーバー聖歌隊」との「メサイア」体験

それは1月14日に、東ロンドンの教会で行われました。
聖マーティンでの日曜礼拝後、正午から1時間ほどサム・ウェルズ司祭を囲んでの「神学のお授業」に参加した後、急ぎ足で会場に向かいました。

すでに共同体が出来上がっている中へ、一人でそこに飛び込んでゆくのは常にある程度の緊張を伴いますが、それは織り込み済みなのでよしとしましょう。ただそれも、1時間ほど皆と過ごして最初の休憩の頃にはすっかり解消されてしまいました。

それよりも、たとえいっときでも、そして全部でなくとも、「聖堂でメサイアを歌う」という小さな夢が一つ叶ったことが嬉しいです。

ここらの地域の教会は概して歴史が古いので、「縁起」を読むだけでも楽しいです。今回の会場は、St Botolph without Aldgateという、いかにも昔っぽい名前の教会です
イギリス国教会の教会ですが、雰囲気から高教会であることが伺えます。しかも正面の十字架と生命の木(のような)の組み合わせの絵、両側の天使の絵がすばらしいです

聖歌隊のメンバーの年齢層が高いのは想定内でした。だいたい中年以上の皆さんです。しかし、予想を超えていたのが、合唱のうまさと、合唱指揮者でディレクターのアダム・ホープ氏の素晴らしさです!

私自身の「メサイア歴」を披露しますと、日本での学部時代、アメリカ留学時代、そして最近、東京で一般市民合唱団と一緒に舞台に立ったことがあります。学部4年生の時は、コンサート当日に風邪をひいてしまい舞台に立てなかったので、オーディエンスの前で歌ったのは3回。とにかくそれらを経て、今回の場合は歌っていてもっともストレスを感じることのなかった経験でした。というとエラそーになってしまうので言い方を換えると、もっともノーマルに、つつがなく合唱を楽しめた回だったのでした。

日本とアメリカでの経験を語ればそれは結局「けなす」ことになりかねないので控えます。今回のハノーバー合唱団に参加してすごい!と思ったのは、指揮者から指導されたらその指示通りに再現できる力の高さと、難しいところでも(とくにソプラノですが)音程が次第に下がってしまうということなく、楽譜どおりに歌えている!ということでした。あとはフツーに英語が上手いです。発音もそうですが、意味を分かって歌っています。そして何より、メサイアという曲に親しみ慣れています。「初めてこの曲歌います」という人は皆無でした。

そして、この日の経験が忘れがたいものになったのは、指揮のアダムのおかげさまです。最近の東京の時の先生も楽しく美しい声の持ち主の方でしたが、アダムもまた、トークもジョークも上手で、音楽の知識も豊富でお声も美しく拝聴しているだけでうっとりさせられる方でした。一般的にイギリス人は日本人よりも身振り手振りが大きいし、会話でのノリツッコミを誠実にこなしリアクションも大きいですが、合唱指揮の先生は「明るく楽しく指導」という特質がスタンダードなのでしょうか、それとも巡り合わせがよかったのかな?

ここまで褒めていてなんですが、結局、本格的にこのクワイヤーに加わることは難しいかもしれません。端的に、今、博論最優先で、イギリスでの時間が限られている私にとって時間がとれそうにないからです。本当に残念です。

ただ、この聖歌隊は、練習後のパブタイムを含めてとてもフレンドリーで、合唱のレベルも高いので、宣伝だけはさせていただきます。


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