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大学生のぼくが行き倒れた年上女性を助けたら人生が変わった話。③

エロい展開になるのは漫画の話。事実は小説より奇ではないのだ。

ビールも4.5杯飲んで20時くらい。
助けてもらったお礼といって奢ってくれたので、しっかりと頭を下げて感謝を伝えた。
バスまで歩く時間を考えても30分くらいしかなかったが、真木がよく行く店に行きたいとのことだったので着いていった。

真木は店員さんにぼくのことを紹介したあと、今日の出来事を話した。
「ハマサキくん良い子だね。でも、今日のことは本当に忘れたらダメだよ。
と、店員はぼくに言った。どんな含意があったかは分からないが、忘れるわけなかろうと思ったので、もちろんですとハッキリ答えた。
そしてすぐにバスの時間が来たので、レモンサワーを1杯だけ飲んで店を出た。ここも真木がお代を払ってくれようとしたが、店員さんは「女に出させたらダメ!」と言ったので普通に支払った。
本当にありがとうございましたと真木と握手をして店を出た。なんだか泣きそうだった。

エモい気持ちに浸りつつとぼとぼ歩いていたが、なんやかんやバスまで5分くらいしかなかったのでゴールデン街からバスまでダッシュした。酔いが回ったので走りながらちょっと吐いた。

ということで、5時間くらいの謎の体験が終わった。
終わったのだ。エロい展開もなく。

バスの中で真木とは何だったのか考えた。
短い時間の中で、ぼくには無いものばかり持っているなと気付かされた謎の女性。
もしかしたら夢だったのかもしれないなとも思った。それくらい謎だった。

そこからぼくは飲み屋に1人で行っては横の人と話すようになった。
真木みたいになりたいなと思ったのではなく、単純にタダ酒を飲めることに味を占めたのだ。
半グレに話しかけてしまい夜中スパワールドに連れて行かれ徹夜で温泉に入ったり、胸にエグいタトゥー女と哺乳瓶でスト缶を飲む明らか未成年(?)に乳首を舐められたり色んな体験をしたが、それはまた別の話。

真木に会っていなければ、たぶん今のぼくはなかったと思う。

あれから4年経った。真木はいまどこで何をしているか分からないが、今日も元気にぶっ倒れるまで飲んでいてほしいなと思う。

おわり。

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