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My Favorite MTB Person

私がMTBを通じて出会ったなかで、一番嬉しかった出会いについて書いてみる。

今年の3月、それまで乗っていた、最初に買ったバイクからアップグレードして、念願のフルサスペンションマウンテンバイクを買えるとなったときに、家から車で1時間のバイクショップに在庫があるとわかり、電話をかけたときにたまたま対応してくれたおじさんRである。(そういう私はいいおばさんであることはわかっている)。電話をした翌日にショップへ出向き、「昨日電話でRと話したんだけれど・・・」というとRが出てきて、話を聞いてくれた。

それまでの私の経験では、バイクショップで店員さんに良くしてもらったという経験がなく、セールスマンにしたらお金になりそうなお客にサ-ビスしたいというのがわかりやすい本音で(アメリカ人ってそういうところ、けっこう露骨)、バイクショップの店員さんは、お金持ってそうでもなければ、バイクのことなどほとんどわかっていないであろう女の私など、相手にしたくないのだろうというのが私の印象だった。

だから、ちょっと気構えてお店に入ったのだが、Rはアジア系の人ということもあり、私はちょっぴりホッとした。
Rはまず、私がどれくらいのレベルで、普段どのトレイルで乗っているかなど、さらっと聞いてくれた。私が買いに来たバイクが私の乗るレベルや目的にきちんと適しているか確かめるため、聞いてくれたようだ。

「家族もマウンテンバイクに乗るの?」と聞かれて、夫も子供たちも興味がなく、一緒に乗ってくれないので、一人でグループライドを探しては行ってみたり、このお店の近くにあるトレイルは初心者にも乗りやすいので、一人で練習しているというと、「ひとりでも乗ってるなんて、すごいねえ」と感心してくれた。

Rが私が試乗するバイクの調整をしてくれている間に、私がまだ初心者であることや、どうにか上達したいけれど、定期的に受けられるようなレッスンは身近にはなく、どこかで習える場所や教えてくれる人がいないかと切望していることを話すと、Rは昔は近所の子供を集めてよく教えたものだという。

いろいろなMTBスキルの動画などを、お店のコンピューターで見せてくれ、こういう時はどうすると思う?などとテクニックについて私にクイズのように聞いてくる。それに私が答えて、こうだああだと話が盛り上がる。それだけではなく、お店のBMX用のバイクを1つ掴むと、私を外に連れ出して、デモンストレーションしながらテクニックを教えてくれた。

「バイクってのはこうやって子供みたいに遊びながら上手くなるのが一番いいんだよ!」というRに、「そうそう、そうだよねー!」と私。
基本的なテクニックらしいけど、やっぱりバイクのプロの自転車の扱い方とか乗り方ってすごーい、かっこいい!

すっかりデモンストレーションで盛り上がり、「ああ~、私もあなたの近所の子供だったら、あなたに教えてもらいたいわ~」などと漏らしていると、お店のカードに自分の電話番号を書いて渡してくれた。「こっちの方へバイクに乗りに来る時があったら連絡して」と。え、いいの?お客さんに個人的な連絡先を教えてくれるなんて、バイクを通して出会う人ってみんなオープンだなあ。

「ありがとう!」と電話番号を受け取って、すっかり意気投合して、バイクにつけるペダルや、シューズの試着にあれやこれやと時間を費やした後、さあ、お会計ということでレジまで行ったのだが、なんとそこで衝撃の事実が・・・。

なんと、倉庫に在庫ありと表示されていたバイクが、システムの表示ミスで実際には在庫がないということが発覚したのだ!
それまで2時間くらいあれやこれやと過ごした時間は何だったのか?!コンピューターのスクリーンとにらめっこしているRも一生懸命探してくれている。私もそれを眺めながら、怒るべきなのかどうしたものかわからないまま立ち尽くしてしまった。

結局、やはりRのお店の倉庫には在庫がなく、次に入荷するのは3か月先だという。それでも、それまでバイク屋さんでまともに相手にされたことのない私を、まるで前から知っている仲間のように扱ってくれたRに、私は不機嫌になる気すら起きなかった。

2時間もかけて接客した挙句に売り上げにならないのは、セールスマンであるRにとってもすごく痛手なはず。なんだかすごく申し訳ない。私が欲しかったモデルよりもワンランク上のモデル(値段もワンランク上)なら在庫しているよ、と軽く薦めては来たけれど、まったくもってプレッシャーを感じさせるような素振りは微塵もない。逆に、Rは私が買おうと決めたモデルが競合のお店にあるのなら、そこへ電話して行ってみるといい、という。

こんなに時間をかけて接客した私が、結局バイクの売り上げにつながらないとわかっても、Rの温かい対応は一切変わらなかった。結局、Rのお店とは競合にあたるショップで、お目当てのバイクが1か月ほどで入荷するというのが、最短で入手できるオプションということになり、RとRのお店には申し訳ないが、そのお店で手付金を払って取り置きしてもらうことにした。

手付金を支払うために競合のお店へ向かうことになり、「こんなに良くしてもらって、本当はあなたのところで買いたいんだけれど、ごめんなさい。」と私がいうと、Rは「心配しないでいいよ。新しいバイクが手に入ったら電話しておいで!」と快く送り出してくれた。

家に帰ってきてから、Rが私を覚えているうちにお礼を言いたくて、メッセージを送った。「今日は本当にいろいろ良くしてくれてありがとう!教えてくれたことや、デモンストレーションも価値が付けられないほど素晴らしかった。あなたからバイクが買えなくて本当に申し訳ない。バイクが手に入って、そちらの近くに乗りに行く機会があったら連絡するね。」
するとRから「心配しないでいいよ。バイクが手に入ったら電話して。」と。

それからバイクが実際に手に入るまで、2か月以上かかったのだが、私はその間、ずっとRの電話番号が書いてあるカードを食卓の自分の場所に置いておいた。バイクが手に入ったら、お店でデモンストレーションしてくれたように、またあんな風に教えてくれるのかな。そう考えるとワクワクした。

Rにお店で出会ってから、3か月も経ってやっと、私はRに連絡することになるのだが、その続きはまた別の機会に書こうと思う。

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