2023.4/16 引越し

最近私は引越しをした。

引越した先の接道は大通りからの抜け道であり、狭い道路でありながら素早く、多くの、大小様々な車が行き交う。

私の部屋の東向き・北向き二面に大きな開口があり、その接道のある方向である。

初めて車通りの多い接道に面した部屋に引越し、その行き交う車を眺めることができるのは些か新鮮であり面白いのだが、如何せん音を伴って走るので正直に言って煩くてイライラしている。

行き交いを眺めながら車に文句をぶつけている。
何をそんなに急ぐのであろう?
大通りをそのまま走っていれば良いじゃないか!
そんなに朝からスピードを出すな!

こんな具合であるために、私の生活に少なからず変化が起きている。

良い変化としては、朝起きるのが早くなった。
通勤時間に走行音というアラームがなり、これは私の意思では止めることができないので、起きるしかなくなるのだ。

早起きするとモーニングを食べにいきたくなる。
幸いなことに引越し先の近所にもデニーズがあり、
自己的な自然の摂理に従って、私はそこに通うようになっている。

このデニーズは県庁前にあり、ピロティ型の店舗である。
地面との接地面を再上限に抑え、浮き上がる店舗とそれを繋ぐ屋外階段のアプローチは私をこの土地から離してくれる宇宙船のようである。

重厚なコンクリートで作られたモダニズム建築である県庁舎の陰影が美しく見える席が私の特等席であり、空いている場合はいつもそこに座る。
今日もその席は空いていたので、そこに座った。

村上春樹の新作「街とその不確かな壁」を読みながら、モーニングを食べて日曜の最高のスタートを切る。

9時ごろに、男女、子供を含めた10人組のお客さんがやってきた。
彼らは四人ずつぐらいで代わる代わる席を立ちその光景を眺めていたらなんだか小学校の算数の問題のように思えた。

Q.10人のお客さんが席に着きました。
 4人が席を立ち、1人はトイレに、3人はドリンクバーを取りに行きました。3人が席に戻ると次に3人がドリンクバーを取りに行き、その間に1人がトイレから帰ってきました。
 今、席には何人いるでしょうか。
 
A.この問題には時間軸が含まれていない。
 従って、この間の時間経過によって答えは変化する。
 短時間の場合、答えは7人である。
 しかしながら、この間に膨大な時間が流れていた場合、答えは8人である。お客さんのうちの1人の女性が妊娠していたのだ。いや、もしかするとその女性は双子を身籠っているかもしれない。もしかすると、その時間経過の中でさらなる生命が芽生えるかもしれない。時間とはそれほどまでに私たちの絶対的な….

このように私は完全に物語の世界に入っていた。

私の読書を手助けしてくれるのはいつもドヴォルザークである。
クラシックは普段あまり聞かないのだが、ドヴォルザークはなぜかしっくりくる。
その理由はまた時間があるときにじっくり考えようと思う。

「ドヴォルザーク」という名前も実に良いではないか。
小学校の音楽の授業で、教室の後ろに飾ってある作曲家たちの肖像画をみている時も、ショパンやモーツァルトはやはり名前と肖像画からしてヒーロー感があった。

その中でドヴォルザークだけがモノクロ写真で他の作曲家たちを立てるヒール的役割を担っている感じがした。
そこに私は小学生ながらに心惹かれていたのである。

私の住まいの窓からは古着屋が見える。
そこの店主はドヴォルザークと「シャイニング」のジャックニコルソンを足して2で割ったような顔をしている。

これは悪い意味で言っているのではないことだけは言わせていただく。
ただこの表現はこの店主さんの前では絶対に使えないだろう。

そんな彼が店先で暇を持て余してタバコをふかしているのを見るのも私の楽しみの1つになっている。

新生活には変わるものと変わらないものがある。
どちらも大切にしていきたい。

そんなことを考え、またドヴォルザークを聴きながら読書を再開する。

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