感情の濃度 1412文字#青ブラ文学部
正直に言えば、彼が告白してくれた時、私の恋心はそんなに芽吹いてはおらず、濃度としても薄く、例えるなら、彼の告白から絵の具が1滴垂らされ広がろうとしている感じだった。
そして、種も蒔かれ、水を貰ったばかりの様な感覚だった。
けれど、今はどうだろう。
私は、告白をしてくれた彼よりも彼の事を好きになり、慕う様になったと思う。
「雪斗……もう寝る?眠い?」
ベッドに座っている雪斗に話しかける。
「ううん。まだ寝ないよ」
私は、自分で言うものなんだがガードが硬い人と、良く言われる。
全然そんな事ないのに…。
なんて思いはするが、もしかしたら私の気づかぬ内にそう思われる事をしていたのだろうか。と、悩んだりもした。
だから、雪斗に告白された時も、いの1番に思ったのは『何で?』という感情だった。雪斗だって、私が周りからどう思われているか知っていた筈だから。
それなのに、何で告白をしてくれたのだろう。……そう思った。
「……ねえ…」
「うん?何?」
「……どうして……雪斗は私が好きだって、告白してくれたの?」
「……へ?」
「私が周りからどう思われてたか、知ってたでしょ?」
「うん。知ってた」
「……だったら、どうして……?」
「藤香(ふじか)は、周りが言うような人じゃない。俺はそう思ってた。俺がそう思ってるんだから、周りがどう言おうが関係ないね、」
「…………、」
「それに藤香は、俺が思っていた様に可愛いくて素直で、好きだ〜って思う人だったよ?
それで良いんじゃない?」
「………っ」
正直、私は雪斗に告白されるまで、雪斗の事は、会社のイチ同僚くらいにしか思っていなかった。
目立つ存在ではなかったし、任された事をコツコツと、けれど効率よくこなしていく人という印象しかなかった。
けれど、雪斗に告白されて、雪斗の事をよく見るようになって、雪斗の仕草や声、言葉、仕事のこなし方…会社での姿だけだったけれど、どんどん私は惹かれていった。
そして、付き合う様になって、普段の雪斗を知って、朝が弱い事とか、ピーマンが苦手とか、笑顔が素敵な事とか、会社だけでは分からなかった雪斗を沢山知った。
雪斗に告白されてから、蒔かれた種は発芽をし、スクスクと芽を伸ばし、花を咲かせている。
そして、1滴垂らされ広がっていた絵の具は、次から次へと雫が落とされ広がって大きくなり、色の濃度は増していった。
「…ねえ雪斗…」
私は、雪斗が座っているベッドへと向かい、雪斗の近くに腰をおろす。
「うん?なに…?」
雪斗の近くに腰を下ろした私を、雪斗は自分の太ももの部分に座らせる。
「…なんでしょうか?」
悪戯な笑顔で雪斗が問いかけてくる。
「……私に、告白してくれてありがとう……私、雪斗に好きって言って貰えて、今…とっても幸せ……」
「それだけ?」
「えっ?」
「好きだよ。藤香。
藤香は違うの?幸せなだけ……?」
「……幸せなだけで、充分でしょ?」
「うん。そうだね。……でも、それだけ?」
……雪斗は、絶対面白がってる。
顔がみるみる赤くなっているであろう私を見て楽しんでる。
「………いじわる」
「それは褒め言葉かな?」
「……雪斗」
「うん?」
「……………………好き……」
そう言いながら雪斗の胸元に顔を寄せると、雪斗の体温と鼓動が聞こえてくる。
心臓、うるさいでしょ?と雪斗は言いながら、雪斗と私はキスをした。
染まる。
そまる。
好きという感情の濃度は…花は……
また濃く染まり、新しい蕾をつけた。
〜終〜
こちらの企画に参加させて頂きました!
山根あきらさん
今回はなんだが書いていて恥ずかしくなってしまいました(笑)
よろしくお願いします。
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