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ハーバルセラピストの私と薬機法とハーブティーと

私はハーバルセラピストの民間資格を持ち、ハーブの歴史や作用について本や論文を趣味の範囲で読んだり学んだりする一般人です。
世の中には「ハーブ商売」と言われるように健康食品としてハーブ商品がよく売られています。
(アロマ商品も多いのですが、今回はハーブに焦点をあてていますのであしからず)

便秘解消、更年期のお悩みに、美肌ブレンド、安眠効果、ダイエットに効く成分…

上記はすべて違反です。
消費者庁のHPから「インターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示に対する要請について」が見られますのでお暇なときにでも見てみてくださいね。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/past/


ここではハーブティーを中心に、効果効能への言及の何が良くないと思うのか、について私が考えるところを語りたいと思います。


■医療的なリスク


「(広告や販売において)薬機法を気にしてたら何も言えない!」
「海外じゃ薬として扱われてる」
「自分は●●の効果があったから嘘じゃない」

と薬機法のもとに効果効能への言及を避ける風潮を思考停止みたいにとらえられることもあります。
単純に法律違反=NGではありますが、ちゃんと意味があって規制されていると私は考えています。

医学や薬学の本を少し読んでも分かる通り、人の体に影響を及ぼすものは大変複雑です。医療に関する歴史や知識、技術を鑑みても医薬品とそこらのハーブティーを同じ天秤の上に乗せるのはあんまりにも不均衡と思われます。

医薬品に限らず食事やライフスタイルも、ある人によって良いものがある人にとってはNGであるのは想像に難くありません。
お医者さんや薬剤師さん、その他もろもろの医療に関わる方々はそういったことを(当たり前ですが)個々の体に配慮してみてくれています。
それを、本に●●作用と書いてあった、というだけで「●●の症状にいいよ」というのはあまりにリスクであり浅はかだと思います。
一般のハーブ、アロマは体に影響が少ないからこそ自由に楽しむことが認められています。
だから普通に飲む分にはおおかた影響はありませんが、やはりそこにはリスクになる人が存在しています。

海外ではハーブをそのような医薬品なみに研究していることが少なくありませんが、その分ハーブ専門家のハードルも高いです。
どちらかと言えば日本でいうところの漢方薬のポジションに近いイメージです。
(勝手なイメージですみません。体に優しいイメージがあって手が届きやすい割に専門性が高いというところでは似通っていると思いまして)

医者ではない人は診断ができない以上、「個人の感想」を超えて何らかの症状に効く、は言うべきでないと思います。
ちなみに「あなたは●●(症状・病名)ですね」の診断行為は医師法で規制されています。

例えば、昨晩お酒を飲み過ぎて気分が悪い人がいたとき、

「二日酔いなの? 私が二日酔いで気持ち悪かった時、ジンジャーのお茶飲んだら気分良くなったよ。淹れてあげようか?」

はOKでも

「その症状はアルコールの離脱症状ですね。ジンジャーに含まれる辛味成分のショウガオールは発汗作用、解毒作用があるため吐き気を鎮める効能があります。当店が販売するジンジャーティーは毎日飲んでいると流行のインフルエンザにかかってもすぐ治りますし、便秘解消・がん予防もできますよ」

NGです。

ですが、なぜか後者の方が親切で信頼性が高いように見えてしまうことが多々あります。
そういった心理を利用した商売が世の中にあふれていることを覚えておいてください。


■特にインターネットで気を付けたいこと


また、上記のように実際のリスクに加えて、インターネットであるが故のリスクもあります。
インターネットは基本的にテキストで、動画を使ったとしても双方的なコミュニケーションはまだまだ難しいです。
そして、本来であれば前後の話、話し手のバックグラウンドなどが重要となる場面においてもSNSではその一面だけが切り取られて見えるものです。

「このお茶飲んだら3キロやせた! みんなも試してみなよ!」

という情報があったとします。上記のテキストに加えて「お茶を飲んで空腹をごまかして毎日10km走りました」と言っても見た人たちは「このお茶を飲めば痩せる」としか受け取らない人が多くいます。

