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就活がダメだった新卒フリーライター(虚弱)として学生さんの質問に答えました 〜仕事・生活・お金編〜

6/16(土)、早稲田大学文化構想学部 文芸・ジャーナリズム論系の演習「編集実践」にてゲストトークをさせていただきました。

こちらは恩師であるトミヤマユキコ先生が担当されている演習で、餅井は過去の履修者として、またメンタルヘルスのこじれにより就活で爆死、フリーライターになった(現在二年目・最近では新卒フリーランスという言葉もありますね)虚弱人間として、学生さんにいろいろお話をしました。

ライターの仕事やメディア作りに興味がある人、虚弱やそのほかの事情で就活する自信がない人、まっとうな人間として生きていくのがしんどい人……とみなさんそれぞれでしたが、当日は貴重なお時間を分けてくださって本当にありがとうございました!

事前に質問シートを頂戴していたのですが、授業の時間内で答えきれなかったものが多く、遅ればせながら(本当に遅くなってごめんなさい)こちらに掲載させていただきます。何かのお役に立てば幸いです。

今回は「ライターを目指したきっかけ」「生活サイクル」「仕事のもらい方」「収入面の不安」についてです。まだたくさんあるので続きます!

餅井の主な仕事についてはこちらをご参照ください↓

【ライターを目指したきっかけは?】

正直に言うと、最初から「文章書きたい! ライターになりたい!」と思っていたわけではなく、大学二年生のときにメンタル系の疾患をこじらせ、就活が完全に無理……となったことがきっかけです。

もともと出版・編集まわりの職に就きたいな〜と思っていたのですが、病気をきっかけに毎朝同じ時間に電車に乗るの無理、人が多いオフィスで8時間じっとして過ごすの無理、という完全に社会人に向かない仕様になってしまい……。「会社に行かなくて済む仕事しかできないだろうし、自分が人並みにできるのって文章を書いたりいじったりすることくらいだな……」という非常にネガティブな理由でライターを選びました。

あとはメンタルがこじれてから色々しんどかったことや、世の中で生きるうえでの疎外感というか、心許なさを感じたことなどが結構あり、似たような思いをしている人の役に立てたらいいな、という気持ちにもなったためです。今書いているような文章はたぶん病気にならなかった自分には書けていないはずなので、私個人はこれでよかったと思っています。

【どのような生活サイクルで暮らしていますか?】

生活サイクルの最適解は現在模索中で、かなり流動的です。午前中に起きて仕事をする日もあれば、暗くなってから起きてつらい気持ちになり、ご飯を食べてつらい気持ちのまま横になり終了……みたいな日もあります。

昼夜逆転状態になりがちですが、そういうときもあまり自分を責めず、明け方にポチポチ原稿を書いて明るい時間に寝ればいいや、と流れに身を任せています(でも体には悪いのでどうにかタイミングをつかんで戻す)。

土日祝日はほとんど関係なく(街も混むので)、疲れがたまったり天気が悪くなったりしたら「今日は休み」の判断を下します。基本的に体調はあまりよくないので、仕事をしていてもしんどくなったら布団に避難……。ちょっと横になったら大丈夫、というレベルの不調にこまめに対応できるのはいいなぁと思っています。会社とかだとなかなか横たわりにくいので……。

連載にも書きましたが、最近は「仕事は一日二時間」制を導入して、とりあえず毎日二時間は何かを書き、それ以外は休んだり好きなことをして過ごす、でも調子がいいときはたくさん書いてもいい(反動が怖いのであまり飛ばしすぎないよう気をつける)、という生活をしています。

二時間なら取り掛かるのにプレッシャーもないし(何かを始めるのがとても苦手なので)、だらだらパソコンに向かって時間を溶かすことが少なくなり、精神的に追い詰められることもなくなってきたのでかなりいい感じです。
とりあえず、みんなと同じ時間働こうとするのは諦めて、自分に適した時間で働こう、と思っています。

そして家にこもりきりなのも精神衛生上よくないので、作業は外ですることも多いです。喫茶店かファミレスが多め。
あとは週二日ほど夜に本屋さんでバイトを……。体を動かしながら人と接するのが息抜きになるのと、多少でも定額の収入がある(これでとりあえず家賃はセーフ)というのでかなり精神が安定します。

私自身は毎日規則正しく決まった時間に働く、というのがかなりプレッシャーなのでこの生活ですが、逆に毎日同じペースで動いた方が調子が保てる、自分のペースではダメになる、という人もいるでしょう。
そういう人は会社勤め、ないしはそれに近い形で働いたらいいし、どんな形にせよ自分が一番安心できる働き方を見つけられると平和かな〜と思います。

【ライターの仕事はどうやってもらう?】

私の場合、最初にもらった仕事は大学の先輩からの紹介でした。先輩にライターの仕事をしている人がいて、その先輩から別のライターさんに会わせてもらい、そこからさらにwebメディアの先輩を紹介してもらい、お試しで記事を書かせてもらえることになり……という感じです。

当時はまだ在学中だったのですが、自分でミニコミ誌『食に淫する』を作っており、それを名刺代わりにあちこちばら撒いていたのがよかったのだと思います。

ポートフォリオが何もない状態で「書けます、書きたいです」と言ってもどれくらい書けるか分かりませんし、まずは一冊完成させて「自分はこういう方向性の文章をこういう形で書けます」と示しておくと、頼む側も雰囲気や力がつかみやすいはず……。ひとつのコンテンツとして仕上げることができるというのも強みだと思います。

webメディア(WEZZY)で月一本書評を書かせてもらうところから始まって、その仕事を見た他社の編集さんが声をかけてくれるようになり、同時にミニコミを作っては文学フリマで売るということも続けていたので、イベントで本を買ってくれた編集さんからもお仕事をもらえるようになり、またそこでの仕事を見た編集さんから連絡がきて……というわらしべ長者形式で、その後の仕事が増えていきました。
「○○さんから名前を聞いて」という口コミも多いです。ありがとうございます……!

