怠惰なシーリングファン

ある日、シーリングファンがサボっているのを見つけた。

その飲食店には良く訪れているのだが、その日は何気なく天井を眺めており、私は見つけてしまったのだ。

その天井には2台のシーリングファンが並んでおり、片方のファンがサボっていた。
ときに2つのファンが同じ速度であり、ときに片方のファンより、半分程度しか回っていなかった。その動きは規則的ではなく不規則的に、速度を早めたり遅くしていた。

なぜ私はそのシーリングファンを「サボっている」と思ったのだろうか。
きっと私が見た瞬間は遅かったファンが急に早く動き出し、隣と同じ回転速度になったことが、非常に人間的だと思ったからだろう。

一般的にこのような現象が機械に起こった場合、「壊れている」と考えるが、私が切り取った場面に見られた動きによって、「サボっている」と感じられることは、私たちの日々の生活をちょっぴりファンタジーに誘う扉であり、そこに思考を巡らせることは物語に繋がる豊かさがある。

日常のものごとにも切り取る断片によって、物語が生じる可能性が潜むことを怠惰なシーリングファンから学んだ。


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