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岡本太郎と燕子花図屏風

国宝である尾形光琳の「燕子花図屏風」を見たことはあるだろうか?
教科書では馴染みのある尾形光琳の有名な作品は日本国内にある。
紅白梅図屏風(国宝)は、静岡県熱海市のMOA美術館。
燕子花図屏風(国宝)は、港区青山の根津美術館。
それぞれ公開時期は面白く、紅白梅図屏風は梅の花が咲く毎年2月に、燕子花図屏風は燕子花の花が咲く4月〜5月にそれぞれ公開されている。


岡本太郎「日本の伝統」


さて、私が燕子花図屏風を強烈に見たい衝動に駆られたのは、岡本太郎「日本の伝統」を読んだからである。
岡本太郎と言えば関西では太陽の塔が強烈なインパクトだ。

その岡本太郎の「日本の伝統」は名著であり、伝統という言葉の定義に大きな影響を残していると思う。

古いものは常に新しい時代に見返されることによって、つまり、否定的肯定によって価値づけられる。そして伝統になる。従って、伝統は過去ではなくて現在のものだといえます。

岡本太郎「日本の伝統」

古いものを常に現在の価値観で評価し直し続けること、という伝統論は、自分自身がその対象を見るかという自分の視点の大事さを説いているように思う。誰かが言っている伝統ではなく、自分はどう思うかが非常に重要だということである。

尾形光琳と岡本太郎


「日本の伝統」の中で、岡本太郎は激しく既存の伝統論を批判している。
それと共に、岡本太郎目線での伝統論や作品の見方い触れることが出来るのは非常に面白い。しかも筋が通っていて感銘を受けまくりである。
その中で、岡本太郎が1章を割いて、激賞しているのが緒方光琳の作品である。

ちょうどその前の夏、根津嘉一郎氏邸で有名なコレクションの展観がおこなわれたのですが、私はそこで、六曲一双の「燕子花図屏風」を見ることができました。そして、さらに光琳に感動しました。ほかの美術品にくらべて、ズバ抜けてスケールが大きく、重厚で華麗。いわゆる味だとかツボなんてものはどこにもない、ドライな構図でありながら、おどろくほど迫ってくるのです。

岡本太郎「日本の伝統」

岡本太郎をここまで感動させる作品を見てみたいという思いで、調べてみると何と出張のタイミングでドンピシャで公開している!
これは行くしかないということで実際に見に行ってきた。

しかも、根津美術館に行ってみると、歩いて5分のところに岡本太郎記念館もあるではないか。アトリエから徒歩5分のところに燕子花図屏風が収蔵されているのは偶然ではないだろう。燕子花図屏風を歩いてしょっちゅう見に行っておられたのかな?という想像も出来てワクワクする位置関係に気付くこともできた。

根津美術館のチラシ


国宝 燕子花図屏風


燕子花図屏風については一生のうちに絶対に必見の作品だと感じた。
金地の屏風にたったの2色の濃淡のみで、シンプルにかつ大胆に表現した燕子花。

まず構図に度肝を抜かれる。この構図にどのような意味があるのか・・・想像は尽きない。

同じパターンが2箇所潜んでいる、繰り返しのデザイン。
リズム感を感じる。これはリズムをつけているのか・・・。

絶妙なデフォルメ。本物の燕子花に比べたら、花の色は濃くて大きい。しかし、その濃さと大きさにより、魅力的な燕子花になっている。

是非とも実物を見て欲しい。
時間の都合で、15分の鑑賞+45分の解説(参加出来てラッキー)+5分の鑑賞ということで、燕子花図屏風の前にいた時間は20分だ。
(鑑賞している人で1分以上、見ている人はほとんどいない。勿体無い。良い絵は5分以上見るべきだ!)

解説を聞いてしまうと、見るポイントが固定されてしまうのと同時に新しい気付きも得られた。しかし、何も聞かずに見ていた15分は本当に吸い込まれそうだった。
全く色褪せない。現在でも最強のデザインだ。

鑑賞ノート


根津美術館の庭園


燕子花図屏風と岡本太郎に会いに行くのが毎年恒例行事になりそうだ。


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