見出し画像

冬沢こたつの短歌と背景 part.6

自作短歌の紹介・解説記事第6弾です。

前回の記事と同様に、12月に詠んだ短歌から抜粋しました。

なんとなく壁に触れてはいけないと…

なんとなく壁に触れてはいけないと思って暮らす六畳一間

12月は体調も安定せず、家でゴロゴロするばかりの日々だったので、自ずと部屋での生活を詠んだ短歌が多かったです。

こちらはピース又吉のYoutubeチャンネル「渦」を見ながら、ごろごろしていた時にできた短歌。確か又吉が名言を紹介する動画を見てて、自分も何か文章が書きたくなって書いたものだった気がします。(めちゃくちゃ面白いので、渦、おすすめです)

そのまんまなんですけど、なんとなーく薄っすらと壁にはあまり触るべきではないと思ってる気がするんですよね。だからと言って全く触らない訳でもないんですけど、寄りかかりはするし…

もしかしたら部屋に対してもパーソナルスペース的な感覚があるのか、わざわざ触ったりしない場所だからずっと触ったことのない状態にしておきたいのか…この感覚ってなんなんだろうなあと思いながら、わからないまま短歌にしてみました。

炭酸が炭酸でいる間くらい…

炭酸が炭酸でいる間くらい私のことを見ていて欲しい

サイゼのドリンクバーで「炭酸」をテーマにいくつか短歌を作ってみよう、と試みた時の一首です。

炭酸といえば、泡の弾けるイメージ、甘さ、夏のイメージなど、色々使えるけど結構表現が薄くなってしまうモチーフだなあと思っていて。銃口の曲ではよく使うんですけど、あくまで要素として背景の一部くらいの使い方しかしてこなかったんですよね。

「炭酸」ひとつで短歌にするに堪える表現を探したんですがなかなか難しくて、その中でも気に入ってる一首がこちらです。

炭酸の抜けていくスピード感に着目して、サイダーの弾ける夏・恋のイメージとも重ねつつ、ガーリッシュな女の子を想像して書きました。シチュエーションも込みで、女の子の雰囲気が伝わりやすい短歌になったかなあと思います。

いつも心にサイダーガールを…

こぼしたら無数の目玉に睨まれて…

こぼしたら無数の目玉に睨まれて炭酸水が苦手になった

こちらも先述の「炭酸」シリーズの中から一首。

こちらは炭酸についての表現も出尽くした頃「一旦テーブルに実際に炭酸こぼしてみるか」と思い立って、テーブルにぶちまけた炭酸水を観察して作った短歌です。

やってみて初めて気づいたんですけど、平面にこぼした時のうじゃうじゃとした泡、本当に気持ち悪かったです…
こぼしてしまった後ろめたさ(今回はわざとだし少量だしそんな罪悪感もなかったけど)と目玉に睨まれる感覚がリンクしているし、炭酸にあんまり持ったことのないイメージだったので、自分で作っておきながらヒョエ〜となりました。

いつだって電話口では酔っている…

いつだって電話口では酔っている君の禁酒は僕が阻止する

実景っちゃあ実景の一首。「短歌な大忘年会2021 in the zine~うたげ」に提出させていただいたうちの一つです。

こちらの企画と「芸人短歌」に影響を受け、「バンドマン短歌」の企画を立ち上げました。見習いたい行動力!自分の短歌が好きな歌人の作品に並んで本になるというワクワク、すごく楽しませていただきました。

友達が突然電話をかけてきたと思うと毎度ベロベロで、その子が家に着くまでおしゃべりに付き合わされる、っていうくだりがよくあるですけど、そういう時間がすごく楽しくて書いた短歌です。
世話焼きな方なので、酒飲んでる人の相手するは基本的に好きです。

余談ですが、その友達から「スーパーに寄ったら鮮魚コーナーに雨穴の粘土みたいなもの(魚の内臓)売ってる」って電話もらった時、ありえないくらい盛り上がりました。

君の声アラームにして過ごしたい…

君の声アラームにして過ごしたい忘れたくない嫌になりたい

「好きな曲を朝のアラームしてその曲のことが嫌いになった」という経験は結構あるあるだと思うんですが、昔アラームにしていた曲を久々に聞いた時のあのいろんな感覚がフラッシュバックする瞬間、たまらなく好きなんですよね。

その時期にしか聞いていなかった曲、ってすごい力をもってて、いつでもその時期にタイムスリップできるような、そういう思い出の旅が好きで音楽が好きなところも少なからずあります。

ちなみに、ナイトフィクションのCメロ(―地図を書いた。「あなたとこの冬へ、また戻ってこられたら幸せでしょう?」)も同じ発送で書いた歌詞で、この曲を聴いている「この冬」に戻ってくるための「地図」としてのこの曲、ということなんですが、
本当は時期問わずずーっと聴き続けてもらって、思い出じゃなく生活になりたいですよね…人間関係とかもそうだけど…

「忘れたくない」と「嫌いになりたい」って相反するけど失恋で同時に抱える感情だと思ってて、それがピタッとハマったのがアラームでした。

「君の声が好きすぎて着メロにしたい」みたいなのはよくあるけど、その果てを見越したこの短歌みたいな表現はあんまりない気がするなあと思ってます。いずれ銃口の曲にも登場するかも。

関連記事

初回の記事と前回の記事はこちらです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?