体調がなかなか安定しなかったり、ペースをつかむのに時間がかかったりで、仕事を自主的に増やすことがちょっと怖く、媒体に営業をかけるのはまだ未経験なのですが、最近は同人誌やZINEのイベントなどにも編集さんが青田刈りに来たりしているので、ミニコミ作りが自分としては営業の代わりになったな〜と思っています。

そして、webでお仕事を続けて一年ほど経ったあたりで「ずっと書いてもらっているし、連載をしてみましょうか」と提案を受けました。ミニコミ制作の過程で「食と性」というテーマが自分の中で根付いていたし、「自分はこれでいきたい」と思っていたので、それを活かしたコラムの連載になりました。
連載を一本持つことで「餅井アンナ=食と性のライター」という認知も深まり、食について、あるいは性についてのお仕事がもらいやすくなった実感があります。


さらに同時期に、タバブックスという出版社(一時期アルバイトをさせてもらっていました)からも「連載してみる?」と声をかけていただき、そこでは「虚弱」と、ミニコミや連載・書評などで隠し軸にしていた「普通から外れることの生きづらさ」をテーマにすることにしました。

この二本の連載で「食」「性」「生きづらさ」という「餅井アンナ」として仕事をする上での三本柱がだいぶしっかりしたな、という感じがします。

トミヤマ先生も授業の際におっしゃっていましたが、テーマがしっかりしていると「この人はこういうライターで」と説明・紹介がしてもらいやすいし、「このテーマの文章を誰かに頼みたい」となったときに、名前をパッと挙げてもらえるようになるのかなと思いました。

また、連載を始めたあたりから紙媒体のお仕事が増え、一本あたりの単価が上がったことで、だいぶ自信と安心をもってライターの仕事ができるようになりました。

【フリーの仕事に興味がありますが、収入面について不安が……】

収入はどうしても不安定になります! なので、なるべく不安にならない・精神が追い詰められない環境を整えた方がいいですね……。

収入をしっかり得たいという場合は、やっぱり会社に入るのが一番いいと思います。フリーは不安定なだけではなく保険と年金も自分で払わないといけないし、ボーナスもありません。私はボーナスをもらったことがないのでボーナスがない悲しみを知らずに済んでいるのですが、でももらえたらすごく嬉しいし、そこからなくなったらすごくつらいだろうな……。

でも人それぞれ何を優先したいかは違うので、それに合わせて働き方も選べばいいと思います。「みんなと同じように稼がなきゃ」と思うと苦しくなるので、「自分が快適に暮らせるぶんを稼ぎたいな」と考えておくとちょっと楽だし、見通しが立ちやすいかも……。
私個人は今そこそこお金がない状態ですが、毎日電車に乗らずに済む権利を買っていると考えればまあいっか〜という感じです。

メインの仕事で稼いで副業として好きな仕事をしている人もたくさんいるし、半々くらいで稼いでいる人もいます。会社員/フリーランスの二択である必要はないです。

実を言うと大学を卒業したとき、私はまだライターの仕事では月一万〜二万円しか稼げていませんでした。それと並行してwebメディアの編集部から業務委託で仕事をもらっており、その収入をメインに、さらに実家からの仕送りでそこそこ慎ましくも安定した暮らしをしていました。ひとつのケースとしてよかったなという生活です。

web編集の仕事はライターの仕事が軌道に乗ってきたかな?というあたりでいろいろあって辞めたのですが、そこから今にかけては、書き仕事がメインの収入です。

先ほどもちょっと書きましたが、それだけでは生活できないし精神も追い詰められるので、今は週二日ほど書店でアルバイトもしています。三万円でも四万円でもいいので毎月確実に手元にくる収入を確保しておくと、安心感が段違いです! 

そして恥ずかしながら、いまだに親のスネをかじらせてもらっています……。今でこそ「ごめんだけど本が出て売れるまで待ってね〜!」みたいに言っていますが、少し前まではかなり罪悪感を抱いていました。
ですが桃山商事の清田隆之さんから「親のことはホワイト金融だと思いなよ」という言葉をかけてもらったこともあり、「実際お金がないんだし、もらっている以上は毎日健やかに楽しく暮らしておいた方が親も仕送りのしがいがあるだろう」と腹をくくれるようになりつつあります。

毎月親から仕送りがもらえるというのは、当たり前ではないしとても恵まれたことだと思っています。東京で暮らせているのはある意味運がいいだけともいえるでしょう。
ただ、仕送りがもらえるとか実家暮らしだとか仕事のコネがあるとか重宝されるスキルがあるとか、個人個人で持っているカードは違っていて、そのカードをいかに上手にためらわずに使うかというのも、けっこう大事なのかもしれないとも思います。
甘えられるところは甘えて、使えるものは使って、その上でよい方向へ行けるように頑張ってみればいいんじゃないかな……と、私自身も自分に言い聞かせながら生活している状態です。
でも仕送り、来年くらいには卒業したいです……。

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長くなってしまいましたが、仕事・生活・お金編でした!
読んでくださった方、また質問をくださった学生さん、ありがとうございます。
なるべく間を空けずに次号を投下します……。


餅井が明るく平和・健康的な暮らしをしつつ、よりよい文章をよりよいペースで書いていくために使わせていただきます。