米とみゆきとTOKIOと私

その◯を◯いでゆけ
お前の手で◯いてゆけ
お前が◯えて喜ぶ者に
お前の◯◯任せるな


我が家には炊飯器がありません。
鍋とかフライパンを使ってコンロの火で炊いています。
別にポリシーとかあるわけじゃなくて、今の暮らしを始める時の初期投資をケチった結果です。
何なら欲しいよ炊飯器。便利だもの。

ある日の夜、お風呂を済ませた私は明日のお弁当用のご飯を炊く準備に取り掛かりました。
お米の袋の口をとめているぱっちんクリップを外し、袋を覗き込んだ瞬間、走る衝撃。


うそ、私の備蓄米……少なすぎ?


米袋をひっくり返し軽量カップにザーーッと全量注いでみたけど、一合よりけっこう少ないくらいしかありません。
そうよね、食べ物は食べ続けてればいつかは無くなるのよね。諸行無常。
(いや新しく買っときゃよかったんだけど)

まぁ一回のお弁当に半合も使わないし、とりあえず明日の分はいけるかと、今ある米の全てをボウルに入れてとぎ始めました。

給水させていざ炊飯。
いつもなら米一合に対し水200ccです。
だが今回、米は一合も無い。
つまりいつもよりは水を減らさねばならないのです。

蛇口から軽量カップに水を注ぎ、アーあの米の量ならこんなもんかなーくらいに調整。
米と一緒に鍋にジャー。
この配合が合っているかわからない。
でもこれに賭けるしかない(明日の飯を)

いざ、点火!

強火でグイグイいって、沸騰したら弱火に落として、

「ヘイSiri、10分タイマーセットして」
『はい、10分からカウントダウンします』


〜10分後〜


緊張の一瞬です。
火を止め鍋の蓋を開け、しゃもじでご飯をざっくり混ぜます。
再び蓋をして5分蒸らす。
あっやっぱ緊張の一瞬まだだったわ。

5分後、今度こそ緊張の一瞬です。
ちょこっとご飯をしゃもじで取ってフーフー冷まし、手のひらに乗せてぱくっと味見……

硬ってえ。

そっかー水少なかったかー。
やっちまったなぁ!
女は黙ってパックご飯だったか!

でもね、今パックご飯家に無いし、買いに行こうにもお風呂入っちゃったから正直めんどいし……

もう明日の昼はコンビニとかで済ませてもいいかなと思ったけど、実は既におかずの方はお弁当箱にスタンバイしてるから、そこにご飯入れてフィナーレ飾りたいし……

ふと、

こいつ蘇生できねぇかな?

と、鍋の中の歯ごたえバツグンご飯を見ながら思いつきました。

しかし、炊いた後の硬いご飯を普通の柔らかご飯にするなんて、今までにやったことない試みです。
成功するかもわからない。

そんな時、私の脳内に歌が聞こえてきました。


その米を炊いてゆけ
お前の手で炊いてゆけ
お前が飢えて喜ぶ者に
お前の食料任せるな


中島みゆきが『宙船』のメロディにのせて私を鼓舞してくれました(※妄想です)

そうよねみゆき!!何もしなけりゃ私に明日(の弁当)は無い!!
キッチン会のブラック・ジャックに、おれはなる!!!

鍋に少量の水を注ぎ、点火して箸でご飯をかき混ぜます(たぶんプラスチックのしゃもじは耐熱じゃないから)
じっくりと、ふつふつと、お米に水分を吸わせてゆきます。

そして再び聞こえるあの歌。


その米を炊いてゆけ
お前の手で炊いてゆけ
お前が飢えて喜ぶ者に
お前の食料任せるな


今度はTOKIO……!!(感涙)(※妄想です)

やるっきゃないでしょもう!!!


混ぜ続け、水分がわずかになってきた所で火を止め、蓋をして5分ほど蒸らします。

いざ二回目の味見。

お、

これは、


ご飯だ。
いつもの白飯だ……!


いよっしゃあああああ!!!!!

ビクトリーーーーー!!!!!!!

アイアムジーーニアーーーーーーース!!!!!!!!!!

こうして私は勝利を収めた。
胸を張って荒熱の取れた白飯をお弁当箱に詰め、翌日の朝には肩で風を切って颯爽と出勤し、昼にビクトリー弁当(名付けた)を職場にてドヤ顔で食べた。
ちなみにタイミング悪くその日は一人飯だったため、私のドヤ顔を目撃した人はいない。

〜以下ヒーローインタビュー〜


ーーーつまり、今回は工夫して苦難を乗り越えたということですね。

いそべもち子(以下いそべ)「一時はどうなる事かと思いましたが、成功して良かったです」


ーーー今回の事を経て、何か心境の変化はありましたか?

いそべ「今までは炊飯失敗すると、とりあえず冷凍しといて雑炊やおかゆを作る用にしてたんですけど……でも今回の件で、諦めないって大事だなって思えました」


ーーー今後の展望などあればお聞かせ願えますか?

いそべ「緊急事態宣言も解かれたし、炊飯器を買いに行きたいです」

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