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音楽考察 「生き残るアーティストの極意」 〜イギリスの伝説的バンドOASIS(あるいはギャラガー兄弟)を例に挙げて〜(改訂版)

タイトルからして「いやオアシス(オアシズではない)は解散したやん、生き残ってないやん」というツッコミが聞こえる気がするが、彼らが解散した原因はギャラガー兄弟の不和である。不人気が原因とかでは全くない。

解散するまではかなりメジャーに国内外を活動してきたし、解散後もノエル、リアム両ギャラガー兄弟はどちらも今でも活躍していてアーティストとして健在である。本稿では彼らをバンドに限らず売れて生き残るアーティストのロールモデルとしたい。

僕は長年音楽が趣味でメジャー、マイナー問わず、ジャンルすら問わず色んなアーティストを聴き続けてきた。そんな中、売れたり生き残るアーティストにはおおまかに7ヶ条あると思ったのでちょっと記そうと思った。

勿論、いくつかの条件といってもセンスは最重要な才能だ。しかしセンスだけだとどうにも安易だし漠然とし過ぎている。より詳しく語りたい。

そしてその例として案外オアシスが最適であると思った次第だ。その条件はひょっとすると「そんなもんみんな知っとるわい」とか突っ込まれるかもしれないが、組み合わせや内容にはひょっとしたらオリジナリティがあるかもしれないのでここに記そうと思う。

なお、ここではアーティストにシンガーやダンサーは含まず、いわゆるシンガーソングライターやソングライターに限定している。

①上手くパクること

本来引用というのはどんなジャンルの芸術でもありふれたものだ。それ自体は禁止事項でも何でもない。
自分のアーティストは完全にオリジナルで唯一無二だと主張するのは盲目ファンなだけだったり、そのアーティストのルーツや音楽自体には関心がなかったり無知だったりするだけである。

ただし勿論楽曲丸々パクったりはNGなので、上手くパクらなければならない。

オアシスも敬愛し最近「新曲」をリリースし話題になった世界的バンド、ビートルズも「俺たちはパクるのが上手いんだ(笑)」とあけすけに語っていたし、勿論オアシスもまたインタビューで引用を指摘されるどころか自ら引用元の音楽について語ったりもしている。

というかオアシスはかなり大胆にパクってる方で、ギターのリフを丸々拝借してたり何ならサビを有名バンドから丸パクリしてたりする。ただし勿論楽曲丸々、とかではない。

どのパートをパクるのかというセンスも必要と言えるかもしれない。

ではそんなパクリバンドのオアシスはなぜ解散するまで国内外でアリーナ〜スタジアムクラスで活動できていたのか

次の条件に移る。

②パクる対象はタイムリーなものではないこと
③対象のチョイス

当然の話ですね。オアシスはパクるといっても上手くパクることの上、重要なのは影響を受けパクったのがやや古い音楽だったということだ。

彼らが敬愛するビートルズやローリングストーンズ、T-REXやボブ・ディランは彼らの親とか自分より上の世代が熱中していたバンドやミュージシャンであり、当時流行っていたバンドや音楽から主に引用したのではない。
むしろビートルズが好きとはダサくて言えない空気が当時はあったらしい。

つまり逆に流行ってないから当時の若者は誰も聞こうとしていないことはチャンスでもあったのだ。オアシスのリスナーである若者はビートルズやT-REX等を熱心に聞かないから勝手にオリジナルだと思ってくれる。すぐバレたけど、初めてを誰から聴いた、はリスナーにとって重要だ。まるでアヒルの刷り込みのように。

また、売れればダサいという空気を変えることもできる。実際オアシスが売れてビートルズは再評価された。安易に流行りを追うだけではダメだしリスナーにあっさり見抜かれる。

誰をパクるかにもまたセンスが問われるのだ。

④オリジナリティというか「節」があること

それでも彼らはただのパクリバンドでは全くなくオアシス節とも言える味付けができていた。

たとえコードやメロディ等を引用しても、一聴すれば「オアシスだ」とわかる特徴が彼らの音楽にはあり、それが愛されもしたのである。

ただしこの音の特徴は武器でありともすれば飽きられる原因にもなり得るが、オアシスもやはり例外ではなくちゃんと初期と後期では同じロックでも音楽性が微妙に異なっている。

具体的には初期は軽快で威勢のいいロックンロールがメインでポップスの要素も濃くメロディが強かったりするが、後期はビートが効いていてbpmが遅く、どっしり構えた重厚なサウンドがメインになっている。

飽きられないためにマイナーチェンジを繰り返しながら、しかし同一性は保持する能力も必要だと思う。

おそらく音作りに何のこだわりもないとそれをリスナーに見抜かれて長期の活動はできないだろう。

⑤名曲を量産できること

これも長期的に活動するにあたって欠かせない要素だ。ヒット曲をまぐれの一曲しか書けないようでは(それでも凄いのだが)長く聴いていても楽しくない。

やはり幅広い音楽性で心をアップリフトしたりチルしたり、メロウだったりビターだったり、メランコリックな気分にしたりシンガロングできたりと色々な感情を揺さぶる曲を量産できるのも重要である。

⑥人間性、キャラクター

あともう一つ重要なのは本人の人間性、つまりキャラクターである。これをthe pillowsの山中さわおは最重要とも言っている。「カリスマ的な才能がなくてもキャラクターがよければ生き残る」と。
僕も同意できる。
これは勿論アーティストがみんな聖人君子である必要性を言っているわけではない。

