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インサイトからヤクルト1000のヒット要因を洞察してみる~子供時代の体験はインサイトと関連が強い!?~

日経MJの2022年上期ヒット商品番付にものっている「ヤクルト1000/Y1000」。2021年から驚異的な売上を記録しているようで、その数1日120万本だとか。人口から考えると日本人の1パーセントが毎日買っている商品になります。なかなかえげつない数字です。

メインとなるターゲットはビジネスマンで、ストレス緩和や睡眠の質向上といった効果・効能があるようで、そういった健康面のメリットが購入意欲を高めている要因だと思われます。それを支える乳酸菌シロタ株の臨床試験の結果や高密度、高菌数であるといった根拠も顧客の信頼を得るものと当然なっていることでしょう。

また、大人向けであることから甘さを抑え、且つ容量は通常のヤクルトより少し多いサイズとしており、

「ヤクルトだと甘すぎる」
「ヤクルトはおいしいが容量が少ない」
といった大人にとってネガティブになりかねない要因を取り除いていることも開発段階で間違いなく考慮されている部分かと思います。

どのように販売をすすめたのか?


超絶ヒットのヤクルト1000

販売の戦術としても最初はヤクルトレディによる販売のみ、またエリアを絞ってテスト的に販売していくなど慎重に、段階を経て市場の情報を集めて活かす方法も見事にハマったようです。

このように商品として機能やシーンを含めたコンセプトがしっかり立って、マーケティングの展開も丁寧に進めてヒットしたヤクルト1000ですが、ヒットも爆発的なものとなっています。
では、この進め方が爆発を引き起こすことが可能だったのでしょうか?
あくまで、ニュース・記事になっている部分しかわからないので、もっと様々なこともやっているのだろうとは思いつつも、何か生活者の心理、インサイトの視点でヤクルト1000が爆発的に売れている理由はないのかなと考えてみたくなりました。
(ちなみに、タレントのマツコさんがTVのバラエティ番組で紹介したり、トップYoutuberのヒカキンさんがヤクルト1000について動画をあげていたりとそれなりに話題となる要素もつまってはいるようです)


ヤクルト1000はヤクルトとして飲まれている?

いきなり何言ってるんだという見出しですが。。
ヤクルトは日本で多くの人が知っています。全く知らない人を探すほうが困難でしょう。
なぜ知っているかというと、幼少期のおいしいジュースという位置づけで多くの家庭では子供に飲ませるのにちょうどいい飲料という確固たるポジションを確立していることが大きいのではないでしょうか。

だれもが子供の頃に飲んだ経験があるヤクルト

子供の時に飲んでますよね

もちろん私もありますし、甘さとわずかながらの乳酸菌の酸味が合わさっておいしい記憶があります。

つまり、ヤクルト1000のターゲットにおいている30~50代の人にとって、ヤクルトは幼少期に個人差はあれどだれもが存在を知っており、且つ、飲んだ経験もある稀有な存在であるということです。

ところが、大人になっていくにつれ、次第にヤクルトを飲む状況がなくなっていきます。これはなぜなのでしょう?おいしいことを知っているのに飲もうと思われないのです。自分にあてはめてみても、ヤクルトはおいしい記憶はあれど、飲もうという積極的な気持ちまではいかない不思議さがあります。(ちなみに似たような味のビックルとかピルクルとかありますが、ヤクルトの量が多い模倣品的な位置づけであまりパッとしていない印象です)

乳酸菌飲料というくくりでは、R1やLG21は飲むことはありますが、おいしさより健康の視点で飲んでいるように思います。味はまずいのは嫌ですが、ヨーグルトの味であればいいかという程度。

ヤクルト1000は本当に健康目的?

ヤクルト1000は大人が健康目的を表向きな理由として飲むヤクルトとして待望の販売だったのかもしれません。
これは、大人から“ヤクルト飲みたい!”という要望があったわけではなく、あくまでインサイト上での待望です。
30~50代の人も、実は“ヤクルト飲みたいけど子供用だから自分が飲むものではない”とヤクルトの存在を子供用と定義づけているものの、ストレス緩和などから大人向けヤクルト=自分向けの存在となり、堂々とヤクルトを飲め理由ができて、購入につながっている欲求の顕在化です。

インサイトの視点で考えると、
「ヤクルトおいしいけど子供が飲むもの」「子供の頃に飲んだなぁ~」と意識上にはあるけど、”ほんとは今でも飲みたい!”が、心の奥に眠っていて、本人も認識していない意識だと。


ヤクルト1000がヒットした要因をインサイト起点で考えると、このようなことが考えられるのではないでしょうか。


幼少期の体験

インサイトは本人のこれまでの体験からの影響もあると思われます。特に子供の頃の潜在記憶(エピソード記憶)が、これまでは記憶の奥底にあり顕在化していないものの、今回のヤクルト1000のような商品が目の前に現れた時に記憶から強いニーズに変換され、自分向けのヤクルトと解釈され、思わず飲んでみたくなる人がヤクルトの場合は多くの人が該当するためヒットにつながっているのだろうなと思います。

もちろん、飲んだ時の効果に対する本人の満足感、そもそもおいしさがある飲み物、容量と甘さのバランスがちょうどよい、といった商品力の高さを持ち合わせている存在であることがリピートにもつながり売れ続けている理由にあることは言うまでもないことではありますが。

今回はヤクルト1000が大人の飲み物として売れている要因をインサイトの視点でも解釈してみました。

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