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弱くて強い、キャンディと共に

そばかす なんてっ きにしないわっ
はなぺちゃ だってだって おっきっにっいっりっ

小学生の頃、母親に読むのを許された漫画は、世界・日本の偉人シリーズとキャンディ・キャンディだった。

『キャンディ・キャンディ』
私の同世代である20代は、まず知らない。

以前、観に行った演劇で「昭和40年代生まれの看護婦はね、みんなキャンディ・キャンディを読んで看護婦を目指すようになったのよ」というセリフがあった。

このセリフの通り、『キャンディ・キャンディ』は昔、アニメにもなった漫画で、孤児院育ちの主人公”キャンディ”が数々の不遇を乗り越えて、立派な看護師として活躍するというお話。(私が読んでいたのは小学生の頃なので、正直うろ覚え。なにか違ったらごめんなさい)

母も昭和40年代の生まれ。看護師ではないけれど、すっかりページの変色した『キャンディ・キャンディ』を全巻揃えて、大切に持っていた。何年ものなのかはわからない。

孤児として孤児院で育った、主人公キャンディ。
お金持ちの家に引き取られたと思いきや、家の面々からいじめられ、優しく支えてくれる王子様のような存在が現れ、両思いになったと思いきや、落馬事故で目の前で彼が死んでしまう。
その後もなんやかんやと、いいこともあるけれど、”不遇”としか言いようのないことが起きていく。

けれど、キャンディは、その不遇を前に涙することはあっても、ちゃんと立ち直って前を向く。度重なる不遇にも不幸にもめげずに、素直であり続け、その笑顔で周りを元気付けていく。

「こんな古い漫画、やだな」
同世代の友人が皆”ちゃお”を読んでいるのを横目に、そんなふうに思っていた私だったけれど。キャンディのその真っ直ぐな姿に、どんどんひき込まれていった。

キャンディの良さは、「素直で、どんなことにでもめげない」。
でも、”めげない”と言ったって、キャンディは落ち込まないとか悲しまないとか、負の感情から遠いところにいたわけじゃない。

辛いときは、泣く。落ち込むときは、落ち込む。
「おチビちゃん、笑った顔の方がかわいいよ」って言葉に慰められたりもしながらも、でも、こらえきれずに涙を流すときだってある。

それだけ、キャンディの不遇や不幸が大きいということでもあるけれど。
キャンディは、自分の感情というものに、素直だったと記憶している。(記憶違いだったらごめんなさい)

そして、いろんな人の支えがあって、不遇を乗り越えていった。
キャンディは、ひとりっきりで耐えていたわけじゃなかった。そこまでの”強さは”なかったと思う。

悲惨すぎる状況を前にして、”ちゃんと悲しんで、落ち込んで、涙して”、そうしてそこから”戻って前に進んでいく”。

ちゃんと弱くて、でも強い。

あたたかい周りの人たちに支えられながら、キャンディは真っ直ぐに歩いていたのだ。

最近、ふと思った。

「私の理想の人は、キャンディだ」

幼い頃ふれたものの影響度は、なかなかに強いらしい。
幼少期に夢中になったセーラームーンの月野うさぎも、そんなキャンディと同じ気質がある。

ちゃんと弱くて、強い。
自分の感情にも素直で、人に優しい。

いろんな人の支えの中で、生きていく。
誰かと笑い合って、生きていく。

泣いたり落ち込んだりもするけれど。
負の感情を受け止めながら、なんだかんだで前を向いて、生きていく。

そんな人間や生き方が、私の理想なんだ。

今の私がキャンディやうさぎみたいになれているかは、わからない。

でも、私も、ちゃんと落ち込むし、よく泣く。
「こんなの無理だよう」って弱音だって、人に吐いちゃったりする。
自分で持ちきれない感情は、しょっちゅう人に持ってもらっちゃう。

そうして、また、なんだかんだで前を向いている。
ちゃんと、歩きはじめる。逃げずに、歩きはじめる。

そんな姿勢でいられるのは、いつだって、支えてくれるあたたかい人たちが周りにいるから。
困ったときにいろんな感情という荷物を持ってくれたり、その整理を手伝ってくれる人たちが周りにいるから。

もしかしたら、”ちゃんと弱い”をなしに、”強い”ばっかり意識しちゃっている人がいるかもしれない。

そんな人には、大丈夫だよって言いたい。

”ちゃんと弱くて、強い” そんな矛盾は、成り立つんだ。
泣いても落ち込んでも、弱音吐いてもいいんだよ。

どうしようもなく嫌な奴も確かにいるけれど、でもあったかい人たちだって、たくさんたくさんいる。重い荷物を持ってくれる人は、必ずいる。

”ちゃんと弱くて、強い”の先には、あたたかい人たちがきっといる。
さらにその先には、真っ直ぐ歩きはじめる自分がいる。キャンディのように。


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