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『ヒーリングっど♡プリキュア』細かいネタバレなし総括!

地球を蝕むビョーゲンズに立ち向かい、地球をお手当てする。
【医者】をテーマとしたプリキュアシリーズ17作目『ヒーリングっど♡プリキュア(ヒープリ)』が、ついに最終回を迎えてしまいました……!

いやあ、いい最終回でした。
敵の親玉であるキングビョーゲンを最終回前話で浄化(やっつけること)し、最終回は、プリキュアの変身パートナーであるヒーリングアニマルが暮らす地を訪れる後日談回かと思いきや、そうは上手くまとまらず……。
この先もビョーゲンズとの戦いは続いていくのだと予感させるエンディングでした。今の世情とリンクしますね。

今作のシリーズ構成・脚本は【香村純子さん】。
スーパー戦隊シリーズの『ジュウオウジャー』や『ルパンレンジャーVSパトレンジャー(ルパパト)』で知られています。
ルパパト好きの私は「見るしかない!」と息巻いていたのですが、初回を見逃してから見る気が失せてしまい……しかし幸か不幸か、コロナの影響で制作が中断し、初回から贅沢に再放送してくれたことで追いつけました。

そして私はプリキュアを見るのが、なんと『ふたりはプリキュアSplashStar』以来、14年ぶり!
「今のプリキュアってこんな感じなんだ~」という発見もあり、大人が見てもとても楽しめる内容だったのと、3月20日公開の映画がそろそろ上映終了するタイミングで、勝手に総括します!
ネタバレは極力しませんのでご安心ください。

■作品概要と評価

<作品概要>
タイトル      :ヒーリングっど♡プリキュア
原作        :東堂いづみ
シリーズディレクター:池田洋子
シリーズ構成    :香村純子
キャラクターデザイン:山岡直子
話数        :全45話
アニメーション製作 :東映アニメーション
公式HP      :http://www.toei-anim.co.jp/tv/healingood_precure/

<評価>
ストーリー ★★★★☆
映像美   ★★★★
演出    ★★★☆
音楽    ★★★★
エンタメ性 ★★★★

総合    ★★★★

ストーリーがとてもよかったです。
病気と闘う以上、簡単に事は進まないという現実を突きつけられました。
星5にしなかったのは、彼女たちがプリキュアである必然性があまり感じられなかった、というところが理由です。
花寺のどかがキュアグレースであるというところの意味が強かったからこそ、”ちゆ”や“ひなた”にも何か意味があってほしかったなと思います。

演出が少し低いのは、変身映像と必殺技の使いまわしが顕著だったのと、回によって戦闘シーンのカメラワークにムラがあった点が理由です。
変身や必殺技の使いまわしはよくあるのでそこまで気にしていなかったのですが、ヒーリングアニマルの“ラテ”の額の色が、何回か状況に合っておらず……。細かい部分ですが、丁寧に作ってほしかったなと思います。

全体的には、女児向けアニメならではのキラキラした作画、現代の価値観を取り入れた脚本、玩具展開を視野に入れたアイテムなど、すべての要素が上手くまとまっており、非常に満足度の高いアニメでした。
特に、現代の価値観を取り入れ、親子それぞれへの教育としても優れた脚本は本当に素晴らしいと思います。


以下はこまごまとした感想です。

■お医者さんモチーフの可愛いコスチューム

そもそも、プリキュアのセンターカラーはピンクということに驚き!
『ふたりはプリキュア』世代なので完全に白と黒の頭でいましたが、私がプリキュアから離れた『Yes!プリキュア5』からはピンクなんですね。
スーパー戦隊でいうところの【レッド】なのでしょう。
ちなみに今放送中の『トロピカル~ジュ!プリキュア』のセンターは白、同じく現在放送中の『機界戦隊ゼンカイジャー』のセンターも白。白ブームなのか……?

話を戻しまして、コスチュームはお医者さんが着る白衣をモチーフにしたデザイン。
変身時も、白衣をバサッと羽織る描写があります。
手袋は、今までは肘上まであるアームカバータイプが多かったですが、今作はショートグローブ。オペ時のゴム手袋を意識したのでしょうか?
メイン3人並んだ時の統一感と、それぞれのパワー(花・水・光)が上手く表現されていて可愛いなと思いました。
ライダーは、個々のパワーを衣装やアイテムで表現していることが多い気がします。

そして強化アイテムには、注射器をモチーフにした【ヒーリングっどアロー】が登場。

世界観に沿ったデザインと商品展開は、さすがの東映さんとバンダイさんです。
(普段は戦隊とライダーでお世話になってます!)

