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所得税シリーズ〜青色事業専従者給与②〜
前回は青色事業専従者給与の相当額について争われた事例をご紹介しましたが、今回は相当額うんぬん以前に、「そもそも青色事業専従者としての仕事してなくない??」という争いがされた事案をご紹介します。
富山地裁平成22年2月10日判決
1.概要
防水工事業、建築物管理業務、冷暖房設備の管理・清掃業務等を営む個人事業主甲が、その配偶者乙を青色事業専従者として以下のとおり支給した給与を必要経費としたことについて争われた事例
売上 事業所得 青色事業専従者給与 税務署が認定した給与
平成12年 9.5億 4,600万 1,620万 450万
平成13年 8.8億 3,900万 1,650万 480万
平成14年 9.7億 4,800万 1,650万 480万
配偶者の労務内容等
⚪︎保有資格
・建築物環境衛生管理技術者、貯水槽清掃作業監督者
⚪︎青色事業専従者として届出た労務内容
・ビル管理部門 総務、経理の総責任者
⚪︎実際の労務内容
・目に障害のある甲が行う夜間防水工事の現場見回りの運転手(実際の現
場確認は行わず車の中で待機)
・ビルメンテナンスに関する資格を保有しているものの、他の従業員を指
導し、現場で検査するといった業務を行っていない
・事務所に乙の机はなく経理業務に従事していない
・乙の友人を甲に紹介して仕事の受注に至ったことがある
・甲が取引先の冠婚葬祭に出席する際に運転手を務め、一緒に出席もして
いた
2.裁判所の判断
以下のそれぞれの理由から、乙が甲の事業にもっぱら従事していたとは認められない。
①乙の運転業務については、目に障害がある夫が現場を見に行きたいという求め
に妻が応じて運転手を務めるという労務提供は、夫婦間の情愛に基づく協力行
為にとどまる。
②ビルメンテナンス業に必要な資格は有しているが、実際にビルメンテナンス業
務には従事していない。
③乙の営業活動(友人を紹介して受注に至った件)については経営者の妻が顧
客獲得のために友人を紹介することは家族としての協力行為として通常あり得
ることで対価を支払うほどのものではない。
④甲の取引先の冠婚葬祭に乙が出席すること等については、事業者の妻が顧客、
取引先の冠婚葬祭等に出席することは通常あり得ることで、出席の機会の程度
と負担を考慮すると事業従事性の関わりの程度は低い。
前回の青色事業専従者給与に係る裁判例をご覧いただいている方なら、今回の青色事業専従者としての職務内容が「なんてお粗末なんだ!?」と感じられるのではないでしょうか。
今回の事例はこうした表面的に事業に従事しているような要素を並べることで1650万円もの給与を支給するというかなり大胆な事例ですが、金額がもっと少なかったとしても、当然のことながら青色事業専従者というのは大前提として他の従業員や外注先等と同様の働きをしていなければ認められるものではないということがなんとなく分かる事例なのではないかと思います。
ただ、この事例において一つ気になった点としては、乙の運転業務が「夫婦間の情愛に基づく協力行為にとどまる」ため、甲の業務にもっぱら従事していたとは認められないと判断されている点です。
もちろん、今回の場合は甲が視覚障害によって運転ができないという特殊な状況があったという事情が大いに影響しているとは思いますが、この乙が行った運転は立派な甲の事業に必要な運転業務であることに違いはないにも関わらず、夫婦の協力行為として片付けられてしまっているのです。
青色事業専従者の業務従事時間として運転業務も当然カウントして考えておりましたが、少し留意しなければならないな〜と個人的に感じたところです。
ちなみに、結局今回乙が青色事業専従者として行なった業務として認められたもがはないにも関わらず、税務署の当初認定金額である450万円ないしは480万が乙の給与として認められたままとなっておりますが、これは訴訟当事者が争っていない点なのでそのままということです(その後確定判決に基づき更正がされたのか否かは不明です)。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました^ ^
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