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ろーかるなルールにご注意を。

週2回のアルバイトといえど、朝夕の満員電車には毎度ため息をついている。

できる限り座って行きたくて、朝の通勤時は途中駅で降りて、その駅始発の電車を待つことにしている。

その駅は、朝の通勤時間帯だけ、公式のルールがある。

ルールその1。整列乗車

この”整列乗車”は、「お行儀よく並んで待っててね」ってことじゃ、ない。

「所定の位置に並んで待っていてね」の意味。で、”所定の位置”は、ドアの前の位置じゃない
階段のある場所などを避けた位置になっていて、電車に乗る人はその所定の位置で待った後、電車がきたら、地面に書いてある矢印に沿って、乗車ドアの位置まで移動する。

電車が来ると、本当に、ぞろぞろぞろぞろ、行列が一斉に移動する。何も言われていないのに、一斉に移動する。おろおろしている人は、見たことがない。
毎度その統率の取れ具合に、驚く。

電車が来て、移動を済ませ、目の前に電車が止まってドアが開いても、油断してはいけない。この駅の通勤時間帯の始発列車は、ドアが開いても、乗ってはいけないのだ。

ルールその2。乗車前の一旦ドア閉め

折り返しで始発列車となる電車は、通勤時間帯に限り、一旦ドアが開いて乗ってきた客をおろしてから、ドアが閉まる。再びドアが開いてようやく、乗っていい。

初めてこの駅に朝来たとき、ルールその1も知らなかったため、ドアの前の位置に並んでしまい、”ズル”の形で一番前になってしまった。(申し訳ないことをしたけれど、正直、初回は誰もわかるわけないと思う)

目当ての電車が来て、さあ乗ろうと思ったら、誰も乗らない。
ドアの前ギリギリにみんな立って、誰一人乗る気配がない。

「なんだこれ、どうなってるんだ」と驚きながらも、私も空気を読んでドアの前に立ち尽くした。ら、ドアが閉まって、「えっ」と思ったら、また開いた。みんな一斉に車内に入るので、私も慌てて入った。

誰一人として、開いたドアを前に、乗り込もうとしない。
左右見渡すと、ドアの前ぎりぎりに皆、じっと立って待っている。ルール違反する人も、ルールを知らない人も、いない。(もしいたとしても、あの時の私のように、空気を読めている)

すごいことだと思う。
称賛のすごいでも、ドン引きのすごいでもなく、ただただ”すごい”。

これが、毎朝同じ経路を来る日もたどる、”通勤”というものか。ここにいる人のほとんどが、”通勤”で電車を使っているのか。
これが、”ルール”がきっちり守られる様か。自主的に、秩序が保たれている様なのか。

ずらりとドアの前に人が立っている様は、少し奇妙でもあり、何度見ても慣れない。ルールには慣れても、この光景には慣れないのだ。毎度、”すごいな”って思う。

街中で、ニトリやイケアの袋や段ボールを抱えた人を見かけることが多くなった。

この中にはきっと、あの駅で始発列車を利用する人もいるのだろう。

駅構内に「一旦ドア閉め」のポスターは貼ってあるけれど、朝は、そんなポスターが目につかないくらい、人でごった返している。
都心へ向かうホームでは、みんな、少々、ゆとりがなくて、殺気立ってる。

だからこそ、もしもあの駅で、あのときの私のようにとまどう人がいたら、優しく教えてあげよう。大丈夫って、笑いかけてあげよう。

街中に漂う新生活の空気とは反対に、なんの変化もなくアルバイトへ向かう最中、ふとそう思った。


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