いくら話し手が丁ねいに説明しても受け取り手もさまざまです。

Aさん「あと500gやせたいなあ。あんまり運動したくないしお茶でも飲んでみようかな?」

Bさん「太っていたせいでいじめられていた。人生がめちゃくちゃになった。今も苦しんでいる。痩せなきゃ痩せなきゃ痩せなきゃ。何でもいいから痩せる方法を知りたい。お茶でもなんでも痩せられるなら買う。高額でもかまわない」

もしAさんが自分の友だちであれば気軽に自分が試して良かったダイエット法をおしゃべりするかもしれません。
しかし、もしBさんが自分の友だちだったら? 不用意にダイエットの話をすればBさんの精神状態を不安定にして嫌なことを思い出せてしまうかもしれません。Bさんのダイエットに対する姿勢を知っていれば、少なくとも私からはダイエットの話をふらないでしょう。
AさんとBさんでは「お茶を飲んで痩せた」のたった一言に対してもその受け取り方は大きく違うのです。

上記はダイエットの話ですが、これが病気となるともっと深刻なケースが多いです。病気は家族や大事な人にまで影響を及ぼします。
以前、「がんに効く」という商品を売った会社が逮捕された事件がありました。
被害者の人はインタビューで「家族にがん患者がいる。効かないかもしれないのは分かってる。でもわずかに可能性があるなら買うしかない」といった旨を話していました。少しでも可能性があるなら、買わなければ家族を見捨てた気分にもなるでしょう。

これはがんと言う重い病気だからこそ大きな注目を浴びましたが、色々な病気・症状・コンプレックスで似たことは今も起こっています。
上記でも言いましたが「個人の感想」を超えて作用の話をするのは、相手の弱い部分を刺激することにつながります。
そして、インターネットでは顔が見えなかったり相手の状況が分からなかったりするからこそ、その刺激は自分の思いもよらない形になることがあります。


■私のスタンス


私はじゃあハーブをどういう風にとらえているかというと「野菜に近い嗜好飲料」と思っています。
野菜を食べない人が、毎日にんじんを食べたら肌がきれいになったし結果的にがんや動脈硬化のリスクが下がったとしても、にんじんは「美肌の特効薬だ!」「がん、動脈硬化にならない!」とはなりません。

その人にとって必要な栄養が含まれていたから結果的に肌がきれいになり、がんや動脈硬化のリスクが下がったまでです。今まで油モノやジャンクフードを食べていて、その代わりににんじんを食べるようになったのであれば相対的な改善効果もあるでしょう。

ハーブティーもそんな感じだと思っていて、冷たくて甘~い炭酸飲料を飲んでいて不調があるなら「温かいハーブティー飲もうよ!」とアドバイスしたくなります。それで体が温まって、砂糖の摂取量が減れば不調が改善する可能性が高くなるからです。

また、野菜もハーブも植物なので同様にビタミンなどが含まれており、お茶にすれば水溶性の成分は(微々たるものですが)補給できるでしょう。ですが、栄養面で決してゼロではないので、その人に不足している成分が含まれるハーブティーを毎日飲んだら、飲む前よりも健康になるかもしれない、というだけです。

ハーブティーの一番の良い所は自然の味と香りである点です。

人工的で濃い味や香りが世の中にはあふれかえっていて簡単に手に入ります。引き換え、自然食材を調理する手間やお金はなかなか手に入りません。
ハーブティーは(ピンキリですが…)一杯100円以下で自然な味と香りを楽しめます。

何故だかは分かりませんが、自然な風味というものはすごく癒されます。そういう人って私以外にもいっぱいいると思います。
仕事の合間に自然食材の手作りほかほかランチを摂るのは無理でも、ほかほかハーブティーなら難しくありません。
手軽にほっとしたいとき、リラックスしたいとき、ハーブティーはすごく役立つ嗜好飲料です。

リラックスにはコーヒーや紅茶を飲まれる方が多いでしょうが、ぜひその仲間にハーブティーも入れてあげてほしいのです。
健康食品のようにとらえて特別視する方もいますが、そんなことないよ、と。今日はハーブティーを飲みませんか? と提案したいんです。

ハーブに対して何かしらの健康効果を期待したい方はご自身で勉強して判断されることを強くおすすめします。
そして、売る側の方々はぜひ最低限の薬機法を守って販売・広告してくれることを強く願います。

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