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【連載】負けない 第3話

 弘がドタキャンした翌日、また兄の毅から弘に電話を入れた。いくらかけても携帯がつながらない。
 弘に何があったのか?
 毅は弘の実家に連絡を入れてみた。
 弘のお袋が電話口に出た。
 弘が都内某街のある交差点で車に轢かれたという。
 K病院に入院しているということだった。
 直ぐ毅はその病院に飛んで行った。
 弘は頭を強打しているので、意識が戻っておらず暫く安静ということだった。

 その後、弘は意識を取り戻し、担ぎ込まれて十三日で退院できたのである。

  その事件があって一か月後の日曜日の朝、兄から今度の土曜日の夜、悦子に空けておくようにとの話があった。
 特に用事もなかった悦子は、(ほら来たな)と思ったが渋々承諾した。
 それから土曜日が来るまで、あわただしく過ぎた。

 その日も朝から雨模様であった。よく降る雨である。

 夕方二人で、いつかと同じ中華料理店珍来に顔を出した。
 弘はすでに来ていた。
 ところが弘のほかにもう一人いた。
 弘のお袋だった。
 昔から弘のお袋を、毅も悦子も知ってはいたが、どうして弘のお袋が一緒なのかと悦子は思った。

「弘さん、お母さんも.…」と悦子は言ってしまった。
 二人がテーブルに着くなり、弘は兄と悦子のほうを見ながら話し出した。

「あの日は実に申し訳なかった.…」

「詳しく話してくれ、まだ悦子に詳しい事故の件は話していない」
 と毅が聞いた。

 

 

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