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大学生のぼくが行き倒れた年上女性を助けたら人生が変わった話。①

2019年8月、ぼくが大学3年生の夏。
テキトーに風俗で童貞を捨てた2ヶ月後。わざわざ飲み屋に行かんでも楽しいしと家で酒を飲んでいた頃。
所用で東京に3日間ほど行ったときの話だ。

東京最終日は特にやることもなかったので、朝から夜行バスまでの時間を暇していた。あまりにもやることがなかったので、歌舞伎町の個室ビデオ屋で初めてVRのAVを見たりした。(深田えいみの作品だった。VRゴーグルをかけて振り返ると真っ暗闇だったので、エロよりも恐怖を感じた。)

「ふぅ、、、」と外に出たら15時。エロを貪っていると時間が経つのは早いものだが、夜行バスまでは6時間ある。
ラブホの入り口でスト缶をガブ飲みするMCMリュック女や、背後に諭吉がうっすら見えるオッサンとお姉さんカップルを眺めつつ、どうしたもんかいのとブラブラしていると、知名度の割にこぢんまりした看板が目に入った。
そこは「新宿ゴールデン街」だった。

Wikipediaより


なんとなく名前は聞いたことがあった飲み屋街。せっかくやしと行ってみることにした。

とはいえ15時。まだどこも店は開いていなかった(当たり前やろと思われるかもしれないが、当時のぼくは全く飲み屋に行かなかったので無知だった)。
人はほとんどいなかったが、うだるような暑さにうんざりした野良猫が、とことこと道の端を歩いていた。こういう時間の繁華街の雰囲気も好きだなと思った。

そんなこんなでうろついていると、路地裏にデケェ真っ黒い塊を見つけた。ゴミではなさそうなサイズ。

「おい、ぶっ倒れた人やんけ!!!」

完全にこの姿勢だった。

さすが「凍狂〜TOKYO〜」と思い無視しようとしたが、何を隠そうぼくは偽善者である
誰かが見ていなくても自分が見ている。
なんだか犯罪に巻き込まれている気配がしないこともないが、この暑さで倒れている人を放置しているのも本当にヤバかったので速攻声をかけたら、焦点はあっていないがしっかりこちらを見て、はっきりした声で返答が来た。

「なに?警察?大丈夫、昨日の12時から飲んでたら帰れなくなったの〜、眠いから寝るね」

アホである。
明らかに常習犯なので警察慣れしている。
このクソ暑い中、また寝ようとしている。
何より一番驚いたのは、めちゃくちゃ小柄で綺麗な女性なのだ(見た目は真木よう子を想像してほしい。以下この人を真木と呼ぼう)。

とりあえず水とスポーツドリンクを自販機で買ってくると、通りがかった横のスナックの店員さんもデケェ黒い塊を見つけたようで介抱していた。
話を聞くと、暑いしどうしようもないので、開店時間まで真木を店に置いておくとのことだった。
凍って狂う「凍狂〜TOKYO〜」にも人情があるもんだ。泥人形と化した真木を抱えて運んだら、暑い中お疲れ様と飲み物をくれるというので、麦のソーダ割をもらった。

「もう少ししたら店が開き出す」
「チャージ料金というものがある」
などと、飲み屋のルール的なものを店員さんに教えてもらっていると真木がモゾモゾと蠢き始めたので、気を遣わせまいと全力スマイルで微笑んで挨拶をした。

「ん、ここどこ?ホテルじゃないね。お兄さん誰?セックスしたことある人?とりあえずありがとう。」

童貞卒業直後のぼくには全く思いつかないフレーズだった。
・なぜセックスしたのに覚えていない?
・起きたら自宅ではなくホテルにいること前提なのか?
このあたりは疑問に思ったが、
・めちゃくちゃ綺麗でスタイルが良い。
で全ては吹っ飛んだ。所詮風俗で童貞を捨てた身。案外シャイでピュアボーイだ。

ゆっくりとこれまでの経緯を真木に話すとすぐに理解したのか、ケラケラと笑いながらぼくの麦ソーダ割りを一気に飲んだ。

「いやー、昨日の昼の12時から飲んでてね。ほら、ラグビーのワールドカップあるでしょ?見てたら盛り上がってサ。24時間超えて飲んだら、そらねぇ」
と言って、真木はまたぼくの麦ソーダ割りを飲んだ。
あんた、夜やなくて昼の12時から飲んでるんかいとは思ったが、真木が握りしめていたほとんど残っていない麦ソーダ割りを奪い取り流しこんだ。

ぼくは関西から来た大学生ということ。夜行バスまで暇なこと。あんまり飲み屋には行かないこと。こういう飲み屋街は初めてなこと。
自己紹介をしつつ、開店準備を進める店員さんと、ものの1時間くらいで完全に回復した真木とたわいもない話をしていたら、真木が突然立ち上がり言った。

「そうだ、今から暇なんでしょ?助けてもらったお礼に飲みに連れて行ってあげよう!」

→②に続く。

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