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4:人類、太るために進化した説

人類の遺伝子は太るために特化しているので、ぽっちゃりがダイエットに成功するのは、もはや偉業と言っても過言ではないでしょう。

例えば、ヘルシーな食事に切り替えたぽっちゃりは、ほぼ必ずこの感覚を味わいます。
味の薄い、蒸した鶏のささみを箸で持ち上げ、ひと口食べたとき。

「物足りない!!!」

という、人生の喜びそのものを失ったような圧倒的な侘しさを。

当然です。今まで毎日のように食べていた高カロリーな食べ物を、いきなり低カロリーなものに差し替えられてしまったのですから。

これは謂わば圧政です。体を構成する全細胞たちの栄養という名の給料を半分にするような非道な仕打ちなのです。

当然ながら、給料を半分にされた体の中の細胞たちは激怒するでしょう。

「脂っこいものを食わせろ!!!」
「甘いものを食わせろ!!!」
「量が足りないもっと寄越せ!!!」

37兆2000億個の細胞たちの盛大なシュプレヒコールを無視して「ごちそうさま」だなんて、まともなぽっちゃりにできるわけがありません。

こうしてぽっちゃりの体は全力で痩せることに抵抗し、今まで通りの食事を要求することで、何が何でも今の体重をキープ、もしくはさらに太ろうとするのです。

そもそも人間の体とは太るために進化し、太るために生きている説をわたしは推しています。

いかにして脂肪を溜め込むか。
いかにして脂肪を落ちにくくするか。

700万年前に最古の原始人が発生してからというもの、人類の生活は常に『飢え』と共にあり、遺伝子レベルでぽっちゃりになろうとしなくては生き延びることができませんでした。

100年ほど前、飽食の時代が訪れるまでは。

つまりダイエットというのは、700万年にも渡ってブラッシュアップされてきた太るために最適化されたぽっちゃり遺伝子に、気合いと根性とほんの少しのノウハウを武器に真っ向から喧嘩を売っているようなものなのです。

「え、でもどれだけ食べても太らない人はいるよ?」と言いたい人もいるでしょう。

確かにそういう人はいます。そういう人がここ100年のあいだに新たに進化して生まれた人類なのか、もしくははるか昔にとっくに飢えて淘汰されてしまった人類の先祖返りなのかはわかりませんが、そんな話をしたところでぽっちゃりは『そういう人』にはなれないのです。

『そういう人』になれなかったぽっちゃりは、痩せたければ気合いと根性とほんの少しのノウハウを育てることに尽力するしかないのです。

何が何でも体重を減らすまいと抵抗する37兆2000億個の細胞たちのわめき声に耳を貸さず、それでも圧政を続け、物足りない食事と喉が焼けるような飢えに耐えては有酸素運動と筋トレでさらに追い打ちをかける。

そんな苦行の果てにしか痩せた体は手に入らないのですから。

ゆえにわたしは、ダイエットに成功したぽっちゃりを偉大だと思うのです。

人間の体は変化を嫌います。
現状維持が大好きなのです。
体温も、体重も、免疫も、ほとんどのことは今のままでキープしようとするのです。
そう、キープ。
これがホメオスタシスと呼ばれる、体の外から与えられる刺激に対して体内の機能を一定に保とうとする機能です。

でも、せっかく体重を一定に保ってくれるのなら、痩せた状態でキープしてほしいものですよね。

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