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絡め取ることが

絡め取ることができるの? 指先を動かす魔法覚えているの? 白い背景の中、細い首筋を風に晒して、あなたはいつまで立ち続けることができるのだろうか。あの日見た光の形が、目の奥に蘇っては消えていく。

幻ならば痛みすら感じなくてもよかったのに。

記憶の輪郭を辿る森の中。雨が穿つ柔らかい地面をあなたはゆっくりと踏みしめて、選ばれた者だけが加わることが許される魔術の夜に誘われていく。

誰も、いなかったのだから。
誰も、いなかったのなら。

聖域を目にした者は帰る道すら忘れてしまう。足跡は遠く途切れて爪先のあかぎれだけが主張している。北風が微笑む先に真っ黒な森がざわめきあなたは死んだ。

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