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真のグランビーロールと受け身とベリンボロ、柔術の基礎とは何か

タイトルが『ゲーデル、エッシャー、バッハ』みたいになっていることに後から気づいたが関係ない。

自分はオープンガードはやらないのでベリンボロなど一生使わないと思っていたが、あるグランビーロールを見て必要だと思うようになったことについて。


グランビーロール

グランビーロールを知らないと人は以下を参照

グランビーロールについて

 グランビーロールというと一般的には、自分が亀またはスタンドで相手が自分のバックについているときに、そこから回転してエスケープする技術と思われているだろう。私もそう思っていた。

しかし、David Taylor(カレッジレスリング出身のオリンピック金メダリスト) の highligts を見ていると、それとは違ったグランビーの使い方があると知った。 
 Taylor はスタンドでバックに付かれた状態から、リフト→スラムされる瞬間にグランビーを使って受け身を取り、カウンターにつなげている。

グランビーのシーンは次の試合のもの。

taylor 以外の場合

やり方の解説をしているのは少し調べたら、以下の2つしか見つけられなかった

 

 この動きをするためには、インバーテッド(ベリンボロの2つ折りの状態)ができることと、その状態での強い筋力発揮の2つが必要だと推測する。柔軟性があるだけでは多分できない。そのあたりの関節の可動域と筋力の話は以前紹介した本『サイクリストのためのストレングスとコンディショニング』に書かれているが、これは学術的というよりも実際のトレーニング法について書かれた本であることに注意。


 Taylor のグランビーはあまりにも美しい。床に触れる際に脚だけでなく手も付けて衝撃を和らげていて、これこそが本当の受け身だと思う。
普通緊張した瞬間というのは筋肉が硬直すると思うが、Taylor の手は柔らかい。柔術日記さんは柔術の上達において脱力の重要性を語っている。このレベルのグランビーは脱力した状態ではないとできないのではないだろうか。


それ以外のグランビーロール

 一応上記以外のグランビーにもブレイクダンスのようなものがあり、それは使いどころがわからなかったが、たまたま見た以下の動画で使い方を知った。要はグランビーをした際にまだ相手の手があればそれを振りほどくために使うと解釈している。


グランビーの練習法に関しては、まだいい動画が見つかっていないので、見つけたら追記するかその記事を書くかもしれない。


余談(オクラホマ州立大学、坂本輪)

taylor は2024年にオクラホマ州立大学のヘッドコーチに John smith の代わりとして就任した。
John smith はローシングルを得意とするアメリカ歴代No.1にも選ばれる伝説のレスラーで、コーチとしても実績を残しており、30年ヘッドコーチを務めていたが2024年に引退。

taylor のコーチとしての契約金は年俸100万ドルらしく、やはりアメリカの大学スポーツビジネスはとんでもないと思った。

しかし、これくらいの額は taylor が初みたいなので、レスリングはアメリカの大学スポーツの中ではそこまで金が動かないのかもしれない。もっともここまで金が動くのはアメリカの大学の高額な授業料とも関係しているのだろうが。州立大学なのにどこから金が払われているのかは謎だ。


漫画家・坂本眞一の息子である坂本輪はオクラホマ州立大学に進学しているようなので、いつか日本にカレッジレスリングを持ち帰ってほしいと思う。(八田忠朗が関わっているのだろうか?)


色々な格闘技の受け身

レスリング、サンボ、柔道、合気道

 他競技の受け身に関して言うと、私は柔道と合気道の受け身が好きではない。柔道はルール上そうなっているのだろうが受け身の後に反撃につながらないこと、合気道は実用性が懐疑的であることが不満。
 対してレスリングとサンボの受け身は好きだ。受け身が攻撃につながっているところがいいと思う。そもそもサンボとレスリングは密接にかかわっているので、サンボの受け身 = レスリングの受け身(+柔道の受け身)と言えなくもないので当たり前なのだが。

以下はサンボだと思うが、なぜか当人らは柔道と言っている。受け身の動画として見れなくもない。

 

 合気道をやっている人からすると、自分は実用性でやっているわけではないという人もいるかもしれない。だとすると何も言えないが、ここでは合気道の実用性の観点の話をする。
 合気道の受け身に関して文句を言うからには合気道の動画を見てみた。見たのは主に白川竜次という合気道界では有名らしい人の動画。(植芝盛平や塩田剛三だと投げられている方の動画があるのわからなかったため。)

