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ゴメが啼くとき(連載15)

 文江は家の近くの澱粉工場で働いた。
 仕事ぶりも真面目で、文江はその工場では評判が良かった。
 ところがある日、文江に大変なことが起きたのだった。

 それは、日頃仲良くしていた澱粉工場で働く堀江信子の家に遊びに行ったことが原因で、警察から嫌疑がかけられたのだった。

 堀江家は両親と信子、それに兄の裕介の四人家族だった。
 昭和二十三年(一九四八年)春のある日、その日は日曜日で午後から文江は信子の家に遊びに行った。
 堀江家に向かう途中、雑貨店兼饅頭屋に寄り、土産を買うのを忘れなかった。
 信子からたまにはうちに遊びに来て、と誘われたのだ。
 信子の兄裕介は、殆ど家に寄り付かない。日頃ふらつき、悪さをしているらしい。信子の二歳年上だ。つまり文江と同じ年の十九歳だ。ヤクザの事務所に出入りしているらしいという噂もながれていた。
 信子の家の中は、調度品などは殆ど無く、慎ましい生活を送っているようだと文江には映った。
 裕介はたまに家に来てはお金を無心すると信子から聞いた。非常に生活に困っているようだ。
 夕方まで堀江家に居た文江は、夕飯をご馳走になり、帰宅した。
 

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