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海外投資で「負ける理由」が分かる!行動心理の6段階

海外投資で負ける個人投資家が後を絶たない。

商品の特徴を理解できているし、長期投資や分散投資のメリットもわかっている。海外経験もあるし、勉強と情報収集も欠かさない。

人一倍努力しているはずなのに、やればやるほど負け込む。
自分には才能も運もないとお悩みの方も多いのではないだろうか。

実のところ、ほとんどのケースでは、
努力の方向が間違っているわけでも、努力が足りないわけでもない。
気づかないうちに心のワナにかかっているに過ぎない。

そこで本日は、海外投資で負ける人が陥りやすい心のワナを、
行動心理学を用いて紹介する。

読み進めていくと、自分のことを指摘されていると図星になるはずだ。

無意識にやっていた悪いクセに気づき、反省する。
これだけで、パフォーマンスは劇的に上がる。

海外投資で失敗したくない初心者から、本気で成果を出したい中級者まで、
本記事をとことん役立ててほしい。

では、さっそく見ていこう。

1. 人は、利益を得る快楽よりも損失による苦痛を大きく感じてしまう生き物だ。

ほんの少し株価が上がって、含み益が出た途端に、利益の目減りを恐れて、すぐに確定売りしてしまったことはないだろうか。

逆に、株価が大きく下落して、反発しそうにもないのに、損切りをためらって、その株を塩漬けにしてしまったことはないだろうか。

投資したことがある人なら、誰もが身に覚えがあるはずだ。

なぜだろうか?

それは、人間が本質的に損失を避けたがることに起因する。
「あまり儲からなくてもいいから絶対に損をしたくない」という心理が、「早すぎる利益確定」と「遅すぎる損失確定」を招くのだ。

ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授ら行なった実験によれば、損をする悲しみの大きさは、儲かる喜びに比べて約2.5倍大きいという。

行動心理学の専門用語では、これを「損失回避性」と表現する。

つまり、いくら正しい投資対象を、正しいタイミングで選ぶことができたとしても、この心のワナに気づかないかぎり、人は「1」儲けて「2.5」損する取引を繰り返してしまう。

しかし、分かっていても、心の動きをただちに変えるのは難しい。

「損失回避性」の心のワナにハマりそうだと思ったら、すぐに手を止めて席を離れることだ。物理的に取引できない状態にするのが何よりも効果的である。

「何%上がったら利益確定」、「何%下がったら損失確定」とあらかじめルールを決めておくのも一つの手だ。一律に同じルールを適用すると、利益の取りこぼしも出てしまうが、際限なく塩漬け株を増やして、損を膨らませるのに比べれば、遥かによい成果をもたらす。


2. 人は、損得の数値が大きくなるほど小さな変化に対する感情が鈍ってしまう生き物だ。

最初は数千円の利益が出ればとても嬉しかったのに、そのうち数万円の利益が出ないと満足できなくなったことはないだろうか。

逆に、数千円の損失が出ればとても悔しがったのに、そのうち数万円の損失が出てもあまり不安に思わなくなったことはないだろうか。

プラスの感情もマイナスの感情も最初がピーク。金額が大きくなるにつれて、損得に対する感情は薄れていく。

大きな利益を出せば「もっともっと儲けたい」、大きく損失を被っても「まだまだ一発逆転できる」いう心理が、次第にハイリスクで破滅的な取引へと駆り立てるのだ。

行動心理学の専門用語では、このことを「感応度逓減性」と表現する。

人は無意識に取引金額を増やし、リスクも次第に気にならなくなる。最初に決めたはずの投資戦略も資金管理ルールも、いつしか守られなくなる。

「感応度逓減性」の心のワナを防ぐには、定期的に、利回り率ではなく絶対金額で運用実績を見直すことが必要だ。

そのときに、絶対金額が身近な消費財(食品、家電、自家用車など)の何倍の損益になったかを試算することをオススメする。鈍くなったお金に対する感情に、一気に生活の実感をもたせることができる。


3. 人は、絶対値よりも自分が設定した基準からの変化の大きさで評価してしまう生き物だ。

注目する銘柄の過去の高値水準を忘れられず、業績が下方修正されたり相場が下落基調に転じても、いずれ上がると思って売りに踏み切れず、株価がそのまま大きく下がってしまったことはないだろうか。

逆に、注目する銘柄の過去の安値水準を忘れられず、業績が上方修正されたり相場が上昇基調に転じているのに、またすぐ下げると思って買いに踏み切れず、株価がそのまま上がってしまったことはないだろうか。

なぜそんなことが起こるのだろう?

