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【連載】 還らざるOB(11 完)

 しかし、その後、本当に還らざるOBとなってしまった仲間がいた。佐枝と小平だった。まだまだこれからの人生を謳歌するはずの二人であった。
 
 数年たったある年に、野森から佐枝が肺の小細胞がんで入院したとの知らせがあった。仲間が入院先の病院に佐枝を見舞った。至って元気な様子に一安心した。が、その一年後、還らぬ人となってしまった。一人減った。

 その二か月後小平が自宅で倒れ死んだ。心不全だった。また一人減った。合わせて二人減ってしまった。

 残ったメンバーはお互い日々の生活で精いっぱいであった。会う機会もめっきり減った。
 そして、二〇二〇年の早春から日本でも新型コロナウイルスが猛威を振るい、多くの人命が奪われた。

 以前は、だれが一番長生きするかと冗談を言い合っていたのだが、一人減り、二人減った今となっては、誰もそれを口にしないのであった。
しかし、いっそあの飛行機事故で全員が死んでいたらと考えるメンバーは、一人もいなかった。
 
 彼らは、日本に戻ってきてからが、苦悩の連続の日々だった。しかし、お互い連絡を取り合い、励まし合って、一人も負けることはしなかった。益々団結が深まっていった。
 
 生きていたら、いつかは死ぬ。日々の生活の繰り返しは、確実に死に近づいている。残ったメンバーは、ただ生かされているのではなく、一日一日を有意義に生きようと強く拳を握りしめたのだった。
 
 彼らは、時が移ろうと同時に、いつかは還らざるOBとなることを知ってはいたのだが。

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