新型コロナPCR検査で陽性になるウイルス②

以前に、私が "新型コロナPCR検査で陽性になるウイルス" として新型コロナウイルスのPCR検査では他の風邪、肺炎様症状を示すウイルスや細菌にも陽性反応を示すことは無いと書いたが、いまだに後生大事にあのデマを根拠としてPCR検査で何を検出しているのか分からないと言う人がいるので、今回はシンプルに新型コロナウイルスのPCR検査試薬の日本語の説明書を取り上げたい。

医薬品医療機器総合機構のHPには日本で販売使用されている新型コロナウイルスPCR検査試薬の一部の説明書が公開されている。この各説明書の中の交差反応性の項目を確認すれば、どのウイルスや細菌には反応するかしないかが一目瞭然である。

Loopamp 新型コロナウイルス2019(SARS-CoV-2)検出試薬キット

(厳密にはPCR検査ではないが、PCR検査と同じく遺伝子検査なので取り上げる) この説明書の【操作上の注意】項目2の妨害物質・妨害薬剤・交差反応性の項目の後半を見ると、

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この試薬では、SARSウイルスには少量(4×1000000)だと反応しないが、それより多いと反応することもある。表に示してあるウイルスと細菌には反応しない 。(ウイルス:MERSコロナ、風邪コロナ13種、インフルエンザウイルスAとB、RSウイルス。細菌:インフルエンザ菌、肺炎レンサ球菌、肺炎桿菌、緑膿菌、レジオネラ、大腸菌、百日咳、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、B群溶血性レンサ球菌、モラクセラ菌、マイコプラズマ肺炎)

TaqPath 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2) リアルタイムPCR 検出キット

この説明書の【操作上の注意】項目2の交差反応性に、反応を示さなかった42種の生物種が書かれている。

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ウイルスは、風邪コロナ4種、SARSコロナ、MERSコロナ、アデノウイルス、メタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルス4種、インフルエンザウイルス3種、エンテロウイルス、RSウイルス2種、ライノウイルス、パレコウイルス。

細菌は、カンジダ菌、ジフテリア菌、レジオネラ菌、炭疽菌、モラクセラ菌、ナイセリア菌、緑膿菌、表皮ブドウ球菌、緑色レンサ球菌、レプトスピラ菌、肺炎クラミジア菌、オウム病クラミジア菌、Q熱菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、レジオネラ菌、結核菌、肺炎レンサ球菌、化膿レンサ球菌、百日咳菌、マイコプラズマ菌、ニューモシスチス肺炎菌。

コバス SARS-CoV-2

この説明書の【操作上の注意】項目2の交差反応性に、(1) で交差反応の可能性を検討し、(2) で24種の実際の検証結果が載っている。(1) では風邪コロナはターゲット1と言われる領域にはたまに反応する可能性 (ターゲット2には反応しない)、 SARSコロナには反応する可能性があり、他の40種のウイルスと細菌には反応する可能性が無いと書かれている。ここでは (2) の実際の検証結果の表について書く。

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24種の中で、SARSコロナのターゲット2領域には唯一反応を示し、他の23種のウイルスと細菌には反応を示さなかった。

ウイルスは、風邪コロナ4種((1) で風邪コロナはターゲット1領域にはたまに反応する可能性があったが、実際は反応しなかった)、MERSコロナ、アデノウイルス、メタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルス4種、インフルエンザウイルスAとB、エンテロウイルス、RSウイルス、ライノウイルス。

細菌は、肺炎クラミジア菌、インフルエンザ菌、結核菌、肺炎レンサ球菌、化膿レンサ球菌、百日咳菌、マイコプラズマ肺炎菌。

最後の、Pooled human nasal wash はヒトの鼻腔洗浄液のことである。つまり、健康な人の鼻の中にある常在ウイルスと細菌にも反応しないということである。

2019−nCoV検出蛍光リアルタイムRT−PCRキット

この説明書の【操作上の注意】の中の妨害物質・妨害薬剤の中の項目2に交差反応性が書かれている。検証したすべての生物で反応は示さなかった。

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これは生物名も日本語で書かれているので、特に説明は追記しない。

FilmArray呼吸器パネル2.1

この検査試薬は新型コロナウイルスのみを検出するためのものではなく、1つの検体の中に、新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス、 コロナウイルス、 パラインフルエンザウイルス、 ヒトメタニューモウイルス、 アデノウイルス、 RS ウイルス、 ヒトライノウイルス 、 マイコプラズマ 菌、肺炎クラミジア菌、 百日咳菌のどれかが存在するかを検出するためのもので他とは異なる特別のものである。この試薬は新型コロナのPCR検査として使われることは無いので説明は省略する。

Loopamp SARSコロナウイルス検出試薬キット

(これも①の試薬と同様に厳密にはPCR検査ではない) この説明書の【操作上の注意】項目2の妨害物質・妨害薬剤・交差反応性の後半に反応を示さなかったウイルスが記載されている。

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この説明書もウイルス名が日本語で書かれているので、特に説明は追記しない。

Xpert Xpress SARS−CoV−2「セフィエド」

この説明書の【操作上の注意】項目3の交差反応性に、(1) で交差反応の可能性を検討し、(2) で実際の検証結果が載っている。(1) ではSARSコロナに反応する可能性はあるが、他の風邪コロナやインフルエンザウイルスなどには反応しないと予測されている。ここでは (2) の実際の検証結果の表について書く。

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結核菌、SARS以外の風邪コロナ、MERSコロナ、イヌコロナには反応しなかったが、SARSには2つのターゲットのうち1つに対して反応することが確認された。


以上のように、検査キットの一部はSARSコロナには反応する可能性はあるが (新型コロナに一番近縁なため) 、新型コロナのPCR検査で誤診の可能性につながる、風邪や肺炎様症状を引き起こす原因となる他のウイルスや細菌に陽性反応を示すことは無い。SARSコロナに関しては流行しているという情報は無いので、考えなくても問題ない。

つまり、新型コロナのPCR検査で風邪コロナやインフルエンザ、ましてやクラミジアなどが陽性反応を示すとは書かれてる説明書は英語だろうが日本語だろうが存在しない。

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