見出し画像

生殖可能な人工生命 「ゼノボット」

ゼノボットは、アメリカのバーモント大学とタフツ大学による共同研究チームが開発した、世界初の「生命のロボット」です。カエル🐸の幹細胞からこれらの微小な生物を作り出しました。

ゼノボットは数百個の細胞から成り、体積は1mm未満です。それぞれのゼノボットは、生物学的な形状と行動を示すように設計されており、これは進化的なアルゴリズムを用いてコンピュータで予測されます。それぞれの設計は、実際の細胞を使用して物理的なゼノボットを作るための「設計図」になります。

ゼノボットは、細胞の種類と配置を制御することで、特定の形状を取り、特定のタスクを達成することができます。例えば、一部のゼノボットは、小さなペレットを移動することができます。他のゼノボットは、集団で働く能力を持ち、より大きなタスクを達成することができます。

初期実験映像 幅は1ミリ未満

これらの生命のロボットは、体内で特定の作業を行ったり、汚染をクリーニングしたり、薬物を体内で運んだりするなど、多くの潜在的な応用が考えられています。しかし、この新しいテクノロジーはまた、倫理的な問題も提起します。これは、生命とは何か、そして生命をどのように扱うべきかという基本的な質問を再度提起します。

上:PC側でAI自動設計 下:生命システム

AIで自動的に多彩な生命体候補を自動設計して、細胞コンストラクションキットで人工生命システムを実装。

幹細胞に由来する「皮膚細胞」と「心筋細胞」の2つだけで構成されている。

皮膚細胞:体を硬く支え体格を形成

心筋細胞:小さなモーター の役割を果たし、体積を縮めたり伸ばしたりしてゼノボットの形状変化をさせる

形状変化の組み合わせで4足歩行や円周運動なども可能になります。ゼノボットの体の形状と細胞の分布は、進化的アルゴリズムを使用してシミュレーションによって自動的に設計されます。このプロセスは、特定の課題を達成するために行われます。ゼノボットは、歩行や泳ぎ、ペレットの押しや貨物の運搬、群れで働いて皿の上に散らばったゴミを整理するなどの機能を持つように設計されています。また、食べ物が不足していても数週間生き延びることができ、自己治癒能力も持っています。

現在、ゼノボットは主に形態形成中に細胞がどのように協力して複雑な体を構築するかを理解するための科学的なツールとして使用されています。しかし、ゼノボットの行動と生体適合性からは、将来的にさまざまな応用が考えられています。

ゼノボットはカエルの細胞だけで構成されているため、生分解性です。ゼノボットの群れは、ディッシュ内の微小なペレットを中央の山に押し寄せるために協力する傾向があります。これを踏まえて、将来のゼノボットは海洋のマイクロプラスチックに対して同じことを行える可能性があります。つまり、マイクロプラスチックの微小な粒子を見つけて一つの大きな塊にまとめ、従来の船やドローンが回収しリサイクルセンターに持ち帰ることができると推測されています。ゼノボットは従来の技術とは異なり、作業や分解による追加の汚染物質を生成しません。彼らは組織内に自然に蓄えられた脂肪とタンパク質からエネルギーを利用し、約1週間持続します。その後は単に死んだ皮膚細胞に変わります。

将来の臨床応用において、ターゲット指向の薬物送達など、ゼノボットは患者自身の細胞から作られることがあります。これにより、他の種類のマイクロロボット送達システムにおける免疫応答の課題を回避することができます。さらに、追加の細胞タイプとバイオエンジニアリングを組み合わせることで、ゼノボットは動脈のプラークを除去したり、疾患を検出して治療する可能性があります。


生殖する「ゼノボット3.0」の開発に成功

2021/11/29 米国科学アカデミー PNAS に発表されました。

"ゼノボット3.0"の生殖は、「自発的な運動学的自己複製」として知られる現象によって行われます。アフリカツメガエルの胚から多能性幹細胞を収集し、これを解離させて生理食塩水に入れると、自然に結合して約3000個の細胞の塊が形成され、5日後には繊毛上皮で覆われた球状の構造となります。

この球状構造をペトリ皿内の約6万個の幹細胞の中に配置すると、集団行動によって一部の細胞が重なり合い、50個以上の細胞からなる個体が生まれます。そして、さらに解離した幹細胞があれば、同様のプロセスによってその個体から孫の個体が生成されます。

研究チームは、人工知能を利用して自己複製を効率的に行うために、C型の形状が最適であることを発見しました。そのため、切り込みを入れてC型の形状を持つゼノボットが幹細胞の中で移動します。このゼノボットの口の部分に解離した幹細胞が次々と集まり、積み重なっていきます。数日後には、このゼノボットから子となる個体が自ら動き出すようになります。

ゼノボットは現在進行中の人工生命の研究です。
情報更新次第、発信していきます。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?