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大学生のぼくが行き倒れた年上女性を助けたら人生が変わった話。②

「そうだ、今から暇なんでしょ?助けてもらったお礼に飲みに連れて行ってあげよう!」

そう言われ真木にゴールデン街を連れ回してもらうことになった。
思い出してほしい。真木は1時間前まで道で酔い潰れて寝ていたのだ。酒ザコの多い部活で育ったぼくとしては全く信じられない肝臓を搭載している。「ちょっとオレ酒強いんじゃね?」と思っていた自分を助走をつけてブン殴りたい。

飲み屋にもそこまで行くわけでもない、ましてや知らない人と知らない街で知らない店に行くなんてことは初めてである。そして、連れて行ってくれるのは真木よう子(似)。
東京コンクリートタウンの地面は昼の熱を蓄えていて、バッチバチの素人童貞のぼくを煽るかのように照りつけた。脇汗が止まらない。

1軒目は沖縄料理を出す店だった。
L字型のカウンターには17時にしては人が集まっていて、おっさんやオバハン、仕事終わりのサラリーマンなど色んな人が集まっていた。
「おーす、どうもどうも、2人いける?」
「いけるよー!」
小気味良く慣れた感じで店に入る真木。
「あ、どうもどうも、横ごめんね!」と客の間にスルスル割り込む。
「お兄さんビール2つ!」
「ぼくも客だけどまあいいよ、こっちつけといて(笑)」
超速で横の人に酒を奢ってもらっている。
「真木さん、ここ何回か来てるんですか?」
「なわけ、初めてだよ!」
真木もぼくもタダ酒をもらってゴールデン街の夜が始まった。

改めてお互いに自己紹介をした。
真木は埼玉の端の方に住んでいて、次の日が休みのときはゴールデン街でぶっ潰れるまで飲んでいるようだ。
そして、ぼくがついこの間風俗で童貞を捨てたことを聞いてケタケタ笑っていた。
「どうだった?」「まあ、そんなもんかなって感じです。」「だろうね。」
真木はぼくにかからないようにタバコの煙を上に吐きながら、横目で見つつ話す。改めて美人だと思った。そして、喫煙する女性に対して、そこはかとないエロさを感じる自分がいることに気づいたのは言うまでも無い。

真木は髪を耳にかけてお通しをつまんでいた。確か海ぶどうだったと思う。そして、真木の耳には結構な数のピアスが開いていたことに初めて気づいた。
「昔からなんかあったら開けちゃうんだよね。」
そこからは、事務の仕事をしていること、色々な男と寝たこと(2週間前までアルバニア人の男と付き合っていたらしい、外人のくせにチンコがちっさかったと不機嫌そうだった)など話してくれた。

「ハマサキくんは何で21歳まで童貞だったの?」
「何でと言われましても、、、ぼくモテないんですよ、、、」
「たぶんね、セックスをムズカシク考えすぎなんだよ。そんなにハードル高い?裸の付き合いってあるじゃん?そんなもんだと思うよ。仲良くなるためのツールだよ。」

当時のぼくにとっては全く意味がわからなかった。ただ、たぶんこの人はそうやって色んな人とコミュニケーションをとっていく中で「自分」ができていった人なんだろうなということだけはわかった。
それが良いことなのかどうかはわからないが、明らかに真木は魅力的で、なんとも退廃的な雰囲気(道で酔い潰れることではない)を出していた。ぼくには全くないもの、写真には写らない美しさを持っていた。
こうやってさ、知らない人と喋って楽しく酒飲んでさ、いつ死んでも良いと思える人生がいいと思うんだ。

まてまてまてまて、エロい展開は無いんか??????この流れで???????横にバリアンあるぞ?????????

無い。

③に続く。

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