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ダンスパーティ、ミラーボール、立ちすくむ私たち

 昨夜、生まれて初めて、ダンスパーティに参加した。

ダンスパーティといっても、住んでいる学生寮の同じフロアの仲間が企画したもので、その子が先輩からもらったというミラーボールを有効活用するべく行われたものだ。(彼女の先輩がなぜミラーボールを持っていたかは不明だ)

普段、生活感で溢れた共同キッチンの片隅に置かれているミラーボールは、明らかに場違いで、寂しげにただの銀色の球体として存在していた。しかし、昨日は、子気味良い賑やかな音楽のもと、存分に輝いて見えた。会場は同じ、食材や調理器具が散乱する共同キッチンであったから、やっぱり、ちょっと奇妙な光景ではあったけれど。

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音楽が鳴り響き、ミラーボールがまわり、間接照明なども雰囲気ありげに光っている。「さあ、踊って」といわんばかりの空気の中、我々5人は立ち尽くしていた。

踊り方が、わからない。

大きな偏見でもって言ってしまうと、帰国子女かハーフか、90年代バブルを大いに謳歌した方々でもなければ、いきなり踊り出すことってなかなかに無理なことではないか。だってやったことないもの。カラオケで手拍子したり腕を大きく振るくらいが限界だって。

たぶん、大勢が踊っている場所だったら、適当に体を動かしたりできるのかもしれない。でも残念ながら、会場にはたったの5人しかおらず、皆ダンス文化に触れたことはない。この状況で、誰が音楽にのって、軽快に身体を動かせるだろうか。そんな勇気、少なくとも私にはない(し、他の人もなかったから、皆立ち尽くしていたのだろう)。

友人の中国人留学生が見かねて「ホーキーポーキー」という、キャンプファイヤーでよくやるらしい踊りを教えてくれ、皆で踊った。非常に助かったし盛り上がった。

その後もやっぱりクラブのようなダンスを楽しむことなく時は流れ、空気が冷めつつあったところに、一人の救世主はやってきた。寮内随一のムードメーカー。彼女はハーフで、高校まで海外で過ごしていたために、ダンスが日常的なものになっていた。

彼女の明るさとパワーはすごい。瞬く間に空気をがらりと変え、皆をクラブの世界に引き込んだ。「踊り方がわからないから踊れない」と嘆く私たちの手本となり、手や腰や首を動かし音楽にのってみせてくれ、次第に「あ、本当に適当に動けばいいんだ」と気づかせてくれた。

それからは本当に楽しいひとときとなった。ダンス未経験だからこその勢い任せの奇妙さで音楽にのり、笑い、ふざけ、皆思い思いにこの場を楽しんでいた。次第に人も増え、初対面の人とも仲良くなり、懐メロをかけては歌いながら踊った。(すぐに体力が尽き、日頃の運動不足をたたった)

昨夜の動画を見返すと、完全に酔っ払いテンションでわけのわからない動きを繰り返す私たちの姿があった。美しさもかっこよさもないけれど、ひたすらに楽しいのだということだけ伝わってくる。

変に緊張して、踊り出すことができないでいた、パーティー開始当初の私が少し遠く感じる。「本当に、ただ適当に身体を動かすだけでよい」と知っただけで、新しいダンス文化というものに触れただけで、なんだかほんの少し、身軽になった気がする。見えない殻を破ったような気がする。

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今朝、ミラーボールは所定の片隅にまたひっそりと置かれていた。でも、もうただの銀色の球体ではない。皆ではしゃぎ、新しい文化の片鱗を感じ取った、夏の一夜の空気をまとった存在として、静かにそこにある。どこか誇らしげに、私には見える。

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