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古典ハリウッド映画

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2021年11月の記事一覧

『その男を逃すな』

監督:ジョン・ベリー

つまらなくはないけど一辺倒すぎて少し飽きた。情けない主人公の哀愁を愛おしく眺める映画なのかもしれないが、普通に乱暴すぎるし嫌になった。ペグが好きになってしまった理由も全然分からんけど、信じきれなかった結果としてのあのラストは確かに主人公を哀れにも思う。真っ暗な中で車の黄色がやたら映えているのが切ない。何故プールに行くのかとか何故七面鳥を食べさせたがるのか、とかよくよく考える

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『アリゾナのバロン』

監督:サミュエル・フラー

フラー二作目だがまあ面白い。ストーリーが映画的だししっかり盛り上がるところを分かってる。キスシーンのときに盛大に邪魔されるの『大雷雨』でもあったけどめちゃくちゃ面白いんだよなこれ。愛から憎しみへの情動が同一ショットの中で一瞬で切り替わる感じ。雨に始まって雨で終わるのもきちっとしている。唐突な殴り合いも容赦なくていい。物語自体がマニフェスト・ディスティニーと被るのだが、そ

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『五本の指』

監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ

全編面白すぎる。隙がない。史実を舞台にしてこれだけサスペンスを作れる監督の手腕に頭が上がらない。スパイの話は途中でこんがらがることも多いが、この映画はなんとわかりやすいのだろうか。やはり中盤のバレる件が本当にハラハラ。予想外の出来事が起こり、継続するサスペンス、それに付随するサスペンスが映画を加速させる。アンナとのロマンスもオシャレやなーと思っていたらまさかの

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『他人の家』

監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ

おもしれー。この監督のいいところは会話。小気味良いし、みんなかっこいい。音楽的。バーの主人なんてちょっとしか出てこないのにおしゃれやなあ。「タバコ禁止なんだ」と言いながら差し出すところ。ファム・ファタール的なヒロインも魅力的。初めて家を訪れたときの、コートを脱ぐことによる意思表示の艶やかさ。階段を登ること→回想シーンあるいはマックスを突き落とすためであり、その

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『私の殺した男』

監督:エルンスト・ルビッチ

中盤寝てしまったが、なんだかとてもいい映画だったんじゃないかという気がしている。ドアの開閉はいつものルビッチ節だし、いまいち盛り上がりきらないのもルビッチなんだが、『天使』のような省略がラスト効いている。カメラはピアノの鍵を開ける彼女を捉えながらも、あくまで老夫婦を中心に据える。そしてバイオリンとピアノの音が重なる。老夫婦の幸せそうな顔を映しながらも、一生償いきれない

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『拳銃貸します』

監督:フランク・タトル

面白かった。『復讐は俺に任せろ』といい、恋愛に発展しない男女関係ノワールは好き。アラン・ラッドが頬にキスされて動揺するの可愛い。階段や橋を使った上下の動きも楽しい。撃たないと約束したのに殺してしまっているのは誠実じゃないと思うのだが。

『ルビイ』

監督:キング・ヴィダー

沼地に囚われ続ける女は、男が築き上げた農園に水を侵食させることであえて沼地を誕生させ、復讐する。常に抱き上げられていた女が沼に沈んだ男の死体を抱き上げるラストが美しい。ただ中盤まであまりにノロかった。地方のオヤジたちのノリも『大雷雨』ぐらいまで振り切ってくれるならいいが、活劇が足りていなかった。