それは、人が絶対的な金額ではなく、自分が設定した基準からいくら変化したかによって、価値を評価してしまうためだ。

たとえば、
定価120円の果物に20円引きシールが貼ってあるのと、
定価100円の果物がそのまま定価で売られているのとでは、
多くの人が前者に割安感を覚えるはずだ。

行動心理学では、これを「参照点依存性」または「アンカリング」と呼ぶ。

投資の世界では、
「高値覚え」したために、売り時を逃して損失を抱えたり、
「安値覚え」したために、買い時を逃して収益機会を失う形で現れる。

価格の目安を覚えておくこと自体が問題ではない。問題は、環境が変化して絶対値が変わっているのに、昔の価格が今も通用すると思い込むことだ。

市場は常に変わり続ける。

「参照点依存性」「アンカリング」を防ぐには、昔の価格に自分の心が反応したと感じたら、今の価格との違いをただちに自問しよう。

□ 株式市場全体の指標は昔と比べて上がったか、それとも下がったか?
□ 業界・業種全体の景気は昔よりも良さそうか、それとも悪そうか?
□ 企業の利益や自己資本は昔と比べて増えたか、それとも減ったか?

これを意識するだけで、あやまった判断基準による取引を確実に減らせる。


4. 人は、現実を過小評価したり自分の認めたくない情報を無視してしまう生き物だ。

含み損の株式を保有しているときに、明らかに損切りすべき局面にもかかわらず、都合の良いニュースだけを読み漁ったり、インターネット掲示板で自分と同じ立場の人を探して同調を求めようとしたことはないだろうか。

危機的な状況にもかかわらず、都合の悪い情報を無視して、「自分だけは大丈夫」とか「みんなと同じだから、まだまだ大丈夫」と考える心理が、損切りのタイミングを失わせるのだ。

この心のワナは、災害管理や危機管理の領域で「正常性バイアス」と呼ばれる。地震、洪水、火災などに直面した際、自分の身を守るために迅速に行動できる人が驚くほど少ないことが、明らかになっている。

投資の世界では、相場が大きく下落したときや、企業の不祥事が公開された時に、多くの個人投資家が逃げ遅れるのが最たる例だ。

本人は正しい情報に基づいて正しい判断をしていると疑わないのが、これのやっかいなところだ。正常と信じたい気持ちが強すぎるがゆえに、あいまいで非合理的なわずかな情報であっても、偏見を強化させてしまう。

「正常性バイアス」を減らすために必要なのは、ずばり「瞬発力」

マズイかもしれないと少しでも感じたら、一旦手を引くのだ。たしかに、これまでの調べた努力が水の泡になるかもしれない。心配しすぎで収益機会を失うかもしれない。しかし、取り返しのつかない大失敗に比べれば、遥かにマシな選択ではないだろうか。

「買い」と「持ち」の理由が通用しなくなるほど、大きく環境が変化したら、ただちに「売り」一択だ


5. 人は、自分の知識や成功体験を過大評価してしまう生き物だ。

投資で大きな失敗をした体験よりも、少しでも成功した体験が強く記憶に残っている人は多い。

そして、損失が出たときは原因分析をするけれど、利益が出たときは原因分析をしない人はもっと多いのではないだろうか。

自分の力不足を反省せずに嫌なことはさらりと忘れ、たまたま運が良かったのを実力だと思い込む。典型的な「自信過剰バイアス」だ。

「自信過剰バイアス」にとらわれると、自分の分析や投資判断に自信を持ちすぎて、明確な根拠がないのに、充分な検討をしないままに売買してしまう。

自分が選んだ商品は他の商品よりも早く高く値上がりすると思い込んだり、想定外の悪いことは起こらないと、たかをくくったりしてしまう。その結果、より大きな値上がりが期待できる商品への投資機会を逃し、保有する商品も売却が遅れて損失が膨らむ。

自信を持ってはいけないと言いたいわけではない。
「自分はこれで成功したから今回も大丈夫だ」という根拠のない自信が危険なのである。
思いがけない失敗はすべてここから始まると言っても過言ではない。

米国の実証研究では、女性よりも男性が自信過剰に陥りやすいとされている。男性の個人投資家は、特にご注意いただきたい。

為替や株価は、ひとりの投資家の知識・経験レベルで決まるものではなく、世界の政治経済の動き、企業間の競争、機関投資家の巨額取引など、さまざまな要素を受けて決められる。