■「病気とは分かり合えない」シナリオ展開

ヒープリの大きな肝は【敵が病原体・病原菌】であることです。
戦隊やライダーを含め、過去のヒーローものでは、敵を説得して共存・和解という描写は多々ありました。
【子供向け番組】である以上、

・尊敬されるような良いことをする
・みんなと仲良くする
・どんなときも諦めちゃいけない

という、道徳心における模範描写をする必要が生じるからです。
女児向けヒーローの先駆者である『美少女戦士セーラームーン』の90年代アニメはその最たる例で、敵のあやかし四姉妹を改心させ、人間として地球で暮らす道を与えているなどしてきました。

しかし、今回の敵は【病原菌】。
病気にかかると悲しい。苦しい。つらい。だから病気になりたくない。
全ての生き物がそう思うことでしょう。
だからヒープリでは、プリキュアは地球をお手当てするお医者さんとして、敵のビョーゲンズを徹底的に浄化します。少しでもビョーゲンが残っていると、そこからまた蝕まれてしまうからです。
薬などで症状を緩和し、病気と共に生きていくことはできても、本来であれば病気にかかっていない状態が一番
生き物からしたら、病気とは分かり合えない存在なのです。

■「自分の気持ちに素直になろう」令和の価値観

終盤で、敵幹部のダルイゼンがキュアグレースに「助けてくれ」と命乞いするシーンがあります。
グレースは幼少期の頃、ダルイゼンが原因で病気にかかってしまい、ずっと苦しんできた過去がありました。
今までのヒーローだったら、過去のことは水に流して手を取り合う道を歩んでいたことでしょう。でもヒープリは違います。
グレースは、ダルイゼンを突き放すのです。

これは学校などでのいじめ問題に対する風刺を盛り込んでいると私は思っています。
いじめっ子が仲直りを申し出てきて、先生も「これで仲直り」と嬉しそうに言ってきても、いじめられた子の中にはモヤモヤした感情が残るのと同じ状況なのではないかと。
グレースの場合は、幼少期のことがまだ心に残っていたから、ダルイゼンを赦せず、突き放しました。
そして、グレースのパートナーであるラビリンはそれを良しとします。
こっちがどんな思いをしたか分からない人から「ここで仲直りしないなんて冷たい」と言われる筋合いは無いんですよね。
自分の気持ちに素直に、正直になるかの重要性を説くヒープリ、推せます。

■「すこやかに生きたい」

ヒープリ最大のテーマです。
単に「生きたい」だったら私はヒープリに失望していたかもしれません。
「【すこやかに】生きたい」だから良いのです。

私がメンタルをやられた時期、死にたいまではいかなかったのですが、とにかく消えたくて消えたくて、「生きたい」とは思えない状態でした。
故に、単に「生きたい」がテーマだったら、あの時の自分ですら当てはまらないのだから、きっと共感できない人も大勢いるだろうと思ったのです。
でも「【すこやかに】生きたい」であれば、悩みや痛み、苦しみのない環境を願い、共感できる人も増えるのではないかと。

先ほどの【自分の気持ちに素直に】もそうですが、ヒープリは大勢が共感し救われる言葉の選び方が上手いなと思います。

■最後に

ヒープリ、再放送から見始めて、最終回まで本当に楽しめました。
主人公がなかなかに自己犠牲的であったり、敵の女幹部は忠誠心がありすぎてちょっと不憫だったり、という香村脚本節も所々にちりばめられていて、香村さん目当てで見始めた初期の私も満足しております。

一番の満足ポイントは【子供向け作品】のイメージがガラッと変わったというのが大きいですね。
「あ、ここで仲良くしないんだ」という展開は衝撃でした。
誰かの我慢や犠牲を礎にした調和や協調は真とは言えず、きちんと納得しないと生まれないのだなと感じました。
そして、見ている子供たちへ、親御さんのフォローが大事になってくるのではないかとも思います。

これからもすこやかに生きよう!

■余談:久々のプリキュア驚きポイント

・変身アイテムが少ない
 エレメントボトルも12しかないことに驚き。仮面ライダーのアイテム数に慣れ過ぎたからでしょうか。
 『ふたりはプリキュア』のときは肉弾戦が基本でしたし、増えた方ではありますけどね。
・サブライター脚本の回が多い(45回中26回)
 戦隊では異例だった『騎士竜戦隊リュウソウジャー』並に多くて驚きました。(48回中21回)
 一応、香村さんは脚本ではなく【シリーズ構成】ですので、一概に比較はできませんが。
・EDダンスのアイテムが本編に一切絡まない
 そもそもダンスでアイテムが出てくることに驚き。
 これ↓を使って変身したり、攻撃したりしないんですか!?

・左上に表示される時計は出し入れできる
 非表示にするやり方があると知らず「邪魔だな~」と思いながら見ていました。
・やっぱり動物の力を借りて変身する
 変わっていなくて安心しました。

プリキュアっていいな!

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