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文字で繋がる【秋ピリカグランプリ2024】

神社に向かえば、お願い事をする。
お賽銭箱に、小銭や紙幣を入れて鈴を鳴らし、心の中でお願い事をする。

けれど、ここの神社は少し違う。

お賽銭箱はあるけれど、そこに入れるのは小銭や紙幣ではなく『願いを書いた紙』なのだ。

他の神社で言う「絵馬」みたいなものだろうか。

この願いの紙は、神社に入ってすぐの所に置いてあり、そこで参拝者の面々は願い事を書いてお参りへ向かう。

それでも神社を維持していけるのは、この神社の歴史と財のお陰なのだが、その話はまた今度にして。

🍁🍁🍁
「今日はどんな感じかな?」

まだ神主の大学を卒業してたの跡取、「南雲(なぐも)」がお賽銭箱を開ける。すると、パサパサッと10枚ほどの紙が入っていた。

それをまとめて三宝(さんぽう)の上に置くと、神様が祀られている場所へと奉納する。

この神社独自の祝詞を南雲が唱えると、フワッと風が舞い、ある女性の神が姿を現した。

「今日は、これか」

「はい。よろしくお願い致します」

彼女は、この神社がお祀りする女神。
「ハガキノヒメ」だ。

名前の通り文字や紙を司ると言われている女神で、この神社に合格祈願に訪れる受験生も多い。

南雲は、そんな女神の姿を見ることの出来る跡取りでもあった。

ハガキノヒメは、1枚1枚の紙を開くと、人の文字を読んでいく。
その姿は、神々しいというより、何だが人間ぽくって南雲は面白いと思っている。

「ふうん。……皆、願う事は同じだな」

「そうなのですか?」

「ああ。心配、悩み、苦しみ……後悔。あまり、明るい願いはないな。」

「前は、明るい願いで溢れていた時があったのですか?」

「あったよ。………けれど、あまりにも前過ぎて忘れてしまったがな」

「……そうなのですか」

こうして、ハガキノヒメが願い全てに目を通しても、それが叶うかどうか南雲の知るところではない。

それに、ハガキノヒメは良くこう言う

『文字には力がある。生きている。
けれど、それを書いて終わりにするか、少しでも願いに近づこうと励むかで、願いが辿る道は違ってくる』……と。

「皆、明るい願いではないが、書かれている文字の思いは変わらない。

私は、願いを書く人の文字が好きだ。


勿論、……よい人間ばかりではないがな…」

そう言いながら、ハガキノヒメは、1枚、また1枚と願いの紙を開いていく。

南雲は、そんな自分の仕える女神を静かに見守りながら、悲しくも嬉しそうに微笑む女神の姿を、目に焼き付けていた。

(989文字)

〜終〜

ピリカさん
初めて挑戦させて頂きました。
よろしくお願い致します(⁠ ⁠ꈍ⁠ᴗ⁠ꈍ⁠)

※ハガキノヒメは、フィクションです。

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