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法人税シリーズ〜自宅を社宅にして節税〜

 今日は法人を設立する利点の一つとしてよく挙げられる「社宅を利用した節税」をご紹介したいと思います。
 ネットや書籍でも溢れている内容なので今更感があるかと思いますが、せっかく法人を設立しているのにこの方法を利用していない事業者が非常に多く見受けられます。 
 これは、税務調査を行っていた時から思っていたことで、税理士業界にやってきてその理由がなんとなく分かってきましたが、今回はその点は割愛させていただきます。

 なので、ひとまずこの記事を読んでいただき、ご自身の会社に生かしていただければと思います。

自宅を社宅にするとは?

 自宅を社宅にするパターンとしては①法人でマンション等を購入し、それを代表者や従業員等に貸し付ける②法人でマンション等を賃借し、それを代表者や従業員等へ転貸する、という2種類があります。
 ①については一番イメージがつきやすいかと思いますが、そもそも購入となると数千万単位の取引となるため、そう簡単に使えることではないですし、個人で購入した方が住宅ローンの低い金利で借入ができたり住宅ローン控除の適用ができる等の個人ならではの利点との比較や相続を見据えた検討もあるので、今回はひとまず①は除外して②のパターンで社長の自宅を社宅化するという話で進めていきます。

社宅にすると最低でも家賃は半額負担でOK

 ②のパターンは、簡単にいうと”社長の自宅の賃貸借契約に自分の法人を一つ噛ませるだけ”ですが、これによって社長に対して貸付を行う主体が本来の不動産のオーナーではなく自分の主宰法人となります。
 となると、民法の大原則である「契約自由の原則」に基づき主宰法人が不動産オーナーへいくら賃料を支払っていようが、貸主である主宰法人は社長との間で自由に賃料を設定できることになります。
 そうすると、「じゃあ100円にしよう」「そもそも賃料なんか取らないでいいや」という発想も出てくるのですが、ここは税法で一定の制約があります。
 すなわち、「会社が負担しすぎている部分の賃料について借主(ここでは社長)が給与課税される」ということですが、この点政令及び通達で会社の家賃負担額が以下の金額以上であれば、その会社負担分について借主に給与課税しないことを明らかにしています。


 ※政令及び通達によって給与課税されない金額の要約版
 ①と②のいずれか低い金額
 ①家屋の固定資産税課税標準×0.2%+12円×家屋の総面積/3.3+敷地の固
  定資産税評価額×0.22% 
 ②賃料の50%


 ①は具体的な数字を当てはめてみないと分かりにくかと思いますが、少なくとも賃料の50%を社長が会社へ支払えば給与課税はされないということです。
 例えば、これまで月額20万円の家賃を個人契約で支払っていた社長がこの方法に変更した場合の効果としては、会社側では年間120万円経費の増額(「支払家賃」20万円×12ー「受取家賃」10万円×12)を実現でき、社長としては可処分所得が丸々120万円増えることとなります。更に、この可処分所得増加分を考慮して役員報酬を減額すれば所得税、社会保険料の負担も減額できるため、同じ所得水準を維持したまま個人としても節税が可能です。

固定資産税評価額を使うと更にお得に・・?

 家賃の50%負担の方法で社宅にするだけでもしないよりは節税になりますが、先程示した②の計算式によって算出した金額を用いることによって、更なる負担額の減少が見込めます。
 私の手元に程よい賃貸マンションの事例がないため、以下のような新築戸建を例に見てみたいと思います。


①物件の概要
 所在地:東京都下(駅徒歩10分)
  土地:100㎡(固定資産税評価額2,100万円)
  建物:100㎡(固定資産税評価額1,800万円)
月額賃料:22万円
②社長負担分の計算
 1,800万円×0.2%+12円×100/3.3+2,100万円×0.22%=82,563円


 手元に程よい資料がなかったため、固定資産税評価額の概算がしやすい新築戸建を元に算出してみましたが、この事例で見ると家賃の50%を負担額とする場合の11万円(22万×1/2)よりも更に約3万円社長の負担を少なくすることができています。
 固定資産税評価額は、基本的に建物の経過年数に応じて減額されていくため、中古物件であれば更に少ない負担額が見込まれます。

 もっとも、物件によって評価額は大きく変わってきますので、賃料の50%で計算するか固定資産税評価額で計算するかはこの方法の導入前に両方検討されることをお勧めします。

固定資産税評価額はどうやって把握する??


 この①の方法を使うには居住している建物の固定資産税評価額を把握する必要があります。所有者であれば毎年固定資産税納税通知書が市役所から届くため、その情報を使えば良いものの、賃借人の場合は当然その書類が届かないため貸主にコピーの提供を依頼するか(応じてくれるとは限りません)、市役所の固定資産税課等へ「固定資産税評価証明書」を請求しにいく必要があります。
 
 この証明書の請求をするにあたり、賃借人はこの建物の「利害関係人」として請求することとなり、申請書の他利害関係人を称する書類として賃貸借契約書を添付して請求する必要があるのですが、転貸になっている建物の場合(EX:建物所有者が大東建託へ一括借上の契約をしているような場合等)だと、利害関係人を称する書類として自らの賃貸借契約書の他元の賃貸借契約書(先ほどの例で言えば大東建託と所有者の一括借上の契約書)もなければ請求できないという自治体もあるようなので、契約の態様によってはこの評価証明書の取得段階で苦労することがあるかもしれません。

 とはいえ、一度導入してしまえば毎月自動的に節税の効果を享受出来るわけですから是非お試しいただければと思います。

 
 最後まで読んでいただき、ありがとうございました^ ^



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