だから「自信過剰バイアス」を解くには、統計データや決算資料など、客観的な情報に基づいて意思決定することを習慣づけると良い。


6. 人は、好みと関係なく印象深いものや目立つものを記憶に残してしまう生き物だ。

個別の企業に投資するとき、大きな値動きを見せた銘柄、最近ニュースになった銘柄、そして新規のIPO銘柄のような、目立つ人気銘柄をとりあえず調べたことはないだろうか。

地味な目立たない銘柄はなんとなく不安で、検討を後回しにしたことはないだろうか。

少数派にならないと投資では勝てないのに、毎回人気株に飛びついては「高値掴み」する。人気が落ちて株価が崩れると、含み損を抱えたまま、また新しい人気株に飛びつく。気がつくと、手元には「塩漬け株」だけが大量に残っている。

戦略がない初心者にありがちな失敗だが、実はこの裏にも心のワナが潜んでいる。
それは、好みと関係なく印象深いものや目立つものを記憶に残してしまうと習性だ。

似たようなものや同じパターンで情報が並んでいる中で、1つだけ特徴的なものがあると「印象」に残りやすい。

これを最初の発見したのは、ドイツの心理学者で小児科医のヘドウィク・フォン・レストルフ氏。その名にちなんで「フォン・レストルフ効果」と呼ばれる。(日本語では「孤立効果」とも呼ばれる。)

この「印象」が曲者で、根拠が乏しいくせに判断の邪魔をする。

たとえば、世界的に有名なIT企業が新サービスを発表して、株価も上がり始めたとする。強い印象が残っているせいで、早く投資しないとチャンスを逃してしまう気持ちになり、ロクに調べもせずに高値掴みする。財務諸表を見れば、創業以来赤字続きで、経営方針もコロコロと変わって不安定だとすぐ気づくのにそれを怠ってしまう。

こんなケースは枚挙にいとまがない。

大企業で買っている人が多いからとか、有名なハイテク企業だからという理由で投資している人は、特に注意しなければならない。

「1年で10倍?!海外成長株を選ぶ上で必ず抑えておくべき基本の4原則」に書いたとおり、投資銘柄選びはプロとの戦いを避け、ひたすら地味であるべきだ。


まとめ

投資対象選びから売買のタイミングまで、投資は「意思決定」の繰り返し。
心のワナを回避して、合理的な判断ができる人が成功する。

ここでお伝えした行動心理学の6段階は、投資経験のある人なら誰しもが感じたことのある不安や動揺を、科学的に分析している。

海外投資で「負ける理由」に心のワナが深く影響しているとお分かりいただけたはずだ。

最後にそれぞれの要点をもう一度確認しておこう。

1.「損失回避性」
①人は、利益を得る快楽よりも損失による苦痛を大きく感じがち。
②すぐ席を離れて、物理的に取引できない状態にするのが何よりも効果的。

2.「感応度逓減性」
①人は、損得の数値が大きくなるほど小さな変化に対する感情が鈍りがち。
②定期的に、利回り率ではなく絶対金額で運用実績を見直すことが必要。

3.「参照点依存性」「アンカリング」
①人は、絶対値よりも自分が設定した基準からの変化の大小で評価しがち。
②昔の価格に自分の心が反応したら、今の価格との違いを自問しよう。

4.「正常性バイアス」
①人は、現実を過小評価したり自分の認めたくない情報を無視しがち。
②「マズイかも」と少しでも感じたら、一旦手を引く「瞬発力」が大切。

5.「自信過剰バイアス」
①人は、自分の知識や成功体験を過大評価してしがち。
②統計データや決算資料など客観的情報に基づく意思決定を習慣づけよう。

6.「フォン・レストルフ効果」「孤立効果」
①人は、好みと関係なく印象深いものや目立つものを記憶に残しがち。
②投資銘柄選びはプロとの戦いを避け、ひたすら地味であるべき。

※1~3は、まとめて「プロスペクト理論」と呼ばれ、
代表的な意思決定モデルとして知られる。


以上、
本記事では、海外投資で「負ける理由」を行動心理学の視点から解説した。

心のワナに陥った自分を真正面から捉えて、
ぜひ行動を見直して、成果につなげてほしい。

ここまでお読みいただいたあなたなら、必ずできるはずだ。

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