実際、オアシスのギャラガー兄弟もまたどちらも口が悪く、他のアーティストを気に入らなければ平然と公の場でけなし、リアムはステージを声の調子が悪いとドタキャンしたり途中で切り上げたり、BAR等で酔って暴行事件を起こす等散々問題行動を起こしてきた。
日頃の摂生も悪くボーカルだって万全の時の方が少なかったくらいだ。

「何だよ人間性が最悪でも人気あるじゃん」と思われるかもしれない。

実際、薬物等のスキャンダルがあっても、一般社会なら一発アウトでもアーティストは復帰できたりする。
オアシスも薬物絡みのトラブルは多々起こしたが、人気は維持できていた。

こういった例からよくアーティストには世間やファンは甘いと思われがちかもしれないが実は全くそんなことはない

スキャンダルを起こしつつ活動できるアーティストにも条件がある。

そのスキャンダルが悪質でなかったりパブリックイメージ(具体的には歌詞の内容や本人の普段の発言や行動)と矛盾しない場合においてのみである

たとえばギャラガー兄弟。

先ほどどちらも公の場で他のアーティストを貶すと書いたが、逆に貶すにしろちゃんと公の場で言っていたのだ。

彼らは気に入らないバンドとにこやかに握手して陰でボロカスにこきおろすような人間ではなかった。
表と裏で顔を使い分けるようなある意味利口だが姑息な人間でもなかったのだ。

勿論彼らもまた人間である、パブリックとプライベートで多少の違いはあるだろうが、しかしファンは彼らのある意味での正直さを愛していた。

色々問題を起こしても歌詞の内容や音楽性と矛盾しているわけでもなく、彼らのこだわりや好きなバンド、悪口を言う相手には一貫性はあり彼らなりの筋は通っていた。

リアムの暴行事件も酔った勢いのものが多く、酒の場でのことであり無抵抗な一般人に一方的に絡むなど悪質なものではなかった。

さらにリアムの方が問題児ではあったが、彼はプライベートであってもファンからのサインには快く応じ、メジャーなアーティストの割にファンサービスがいい一面があった。ステージをドタキャンするのも毎度ではなく、大体はきちっとパフォーマンスしたしその天性の歌声で聴衆を魅了できたのである。

ツアー中の飛行機で疲れているであろうに他の客の赤ん坊が泣きじゃくりスタッフがリアムの機嫌を心配した時も、彼は「いい歌声じゃないか。最高の音楽だよ」と文句も言わなかったらしい。

またギャラガー兄弟は発言もユーモラスで面白く、あるアーティストは
「アーティストは音楽を作ってそれを売るためにインタビューを引き受ける。ノエルはインタビューのために音楽を作る」と揶揄したほどだ。
その発言もやはりノエルの話術を評価してのものだ。

このように売れ続けるアーティストには必ずと言ってもいい程「ナイス」な側面がある。

一方、愛や平和、純愛を歌いそれがウケてるアーティストが浮気、不倫三昧だとバレたら活動するのは厳しいだろうし、殺人は勿論悪質な暴行、詐欺、酷いいじめを行っていた場合もアウトだ。

だから薬物関係で捕まってもそれだけではファンは見捨てたりはしない。殺人や暴行、詐欺と違って直接他人に迷惑をかけるものではないので社会的にはアウトでもファンダム的にはセーフだったりする。

ただしファンに嘘をついてたりやはりパブリックイメージと著しく異なっていた場合には完全にアウトになる。

最近ではコブクロが複数不倫を繰り返していたのがバレてメジャーな活動から遠のいてしまったのは記憶に新しい。TVでも一切見なくなった。これはやはり健全で実直なパブリックイメージからかけ離れたスキャンダルだからだ。
不倫は犯罪ではないにも関わらず、だ。

過去のいじめとはいえコーネリアスがその件を暴露されパラリンピックの音楽担当を外され世間からバッシングを受け、しばらく自粛せざるをえなくなったのも有名である。コーネリアスの場合は未成年の時の話だったしファンの間では勿論有名で反省しているのもわかっていたことなので徐々に復帰しつつある。

つまり世間を裏切っても自分達を裏切ってない場合のみにおいてファンは優しいだけなのだ

音楽センスだけでなくある程度の人間性も問われるとなるとアーティスト活動も甘くはない。

そしてもう一つ重要なのは

⑦リスナーは甘くないと理解していること

なかには甘やかしてくれるファンに甘え尽くすバンドやアーティストもいるだろうが、やはり活動は長続きしないし、恐ろしいことにファンにも飽きられてしまう
調子のいい時はファンもまた調子のいいことを言ってくれるものだ

売れてしまうと自分は特別な人間だとか勘違いしてその立場に甘んじてしまうものだ。
そしてファンに飽きられる頃には人気もなくなっててもう手遅れだ

ポプュラリティを維持するためには上記の通りある程度の筋は通す人間性も大事だし、いつまでも同じ音楽をやるだけではダメだし、自身の楽曲に対する批評眼(耳?)も絶対に必要なのだ。

ーまとめー

①上手くパクること
②パクる対象はタイムリーなものではないこと
③対象のチョイス
④オリジナリティというか「節」があること
⑤名曲を量産できること
⑥人間性、キャラクター
⑦リスナーは甘くないと理解していること

以上7ヶ条が売れて生き残るアーティストに必要だと思われる。
自分で書いてみて思ったがなかなかアーティストとして長く活動するのは大変に思われる。
音楽性にも人間性にもセンスが問われるのだ。

しかしこの7ヶ条を満たしていれば誰でもきっとアーティストになれると思うのだが、いかがだろうか。


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