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法人税シリーズ〜社員旅行は給与課税?②〜

 今回も、前回ご紹介した社員旅行費用が給与課税されるか否かについて争われた類似の裁決事例をご紹介したいと思います。

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審判所平成8年1月26日 裁決


1.事案の概要
 土木工事業を営む従業員10人程の同族会社が以下のとおり行なった社員旅行費用について会社が全額負担して福利厚生費として処理したところ、従業員に対する給与課税がされるものとして国税当局と争われた事案。

年   行き先     泊数    参加人数 一人当たり金額
H3  シンガポール   3泊4日   7人   34.1万円 
H4       アメリカ西海岸  3泊4日   9人   45.4万円 
H5       カナダ      3泊4日  10人   52.0万円 
※不参加者に対する金銭支給は行っていない

2.審判所の判断
 ①本件各旅行は、従事員の慰安等を目的とした観光旅行であるが、本件各旅行に
  おいて会社が負担した参加者一人当たりの金額は、あえて課税しない趣旨(以
  下②の内容)からすれば当該金額は多額であることが認められるから、本件各
  旅行が社会通念上一般的に行われている福利厚生行事と同程度のものとは認め
  られない。
 (以下②③は福利厚生費と給与課税の関係に関する判断基準)
 ②使用者が負担するレクリエーション等の福利厚生行事において、経済的利益の
  供与を受けた場合も原則給与課税の対象となるが、以下の理由から社会通念上
  一般に認められる程度のものであればあえて課税しないと解するのが相当。
  ・従業員等は、雇用されている関係上、必ずしも希望しないレクリエーション
   行事に参加せざるを得ない面があり、その経済的利益を自由に処分できるわ
   けでもないこと
  ・レクリエーション行事に参加することによって従業員等が受ける経済的利益
   の価額は少額であるのが通常かつ、その評価が困難なこと
  ・従業員等の慰安を図るため使用者が費用を負担してレクリエーション行事を
   行うことは一般化していること
 ③従業員等の慰安旅行が社会通念上一般的に行われていると認められるレクリエ
  ーション行事であるか否かの判断に当たっては、当該旅行の企画立案、主催
  者、旅行の目的・規模・行程、従業員の参加割合、使用者及び参加従業員の負
  担額、両者の負担割合等を総合的に考慮すべきであるが、上述したあえて課税
  しないことの趣旨からすれば、参加従業員の受ける経済的利益の価額、すなわ
  ち使用者の負担額が重視されるべき。


 ・・・・2週続けて判断理由が乏しい裁決事例をご紹介してしまい申し訳ございません笑

 また、今回審判所が判断で示した「福利厚生費と給与課税の関係」についても前回と同様なので大きく真新しい点はないのですが、③の「社会通念上一般的におこわなわれていると認められる行事であるか否か」の判断要素のうち、使用者の負担額を最も重視すべきという点は、非常に当たり前な話ですが前回の裁決では登場しなかった情報なので、参考にすべき点ではないかと思います。

 この考え方は、社員旅行に限らず福利厚生費一般に言えるものですから、以前記事にした社内の飲み会が福利厚生費となるか否かという判断の他、従業員用のお菓子の購入代、ウォーターサーバー代等も、結局は会社の負担額がいくらかという点が大事なところということですね。

 私も国税調査官時代に、調査へ臨場して「ウォーターサーバー代は給与課税すべきか??」「会社が全額負担している月数千円程度のお菓子代を給与課税すべきか??」なんてことを考えようとしたこともありません。

 その理由としてはやはり少額だからです。もっとも、このウォーターサーバーがビールサーバーで全従業員が飲み放題だったり、スーパーで売っているようなお菓子ではなく、毎日和菓子屋さんやケーキ屋さんからスイーツを買ってきて食べ放題にしているような場合であれば、会社の負担額が明らかに高額になっているでしょうから間違いなく給与課税を検討するでしょう。

 ちなみに、先日私が所属する税理士法人でも社員旅行があったのですが、一人当たり負担額を考えてみると10万円近いため、前回の事例に照らしてみると少し際どい金額に思えましたが、私どもの場合はプランの中に研修も含めている(現地の税理士法人とのディスカッション等)ため、単純にこの金額を全額福利厚生費の対象とは考えないことになります。
 社員旅行をする際は「研修も織り交ぜて行う」ということは一つテクニックとしてありなのではないかと思います笑

 

 最後までご覧いただきありがとうございました^ ^

 

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