2022/12/3 13:00公演 【建築家とアッシリア皇帝
目次
観劇のきっかけ
感想
「不条理劇」って
岡本健一さん×成河さん
1.観劇のきっかけ
きっかけは「成河さんの生の演技を観たい!」と思ったことにつきます。
なぜ観たい!と思ったかをさらに深掘りすると2つありました。
1つ目は、先日観に行ったミュージカル「エリザベート」の2016年公演DVDでのルキーニに狂気じみた表現と物語の中に観客を引き込む力(ルキーニという役の特性もあると思いますが)に惹かれたこと。
2つ目は、確固たる演技論をご自身の中に持っていて、しかもその話が分かり易い?納得できる?のでとても惹かれたこと。
2.感想
ストーリーは孤島に墜落した飛行機の生存者である男が自らを皇帝と名乗り、その島で出会ったひとりの先住民を建築家と名付け、近代文明の教育を施していく。そのうちお互いに様々な人物を演じ、始まる"ごっこ"遊びで心の底にある欲望、愛憎、そして罪の意識をあからさまに語り出す。。。
率直に「全然わからない、でも面白い」というのが感想です。
物語を追って筋、流れを理解しようとすると「わからない」となってしまう気がします。
例えば、
「第一幕全体で繰り広げられていた"ごっこ"遊びって物語の中で本当に必要だったの?」
「建築家は皇帝の持つ"知"をとても欲していたが、第二幕、裁判劇から始まり皇帝に秘密を語らせ、罪を告白させたがるが本当にそうしたかったのか?」
しかし、パンフレットにあった作者フェルナンド・アラバールの人生、生きた時代を知るとなぜ劇中でそういう話題が発生するのかが理解できると思います。
3歳の時にスペイン内乱が始まり、共和主義者であった父が、カトリック信者の母によってフランコのファシスト政権に売られて死刑宣告を受け、のち行方不明となる悲劇を体験。これは劇中、皇帝が母親に対して抱いていた感情や行動がおそらく作者が感じたのものを踏襲しているのではないかとすぐに感じるはずです。
自分の解釈ではこの物語はアラバール自体が生きてきて感じた感情や生まれた思想の投影です。
3.「不条理劇」って
あくまで一例ですが例えば日常生活で誰かにお願いされたことを言われた通りにやって報告したら「いやいや、そうじゃないよ」なんて経験ありますよね。そういう状況を筋が通っていない「不条理」と表現するはずです。
筋が通らないまま進んでいくような演劇のことを総称しているのかなと思います。
以下の動画がとても分かりやすく説明されています。
解説中の「行動(要因)によって、ハッピーエンドになる、もしくはバッドエンド(結果)になる。この因果律の確証がないものが「不条理劇」である。」秀逸かつ分かりやすい解説です。
4.岡本健一さん×成河さん
お二方の掛け合いはとてつもなく重厚で高度ででも柔軟で幼稚で。。。それ以外にも表現があると思いますが、挙げきれません。
岡本さん演じる高度な人間社会から排除された皇帝は唯一の友人である建築家の成河さんを常に求めます。いなくなると寂しくなってすぐに「建築家!」と荒れ狂ってしまいます。人間の弱さを象徴した演技はどことなく自分を鏡で見ているように感じられ恥ずかしくさせます。
しかし、建築家に弱みを握られると今まで求めていたのにすぐに手の平を返し避けたがる。頭はいいのに幼稚。岡本さんの演技からは「幼稚な大人の人間」を表現しているように感じます。
成河さん演じる知恵を求め続ける建築家はマイペース。様々なものに興味を持ち怖いものはありません。岡本さんに対して成河さんは「好奇心旺盛な子供の人間」を感じます。とても大変だと思います。だって街で通りかかる子どもたちのあの無限の体力見かけたことありませんか?あの熱量、力強さを大人が表現できますか?おそらく無理です。しかし、成河さんにはできるんです。やっぱり大好きですね。もっと成河さんのいろいろな作品の演技を楽しみたいです。
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