見出し画像

2.孤高の男の涙

気が付くと泣いていた
涙を流しながら
フリーウェイを走っていた
安全な場所にバイクを止める
サングラスが曇っている
顔から外してみると
サングラスの下の方に
なにやら白い粉が付着している
どうやら俺が流した涙が
下から風に煽られ
サングラスに付着し
そのまま乾いて白い粉になったらしい
涙って乾くと粉になるんだな……
バイクを止めて
サングラスを拭いていると
通りがかりのゴツいバイカーが速度を落として
デカイ声で
「Are you ok⁇」
俺は親指を上に向けて
大丈夫!とサインを送った
バイクに跨がっているってだけで
見ず知らずの俺を心配してくれている
全く・・・
本当に優しい連中だぜ・・・

俺はここに来るまでの間
何人の地元のバイカーに出会ったんだろう
しかもみんな旧知の仲間であるかのように
接してくる(笑)
昨日なんか
たまたま入ったガスステーションの
隣りで給油してた夫婦のバイカー
その日は彼らと一緒に走ったもんな(笑)
・・ったく
どれだけフレンドリーなんだよ(笑)
バイカー同士に国境は無い
言葉も必要ない
「バイクが好き」
それだけでお互いの
距離なんか無くなっちまう
これはこっちに来てから
毎日肌で体験してること
数学と音楽とバイク
これは国なんてもんを
あっという間に跨いじゃうもんな
これは俺が保証する
マジだ
しかし我ながら凄い発見だぜ(笑)

それにしても・・・
さっきのインディアン・・・
俺の過去生だって言ってたなぁ
確かに当たってるフシはある
俺は
小さい頃から感覚で生きてるもんな・・
木や虫、曇とだって
何となくではあるが会話できる
馬は目を見れば
彼らが
その時何を感じているか
何を思っているかが良く分かる

ただ草食動物は
自分が直視されるのを嫌う
何故なら
「一点を集中してみられる」
ということは
「捕食される危険性が近付いている」
ってことだから・・・
トラやライオンに狙われているみたいで
落ち着かなくなる
まぁ
人間に慣れた動物なら話は違うだろうけどな

俺は幼い頃から
物を作る
自然を感じる
バイク

広い空
広大な大地が好きなんだ
逆にっつうのは
どうも性に合わない
閉じ込められてる感覚になるんだよな
檻みたいに感じるんだよ

あ、そうそう
この前
モニュメント・バレーで馬に乗ったよ
まだら模様の可愛い目をした子だった
Navaho族のガイドに先導されて歩くんだが
俺が跨がる馬、
いたずらをしやがる
わざとガイドから離れていくんだ(笑)
「おいおい😃💦どこ行くんだ?」
慌ててガイドの馬が引き戻しに来る
何回かやられたな(笑)
ありゃ可愛かった

・・・おまえ
確信犯なのは判っていたぜ・・(笑)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それにしても
さっきは
マジに不思議な体験だったなぁ・・・

そういやあの時は
バイクや大地、風、呼吸と
完全に一体になっていて
自分という意識がなくて・・
なんていうんだろうか・・・
瞑想⁇とでもいうのかなぁ
うん、瞑想状態だったんだろう
「無」
そんな精神状態かな・・・
ありゃぁ本当に気持ちよかった
バイクに跨っているだけでも
気持ちがいいのにさ
不思議なこともあるもんだ

俺、ハーレーで90キロ以上出して
走ってんのに
突然話しかけてくる存在が居てさ
いいか、フリーウェイ走ってたんだぞ
その横にさ
いきなり馬に乗ったインディアンがいたら
そりゃびっくりするじゃん?
でも俺以外の人には
見えていない感じだったけど・・・
それにしても面白いツーリングだったなぁ
俺、不思議な話には疎いけど
あれは信じる以外にないよなぁ
俺の過去生

鉄馬と生身の馬
こんなツーリングってあるかぁ?(笑)

精神的にすっかり参ってた俺はさ
なんの前触れもなく
ヘルメットや数枚の着替え、パスポート
クレジットカード持って
いきなり日本を飛び出してきた
うん
きっと何かに
背中を押されたんだよな
そして
この大地に導かれたんだ
ネヴァダ、アリゾナは若い頃から
結構な回数来ているからな
今じゃ地図なしでも走れる位

北米のフリーウェイって
マジに気持ちいいんだよなぁ・・・
どこまで続いてんだよって思う位の
一直線の道
見渡す限りの砂漠、荒野
で、いきなり街が現れたりしてさ
その街の寂れたモーテルなんかも
いい味出してんだよな
メキシカン料理やアイスクリーム屋
キャンディー屋さん、
WALMART
SUPER 8 MOTEL
COMFORT INN
JACK IN THE BOX・・・

でもこんな景色
雰囲気がたまらなく好き
街から街へバイクで流す
そんな旅ってのも・・・
たまらなく楽しい

広大を一人で荒野を走る
優しい風が俺を包んでくれる
細胞一つ一つに大地のエネルギーが
染み込んでいくのを感じる

数日前まで
夢遊病者みたいだった俺が
少しずつ息を吹き返しつつある
最愛の人を失った事で
心が一度死んだ
心が再起不能
心が木っ端微塵に
粉々に吹き飛んだ
もう誰も
俺を立ち直らせることは出来ない
そんな風に思っていた
それは・・・
余りにも辛すぎる別れだったから

             続く・・・

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?