 結果として、やはり参考にならなかった。そもそも投げ方が柔道・レスリングとは違い過ぎること、投げられる状況がスパーリング(乱取り)ではないので、結局使えるのかわからないこと。自分のこの反応もそうだが、昔の人物が型稽古に反発したのもわかると同時に、なぜ長い間剣術や柔術で乱取りが行われなかったのはやはり疑問が深まる。

 受け身とは関係ないが、違和感を覚えたのは普段行っているトレーニングらしい他の格闘技も含む、何らかの動きを彼がしている2番目の動画。
 動画ではプロレスあるいはルチャの技、体操の動き、棒を使った動き、打撃、(多分)ブレイクダンスの技、合気道の動き、飛びつき腕十字、剣を振る、四つ組などを行っている。
 彼の動画を見ていずれも思ったのは、合気道は知らないが他の(ボクシング・キックボクシングの観点から見た)打撃、ブレイクダンス、剣、ブラジリアン柔術、(レスリングの観点から見た)四つ組に関しては初心者レベル、良くて中級者レベルでしかなく、田舎初段程度を抜けていない。まず正規の教育を受けたもののレベルではない。

基礎とは何か、どうすれば身に付くか


ブラジリアン柔術に限らず何らかの分野の基礎、標準レベルを身に着けるためにはどうすればいいのかということを知るには以下のスライドが役立つ。

 スライドでは多様なことが語られているが、主な話はソフトウェアエンジニアになる方法とスタートラインに立つ(何らかの専門家集団のレベルに到達する)にはどうすればいいかということ。
 これを聞いただけでは何の話しているのかわからなく、実際に読んでも抽象度が高くわかりづらいらいかもしれない。しかし、スタートラインに立つために必要なメンタリティ、常識の話は普遍的なもので、このことを少しでも理解しておかないとどのような分野であっても正しい方向に進むことはできないだろう。例えば以下のようなこと。

こういったことを理解しておかないと、以下のような事態に簡単に陥る(というかほとんどだろう)

あるいはスライド作成者の以下のブログより

多くの能力について、初級のときに身につけるスキルとその後にずれがあります。たとえば、数学をするにしてもはじめは九九の暗唱をします。それが得意であれば、レベル5くらいまでにはなります。それをよしとするかあしとするかはともかく、大学受験までは芸大でもなければ、田舎初段で通ってしまうというのが日本の水準です。東大でも数学が得意だと名乗って証明と称するグロテスクな画像をネットにあげている人いますよね。受験数学は好きだったが数学者とカジュアルにお話をしない法学部文学部医学部あたりではよく見ますし、理学部でさえもたまにいますね。レベル5で周りから賢い人と思われるまでになったとしても、そのあとに国家試験などでふるい落としがある場合は、やり方を変える必要に気が付かないと苦しむんですが。

https://nuc.hatenadiary.org/entry/2021/03/31

さらに知りたい人は以下のスライド作成者の記事を参照

  

 これを読んでも結局、ブラジリアン柔術の基礎とは何で、それをどう身につけたらいいかわからないと思う人がほとんどだろう。それについては今後書くかもしれない。柔術日記さんのnoteを購入するのが一番良い気がするが

 


護身術としての受け身

 私は格闘技の技術を護身術として使えるかということをしばしば考える。受け身に関して護身術で使えるかを考えた場合、ストリートファイトの動画ではよくリフトされた後に体を地面にたたきつけられているのを見るが、この程度の単純な投げであっても自分が傷つかずに回避できる人はどれだけいるだろうか。護身術として格闘技をとらえるならこれくらいの状況に関しては対処できなくてはならないと思う。
以下の動画そのスラムの例。血が出ていたりはしないが、人によっては閲覧注意
 https://twitter.com/ihybeto/status/1807968809153880348


以上の通り、グランビーは護身術的に使えるかもしれないということと、単純な興味から最近、インバーテッドができる柔軟性獲得のために柔術日記さんのnoteを購入して、ついでに以下の動画のストレッチを実践している。


おまけ

 この記事をここまで読むような奇特な人であっても、カレッジレスリングなんて興味ないし、グランビーも自分はできなくていいと思う人がほとんどだろうが、そういう人に向けて少しくらいは役立つ情報を提供したい。
 これを読んでいる人はブラジリアン柔術をやっている人がほとんどだと思うので、柔術(グラップリング)の話をする。


