【第3回】地方自治と選挙について考える 

 4月9日と23日に統一地方選挙の投開票が行われる。この機会に地方自治と選挙について考えてみたい。

 地方自治の基本的な原則は「ニア・イズ・ベター」だ。直訳すると「近いほうがいい」。つまり、国民の身の回りのことは、国民に身近である行政機関の地方自治体が行ったほうがいいということだ。逆に言うと、国防等の分野は地方分権になじまない。なので、国のことは国、地方のことは地方で行うというように役割を補完するのだ(補完性原理)。

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 これを裏付ける理論として「分権化定理」がある。簡単に言うと、国よりも地方自治体の方が、住民の生活実態やニーズなどの情報を把握しやすいため、地方自治体に自治権を持たせ、その責任で行政サービスを提供した方が国全体として、より高い行政が叶うというものだ。

 ただし、地方自治体が本当に市民のために、目配りの利いた細やかな行政サービスを提供するかどうかはわからない。

 そこで、「補完性原理」と「分権化定理」と一緒に言われるのが、「足による投票」だ。市民にとって好ましい政治家を選ぶ「手による投票」に対して、「足による投票」は、自分にとって好ましい行政がある地域を住む場所として選ぶということだ。

 例えば、子育て中ならば、子育て支援が手厚い地域に住む。介護中ならば、介護に関する制度が整っている地域に住む。このように、地方行政が自分のニーズに応えてくれるかどうかで、住む場所を選べばいいということだ。

 そして住んでいるからには、地方自治体の行政に意見を述べることができる。住んでいる行政が気に食わなければ、選挙の投票で物申せばいいのだ。

 2015年6月に成立した改正公職選挙法により、18歳・19歳の人も選挙に参加できるようになった。参政権を行使するには、社会の一員として頭を働かせる必要がある。

 もちろん、参政権を放棄する(投票しない)こともできる。しかし妙なのは、いざ自分に不都合なルールができた時には文句を言う人が多い点だ。どのようなルールを作られても構わないというのならば、投票に行かなければいいが、それが嫌なら自分なりに考えて投票することだ。

 どの候補者に投票をするか考える時の方法として「マイテーマ」を1つだけ決めておくといい。選挙の争点を洗い出し、そこから自分にとって最重要な問題を絞り込んでおけばいいのだ。完全に一致する候補者や政党がいない可能性も十分にあり得るので、この思考法はとてもお勧めだ。

 自分にとって最重要な争点で一致していれば、それ以外の点で意見が違っていても、そこは目をつぶるしかない。そうでなくては誰も選べないからだ。どこかで妥協するというのが政治の一面である。

 一票の力は単独では微少だが、数が集まれば力となる。参政権の放棄は、民主主義の精神に反する一番の愚行だ。

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