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さくらももこ『もものかんづめ』読書感想

大好きな作品。

心を落ち着けたい時によく開いています。
受験の待ち時間に読んだのも、今ではとてもいい思い出です。

今回、久しぶりに再読したので感想を書いてみようと思います。



作品紹介

「こんなにおもしろい本があったのか!」と小学生からお年寄りまでを笑いの渦に巻き込んだ爆笑エッセイの金字塔!!

著者が日常で体験した出来事に父ヒロシや母・姉など、いまやお馴染みの家族も登場し、愉快で楽しい笑いが満載の一冊です。


こんな人におすすめ

○クスッと笑える話が好きな方
○ 普段あまり読書をしない方
○鋭い感性に触れたい方



感想(※以下ネタバレを含みます)



水虫研究

初めて読んだ時は、「いきなり水虫の話⁉︎」とかなり驚いたことを覚えています。

そんな話、普通書きたくないじゃないですか笑
それを独特のエッセイ調でおもしろ可笑しく綴るさくらさん、流石だなあと思いました。

そして、自分なりに研究を重ねる姿にはハッとさせられるものがありましたね。私だったら、お姉ちゃんのようにすぐに医療に頼ってしまうと思います。

決してそれが悪い訳ではないのですが、「まず自分でどうにかしてみようと模索する」ことってとても大事なことですよね。

漂白剤に浸してみたり、水虫軟膏をブレンドしてみたり、学習スタンドで熱責めしてみたり……それはもう様々な知恵を絞り出して水虫と向き合う姿には、感動すら覚えました。

野口英世並みの熱意で研究を行い、一日のうち七十パーセント以上の時間を水虫に費やしていた。こうなると、苦悩だか生きがいだかわからなくなってくる。

この部分、すごく好きなんですよね。自分なりに必死に向き合ったからこそ出てくる言葉だと思います。

現代社会では、良くも悪くも簡単に情報が手に入ります。
そればかりか、「何にでも効率を求める」というような風潮を感じてしまうのは私だけでしょうか。

その分、「自分で考える力」がどんどん失われていっているような気がしてなりません。(私も含めて)

それに抗って、という訳ではありませんが、私は最近「非効率を贅沢に味わう」ことを心がけています。

例えば、

今まで適当に畳んでいた洗濯物を、時間をかけて丁寧に畳んだり
今まで時短重視だった料理に、たっぷり時間をかけてみたり
蔵書検索をせずに、図書館に本を探しに行ったり……

一見無駄に見えるようなことですが、やってみると案外新しい発見があったりします。

洗濯物を綺麗に畳むコツや、手間をかけた料理の美味しさ、あるか分からない本を見つけたときの歓び。

小さなことばかりですが、人生に彩りを与えてくれるような、そんな瞬間を大事にしています。


ムダな事

こうしてみると、私の人生ムダだらけだと思っていたが、ムダな事こそネタに使えて大切なものだと、恥かしながら我が人生に光明あり、の気配を感じている。

これは盲腸になったさくらさんが、それをネタにして漫画を書いたことに対しての所感です。

すごくいい言葉ですよね。

前述した「非効率を贅沢に味わう」にも通ずることですが、なんだかんだ人生に無駄なんてないんだなあとしみじみ思いました。

また、健康食品売り場でバイトをした話には、こんなことが書いてありました。

それからしばらくして、我が家に現金書留が届いた。中には五万円余り入っていた。この金で、あの時のフェアのジャムがいくつ買えるか確かめるために、私は三十分かけて電卓を探した。

こういった些細な好奇心を無視せず追求する姿勢が、さくらさん独特の感性を作り上げているのだなあと感じます。

他にも、葬式で泣いている女を見て「泣き女」を連想したり、週刊誌に載っていた「サル人間」を検査中の自分と重ねたりと、「なんでそんなこと知ってんねん!」と突っ込みたくなるような場面が多いんですよね。

いつだったか読んだ本に、「センスは知識だ!」みたいな記述があったのですがその意味が改めて分かったような気がします。


どんなに些細なことでも、非効率でも、無駄に思えるようなことでも、そこに好奇心を見出せるような人間になりたいと、心から思いました。

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