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ホバートのディズニーランド

気づけば2月になり、タスマニア島でもう丸1ヶ月も暮らしたという事実に驚愕している。

あっという間だった…と一言で括るにはあまりにも多くのことが起こった1ヶ月間だった。あんなに出国前に言いふらしていたチェリーピッキングの仕事が結局数日間で終了したこと(自分たちが辞めた次の週にはファームでの仕事自体が終了したようで、あのままではまた路頭に迷うところだった…危なかった)、引っ越したこと、車を買ったこと、そして何よりホバートの寿司屋で働き出したこと、これら全てが去年12月の出国時には全く予想できていないことだった。

「ワーホリは稼げるらしい」という情報が一人歩きしすぎた結果、ワーキングホリデービザで渡航したは良いもののなかなか仕事が見つからず、失意のまま帰国することになるような人も増えてきていると聞く。我々も最初はかなり雲行きが怪しかったので、現時点でなんとか仕事にありつくことが出来ているのは本当にたまたま運が良かっただけだなと改めて思う。

今現在の私は、最初にもらった寿司テイクアウト店での販売メインの業務に加えて、同系列の回転寿司レストランでもフロントスタッフとして働かせてもらっている。

テイクアウト店の採用面接にて、英語で話すにあたりオブラートをどこかに置き忘れてしまった結果、「オーストラリアへは、お金を稼ぐために来ました!」と間違えてど直球に伝えてしまったのだが、それが逆に良かったのか、「系列のレストランでもトライアルを受けてみないか」と声掛けをいただいたのだった。

回転寿司レストランのマネージャーと初めて話した際、「私はこのお店をホバートのディズニーランドだと思っている」と言っていたのが強烈に印象に残っている。その時はただただ「めちゃくちゃ強く出るなこの人」と思ってしまったのだが、働き出して1週間ほどして、なんとなくその真意が分かったような気がする。

まず前提として、タスマニア島では自然以外のアクティビティが極端に少ない。そしてそれは州都ホバートでも例外ではない。
その中で「皿に乗った寿司がレールに乗ってぐるぐる回っているレストラン」というのは少なからずエンターテイメント施設としての一面も持ち合わせているようだった。

フロントスタッフの仕事は、テーブルの片付けにセッティング、ドリンクの準備および提供、タブレット経由で注文が入った食事の提供、会計、清掃、その他お客様の対応全般である。

テーブルの片付け中に何か視線を感じる…と思ったら、反対側のテーブルの子供が寿司の流れるレールをキラキラした目で凝視していたり、照り焼きチキンにどら焼き、バナナ天ぷらなどを提供するとお客様が手を叩いて喜んでいたり、この仕事を通して予想以上に接客の楽しさを味わうことが出来ているように思う。

と、ここまで書いて本日のシフトに入ったところ、今年一番の売り上げとなる大忙しの日で全く思うように動けず、精神的にかなりのダメージを負ってしまった。

業務量に対して明らかに従業員が少ないのでは…と思ってしまうが、マネージャー曰く「人件費が高いのでたくさん人を雇うと利益が出ない。時給が高い分、こちらではその分たくさん働いてもらう」のだとか。日本でバイトしていた時よりも今の時給は2.5倍高くなっているので、単純計算で日本にいた時よりも2.5倍速で働かなければならないということらしい。この調子でいけば、帰国する時にはサイボーグばりに高速で業務をこなすスーパー人間になっていそうである。

キャストに採用された際、最初のトレーニング(朝早く家が遠かったため前泊)があまりにも辛すぎて、家にいる愛犬に癒されるためだけにわざわざ一旦帰宅したのをふと思い出す。

仕事は覚えて慣れるまでが辛いのはいつだって変わらないんだなと思いつつ、ホバートのディズニーランドでもなんとか生き抜いていこうと決意を新たにした金曜夜であった。

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