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映画『メッセージ』に思う。テッド・チャン『あなたの人生の物語』

(ネタバレあり)

地球外生命体の物体が、世界の12カ所に現れた。

大学で言語学を教えている主人公が要請されて

その物体の中へ向かう。

三日月形の物体は、地面に接することなく浮いている。

決められた時間内での接触が可能であることが分かっている。

その後の換気には18時間かかるという。

世界中の12カ所で同じように接触を挑むこととなる。

そしてパズルを埋めるようにその分かった情報を共有することで

地球の危機を防いでゆくことになる。

けれども主人公の行動がカギともなっている。

このことも決まっていたことなのだろう。

運命論的な思考。


その物体の下には四角い穴があり、その中に入ると重力が変化していた。

物理学者と一緒に恐怖を感じながらも、主人公はその物体の中へと進む。

すると、

黒いタコかイカのような地球外生命体が2体現れる。


不気味なBGMの不協和音が続く。


何度かその空間に行くことで、その地球外生命体と交信するすべを探る。

「HUMAN」と言い

また、自分の名前を書いて見せることで

お互いの名前という概念を共有する。


丸い円とその周りの突起という言語があるということが分かり、

それを解析してゆくことで理解が進む。


映画の冒頭から

主人公が出産し、小さな女の子を大切に育てている場面の映像が出てくる。

そして

その子が病気になりそして死んでゆく場面も出てくる。


その後

映画の進展とともに、時系列が混じっていることに気がつく。

地球外生命体は、3000年後に地球人に助けられることから

現在の ままでは破滅する危機的状況である地球を助けるために

そしてその危機を回避するため、地球全体で助け合うことを実践させるために

来たということ。

そして

彼らの言語を理解するということは

時間を超える概念と力を身につけるということとなる。


主人公は

自分の未来を見ていたということ。


今後、共に働いた物理学者と結婚し

子どもを産み

離婚し

子どもを病気で亡くす

そして

地球外生命体の言語を分析した本を出す。

その言語の分析が今後の地球外生命体の命運を握っている。


その未来を見て

彼らの言語を理解できるようになった。

そのループは、現在の私たちには理解することが難しい。



自分の未来が困難に満ちていたとして

それを受け入れることができるのか。

回避する方法がないと考えると

受け入れるしかないのか。

やがて

未来の話をしたために理解されずに離婚することになること。

子どもが重い病となり、死ぬ運命にあるということ。

未来が見えるということは、その悲しみを知っているということ。


地球外生命体の言語の解析が実現できるという功績があるから

そして

地球と地球外生命体の危機を救うことに繋がるという未来を知っているから

絶対的な使命を全うすることを選んだ。

そして

多くの定められた自分の悲しみの中で

生きてゆくことを選んだ。

そこに感じられる

自分よりも地球の運命を優先する矜持が

悲しくも凛々しい。


自分の人生悲しい運命を受け入れ

その中でも、地球と宇宙のために

凛として生きてゆく人間の崇高さが神々しい。


時として

このような聖人が現れる。

実際に現れる。

だから

人間は

存続できている。


そんなことを感じました。

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