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【連載】しぶとく生きていますか?③

 朝の七時ごろ庶野の駐在所に着いた茂三は、そこの駐在員の田所を起こし、玄関先でクジラとヒグマの事情を報せた。
 起き抜けの駐在員の、支度するのを外で待っていた茂三は、なにかの物音に気付き駐在所の裏手を覗いた。
 黒い生き物の背中が見えた。茂三は咄嗟に、駐在所と繋がっている自宅から出てきた警官の田所に小声で、
「いま、そこにヒグマのような大きい黒いものがいるぞ」と知らせた。
「まさか。茂三さんの見間違いでないのかい」
「駐在さん、声が大きい。確かにヒグマのようだ」
 二人は、建物の裏手にまわった。
 北海道ではその年、方々でヒグマの目撃が相次いでいた。近年、北海道では冬眠から覚めたヒグマが、人家の近辺をうろつくようになっていたのである。
 いた!! 一瞬、ヒグマと茂三の目が合った。
 すると、そのヒグマが茂三に向かって突進してきた。
 突然の事で、茂三は逃げ場を失い二メートルはあるヒグマの懐に体当たりをした。ドンと体当たりする音が周りの空気を緊張させた。ヒグマがよろめいた。
 すかさず田所巡査は腰の拳銃に手をかけた。ズドーンと銃声が庶野の街に鳴り響いた。
 

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