ブラジリアン柔術とカレッジレスリング

 craig jones が出している教則に「just stand up 」「power ride」というものがある。


 これは下になったらとにかく立つというコンセプトと相手をピンする(抑え込む)技術を解説している教則。これらの教則のかなりの部分にカレッジレスリングの技術が使われている。

ツイートで言われている吉村さんの動画とはこれだろうか

 
競技柔術においては長いことポイントで勝つかとにかく極めるかに主眼が置かれていたと思うが、グラップリングにおいてはここにきてようやく、カレッジレスリング的なコントロール技術が要求されるようになったため、単なる立ちの技術ではないレスリングとの融合が最先端レベルにおいては進んでいるのだと思う(craig の場合はヴォルカノフスキーやアデサニヤといったMMAファイターと交流しているのも関係があるだろうが)。コントロール重視ではない立ちのレスリングの印象的な人物として、古くはマルセロ・ガルシア、今より少し前ではゲイリー・トノンが私の中では該当する。
 ヘンリー・エイキンスは「世界最高レベルまで達した人間は同じ結論に達する」と言っていたが、今まではごく一部にしか知られていなかった、ブラジリアン柔術に限らない組技の深淵に人々が気づき始めている。
 リコ・チャッパレリのセミナーを日本でやってほしい。


受け身のおすすめ動画

またもう一つ役立つかもしれない情報として、受け身に関する動画は以下のものがよかった。


余談(『ジョーカーゲーム』)

 以下は余談だが、Taylor の受け身を見た時、彼のmagic man というあだ名は彼の magic のような技術からきているのかなあと思ったが(調べたら違った) 、それに関して『ジョーカーゲーム』というスパイ小説のくだりを思い出した。以下はスパイ候補生がD機関というスパイ養成学校で訓練を受けていた時の話。

 D機関在籍中、伊沢たちは素手及び様々な武器を使った格闘術、さらには極限状況での生存術を徹底的にたたき込まれた。訓練には専門の講師を招く場合もあったが、しばしば結城中佐が自ら指導に当たった。ことに柔術の訓練では、結城中佐は、自分より大きな相手を軽々と投げ飛ばし、あるいは懐に入って当て身一つで気絶させてみた。
─ It's magic!
海外経験の長かった学生の一人が思わず感嘆の声をあげると、結城中佐はたちまち、あの独特の突き刺すような眼差しで振り返り、
─ 馬鹿か、貴様は。
と一喝した。その上で、
「格闘術も生存術も、徹底した合理精神上にのみ成立しうる技術体系だ。今後、魔術などと言って技術を神秘化する者は、何人といえどもD機関においておくことはできないから、そのつもりでいろ」
と厳しく叱責したのである。

『ジョーカーゲーム』「ロビンソン」p.148,149

私は『ジョーカーゲーム』が好きで年に何度か気が向いたときに少しだけ読み返す。特にスパイ候補生が最終試験を突破できない話である「X・X(ダブルクロス」が好きで、以下の言葉が印象に残っている。

絶対的現実主義者(リアリスト)であるべき軍人が、その組織の長たる天皇を現人神などと祭り上げ、絶対視することは、本来有り得べからざる事態だ。とらわれることは、目の前にある状況を見誤る第一歩だ。このままでは、日本の軍隊はいかなる戦争にも決して勝利し得ないだろう」

p.254

結局のところ、優れたスパイとは、己以外のすべてを捨て去り、愛するものを裏切ってなお、たった一人で平気で生きていける者たちのことなのだ。

p.272

自衛隊では右翼を講師として呼んでいるそうだが、まあそうだろうなという感じである。自衛隊にしろ官僚にしろその他の組織にしろ、問題に対する実際に効果のある現実的な対策(政策)を行っていないあたり、そのようなことが行われていてももはや驚かない。)

相変わらず自分が好きなものに対してなぜ好きかというのは直感的には言いづらい。こうしたことを少しでも把握しておくことは自分にとって何か益あることだと思う。
多分、それを知るには人はなぜフィクション読むかといった領域に踏み込まなければいけない。以下のようなものを読まなければとたまに思うが、積まれた本は高く、買った本の5%も読まないまま死にそう。
あとで読むはあとで読まない



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