元気してっかな
小学生の頃から、誰とする訳でもないのに漫才の台本を作ってきた。その時その時に衝撃を受けた芸人の影響をもろに受けながら、結局大学に入ってからも漫才の台本を書いている。そうなると誰とやるわけでもない、成仏待ちの幽霊台本がそれなりに溜まってくるので、こうして公開して成仏させてやろうというのがこのnoteをはじめた理由の一つである。
漫才の台本を書いて共有するためだけのLINEのオープンチャットにも入っていた。ただ、「台本だけではなんとも言えない」「やってみないと分からない」ことに気づいたのは大学で本格的にお笑いを始めてからのことであった。そう、やってみないとなんにも分からないのである。青春を舞台に捧げることも無く、ハイスクールマンザイなんかも全て無視しながらちょぼちょぼ漫才台本だけ書いてきたやつにその事が分かるわけでもないのだが、にしてもただの自己満足を6年以上続けてきたのだ。その自己満足の集大成としてnoteへ投稿し、ネットの海にその台本たちを沈めてやろうというのがこのnoteの目的である。現状は。
前置きが長くなりすぎたが、早速晒していこう。今回の台本は、前述のオープンチャットに届いた依頼をもとに作成した台本である。新入生歓迎会の部活動紹介で漫才をすることになった剣道部員のために作ったものだ。
A:みなさんの中にはまだ入る部活決めてないよーって人もいると思うんですけど
B:まあいるかもしれないね
A:剣道のことあんまり知らないよーって人どれくらいいます?
B:やってる人以外はあんまり分からないって人の方が多いんじゃない?
A:じゃあうちの学校の中でいちばんモテる部活ってどこだと思います??お前知ってる?
B:まあ、男子なら野球サッカーとかそこら辺じゃないの
A:あー甘いね、実はね、これ剣道部なんですよ
B:嘘つけよ、在籍者が言うのもあれだけど嘘つけよ
A:剣道部はモテます。ほんとにそうなんですよ。信じてください!!!!!
…まあまあ皆さん座ってくださいよ
B:誰も立ってねえよ、立つわけないだろ。そんなに言うなら今ここでデートの再現してそれが良かったら信じましょうよ
A:分かったよじゃあ場所はいつも通り道場で待ち合わせってことにして
B:あ、早速ダメですおい待て待て待て
嘘だろお前
A:別に普通だろ稽古の再現するんだから
B:いや俺が言ったの「デートの再現」だから。1年生の立場にもなれよ。知らない先輩が知らないスポーツの練習してるのただ見せつけられるのひたすら苦痛だろ
A:そんなこと言ったらお前知らない先輩の架空のデート見せつけられる方が苦痛だろうが
B:ぐうの音も出ねえよ、初めて経験したけどこれが論破ってやつか
A:知らねえよ
B:まちがえないでくださいね、デートですから。場所は自由に選んでいいから
A:じゃあ市民体育館!
B:ほとんど変わらねえじゃねえか!!!
何を元気いっぱい答えてるんだよ
A:正直竹刀が持ち込める場所ならどこでもいいんだよ
B:やめてくれよ毎秒蛙化現象起きそうだから。俺が場所決めるわ、ディズニーデートってことにしよう。
A:じゃあ俺は俺やるからお前は審判な
B:何が始まるんだよ。俺は彼女やるから
…いやー今日のディズニーデート楽しみだね〜!
A:ああ、うん…
B:あれ、元気ないね
A:入口で竹刀持ってかれた…
B:なんで持ち込めると思ったんだよ!
そらそうだろあれ普通に武器だから
もう気を取り直して行きましょ!
あ、見て〜!グーフィー!かわいいー!
A:うわ!胴ガラ空き!竹刀がなあ…あったらなあ…
B:あ、あれプルート!?一緒に写真撮ろ〜!
A:顔デカ!面打ちやすそ!手元にあればなあ
B:楽しくねえなあーーー!!!序盤から楽しくねえなあ!なんでディズニーのキャラを技が出せるか否かで見てるんだよ。もう、なんか乗りましょ
あ、ビッグサンダーマウンテン乗ろ〜!あーでも待ち時間長いなあ
A:こういう時はゲームしよ、ゲーム
古今東西しよ。
B:古今東西?いやまあいいけどさ
A:古今東西いぇーい!剣術の流派!
B:ずるいぞお前よお!!!!
A:👏👏中条流!!!
B:「中条流!!!」じゃねえよ!!!
そもそも1個も知らねえよこっちは!!
あーもう私たちの番来たから。乗ってる人みんな叫んでるから私達も叫ぼうね。うわー登ってく!
A:ドキドキする!!
B:落ちるー!きゃー!
A:ヤーーーーーーー!!!!!!!!
アァーーーーーーー!!!!!!!!
ウワアーーーーーー!!!!!!!!
B:叫 び 方 が 剣 道 部 す ぎ る ん だ よ
!!!!!!!!!誰と戦ってんだお前はよ!!!!!!!
A:いやー楽しかったねー
B:もういい、帰る
A:え、なんで
B:だってずっと剣道部すぎるんだもん。今日ぐらい剣道のこと忘れてデートしてほしかったのに、帰る!
A:あーまあー…
B:ここは女の子引き止めないとだめだろ
A:あ、そうか。待って!!!ちょっと待って
B:なに?
A:外した小手バカクセえけど、嗅ぐ?
B:好奇心で引き留めようとすんなよ
……え、なんで防具つけて来てんだよ!!!!ずっと防具つけてデートしてたのかよ
A:いやだって持ってる服の中でこの一式がいちばん高いんだもん
B:だとしても変だろ!あーもう無理です
別れましょう、帰ります。
A:あ、やばいぞこれは
B:こうなると女子はかなり怒ってるから、テンション上がる一言、ほら!
A:今テスト期間中だからずっと部活ないよ!
B:違う!全部違う!!!何もかも違う!!!もう剣道部というかお前の問題だ!これは!!!
A:あー失敗したなあ、もっと剣道の練習頑張らないとなあ。
B:剣道の練習しても恋愛は上達しないだろ
A:いやいや、剣道が上手くなると「面倒(面・胴)をさけて付き合あえる(突き合える)」ようになるからね
B:いやもういいよ!剣道部でお待ちしてまーす!ありがとうございましたー!
今この文章までたどり着いたあなたはとてもすごいと思う。普通ならドロップアウトする。それぐらい「こんなん見せられても…」なものである、台本というのは。
まず剣道部漫才の作成者に剣道の知識があまりないことは明らかである。ネットで調べた、それこそ小手先の情報で何とか書いている。言い回しやセリフも、人が見えない状態で書いているので全体的にまとまりがない。メインのディズニーでのやり取りが短すぎる。あと古今東西のくだりなんか完全に錦鯉さんの『合コン』のそれだし、序盤の「誰も立ってねえよ」は囲碁将棋さんのそれである。最後の引き止めるくだりはアキナさんのやつだ。ここが1番良くない。
果たしてあの剣道部員は本当にこのネタをやったのだろうか。それすらも分からない。そもそもどこの誰かも分からないけど、元気してっかな。俺のせいでどんずべりしてたら本当に申し訳ない。
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