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様々な”幸せ”の形【流浪の月】



"あなたと共にいることを、世界中の誰もが
反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。
それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。"

先日、「流浪の月」を読んだ。

先に結論から言うと、私はこの作品と
「いま」出会うべきであった、
この作品との出会いは必然的だったのだ、
そう思わせてくれる本だった。


つまり、私の中では最高傑作のうちの1つに入る。


⚠️ ここからネタバレ有りの感想になります。


アイスクリームの夕ご飯


"アイスクリームの夕ご飯"
"半透明の氷砂糖のような声"


まず、自由なメタファーに惹かれた。
そして、更紗と、彼女の父と母の3人の生活の
描写がすごく繊細で丁寧な、美しい文章。
序盤で一気に心を奪われた。
美しいものを愛してやまない父と母。
それを追うかのように、娘の更紗も美しいものを愛でるようになる。それを馬鹿にする人達の
相手はせず、ただただ自分の感性を誇りに
思う更紗にすごく憧れた。
幼いながらも、他人に流される事なく
自分の好きなものに誇りを持ち、
決して恥ずかしいとは思わない芯の強さ

素敵だと感じた。

「事実と真実は別物である。」

週刊誌やSNSは時折、数えきれない自分勝手な
考えが入り混じった悪意と先入観による
“善意”という形で、相手を糾弾する
それが当事者はどれほど傷つき苦しめられるのだろうか。

当人でしか本当のことを知ることはないし、
第三者はどうしても真実を知ることはできない。だってどうしても自分の先入観や価値観が邪魔をするから。


真実と事実が別物であることを改めて思い知らされた。
それと同時に、普通とは何か?と問われているような気持ちになった。


愛も、恋も、色々な形がある。
「普通」なんてものは存在しない。



何が正しくて、何が間違いなのか。
結局、そんなものは存在しなくて、
自分が納得できるのか、自分たちが
分かっているかどうか。
これが答えなんだと思う。
その問いを、答えを、筆者は作品を通して、
常に私達読者に投げかけている。


「普通」とは、あくまでも世界の秩序を保つ為に作られたルールのことであって、気にしすぎる必要は無いということを教えてくれたような気持ちになった。



不協和音のように不吉な雰囲気がある中で、
優しさと繊細さによる美しさが漂う世界観に
魅了された。

この作品は間違いなく私の中で最高傑作。

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